EP:20 それぞれと二人の少女
暁「それじゃあ、編成を決めるか」
大まかな目標が決まったことで進行メンバーを決めることにする。
咲実「オレはプラント行きたい!」
早速とばかりに手を上げた咲実だが……。
暁「ダメだ。」
即座に却下する。
咲実「ちょ、なんでだ!?」
暁「お前、絶対に巨大ゾンビに挑む気だろ」
咲実「ちょっとくらい良いだろ」
今更だがこの娘はちょっと……脳筋なところがある。
というか超パワーを手に入れたことでそんな感じになってる気がする。
あのデカブツにも臆さない姿勢は素晴らしいことだが
わけの分からない相手にツッコまれるのは流石に許可できない。
和「ちょっとでもダメです。
先にプラントから食料を回収してからお願いします。」
暁「それに燃料プラントが複数あるなら咲実に運んでもらう必要があるしな。」
咲実「ちぇ~、あんな巨大ゾンビ見る機会があるかどうか分からねぇのに」
暁「今は我慢しろ。俺は食料プラントを担当する。
咲実の次に物を運べるのは俺だからな。」
和「お待ち下さい。私もついていきます。」
暁「ダメだ。」
和「何故ですか?」
暁「やっと生存者を見つけたんだ。
お前は念のために二人の護衛を頼みたい。」
和「それなら蛍さんがいるじゃないですか、
それに私達の武器も使ってもらえば問題ありません。」
彼女たちには今まで生き抜いてきた実績がある。
あるが今後もそうだとは限らない。
次の瞬間何が起こるかわからないような世界だ。
俺たちと違い生身というのもある。置いていくには不安が残る。
蛍「あ~、それなんだけどさ、
私は咲実さんについていこうと思ってるんだ。」
咲実「オレに?」
どう和を説得しようかと思っていると思わぬ方向から提案が来た。
白「プラントへ向かう地下は対ゾンビ用のトラップがいくつもあるし、
迷宮みたいになってるから案内がないと難しいと思います。」
咲実「まじか」
蛍「今まで私達も使ってきたからね。
地上にはトラップがいっぱいあるし、自動式のマジンガンとかもあるんだ。」
咲実「陸路は危険が多いわけか」
蛍「だから、和さんに白の護衛を頼みたいかなぁって……。」
和「……………………わかりました。白さんの護衛は私がしましょう。
暁様、くれぐれも無理はしないでくださいね。」
暁「わかってる。和も彼女を頼む。」
かなり釈然としない様子だが……何とか了承してもらえた。
和と咲実が護衛についていればそうそう命を落とすこともないだろう。
暁「咲実も蛍を頼むぞ。」
和「お帰りをお待ちしてます。」
咲実「ま、ちゃちゃっと終わらせてくるぜ」
そんな感じで行動を開始する。
咲実と蛍は地下道を進んでプラントの回収
和と白は無線機を使って二人の補助
俺は単独で食料の収集となった。
食料を入れるものは向こうの方にいくらかあるらしく
それに詰め込んでいけばいいということで俺は手ぶらで向かった……。
…………
………………
SIDE:咲実&蛍
咲実「なんかすげぇ迷宮だな。」
蛍「や~この位しないとどこにでもゾンビが湧くからねぇ」
咲実「なんでそんなにゾンビだらけなんだ?」
蛍「さぁ?私らがここに居るから向かってくるのか
他の理由か……いつまでたっても消えないんだよね。」
蛍「白は巨大ゾンビが呼び寄せてるかもって言ってたかな?」
咲実「ゾンビが?合体してさらに巨大化するのか?」
蛍「多分?ずっとここに居てもわからないことだらけなんだよね。」
咲実「そっか~」
蛍「…………半ゾンビって……辛くない?」
咲実「唐突だな。」
蛍「いや、一番気になってたことなんだけどさ~
あの場ではちょっと……暁くん凄い怖かったし……。」
咲実「それもそうか……半ゾンビは全然辛くないかな。」
蛍「もう人間じゃないのに?」
咲実「何となくわかってると思うけど
オレはゾンビに襲われてゾンビになってたんだよな。」
蛍「ゾンビを半ゾンビ化って言ってたもんね。」
咲実「ゾンビになってからの記憶とかは全然ないんだけどさ
……ゾンビになる瞬間の絶望感はやばかったよ。」
咲実「心がどんどん汚染されて、
とにかく感染者を増やしたいって欲求にまみれる。」
咲実「自分が自分じゃなくなっていく感覚
……怖いって感情が溢れて、自分の体が冷たくなってく」
蛍「…………。」
咲実「このまま自分を取り戻すことなく死ぬんだって思ったんだけどさ。
目が覚めたら暁とクイーンが目の前に居たんだ。」
咲実「その瞬間に自分は蘇ったんだって思った。
あの苦しい世界から抜け出せたんだって」
咲実「正直、最高に嬉しかった。
半ゾンビはちょっと引っかかったけど代わりに超パワーをゲットしたしさ。」
咲実「自分が世界を救う助けになるって思ったらもう気にならなくなったわ。」
咲実「何より、ゾンビに追われなくなったっていうのが一番嬉しかったな。」
蛍「それは素直に羨ましいなぁ。ゾンビって本当に鬱陶しいもんね。」
咲実「逃げても逃げても何故か察知してどこまでも追ってくるもんな。」
蛍「そうそう、白がブレスレット開発してくれるまでは
本当に死ぬほどしんどかったしねぇ。」
咲実「よく逃げれたもんだ。
オレの方なんか軍の暴動とか色々に巻き込まれてさ」
蛍「ってことは群馬?」
咲実「お、知ってるんだ?」
蛍「あの時期はまだテレビとかもあったしね。
群馬あたりの映像はかなりショッキングだったわ。」
咲実「もう最悪だったわ。辺り一帯、感染者だらけだしさ。」
蛍「こっちも電波塔があったから助かったけど結構地獄絵図だったなぁ。」
咲実「ま、もう安心だぜ。
うちの拠点はゾンビ対策バッチリっていうかゾンビもう居ないしな。」
蛍「まじで?あ、半ゾンビ?」
咲実「意識があるのはオレと和だけだけどさ
他のはみんなも半ゾンビにはなってるんだ。目を覚まさないだけでな。」
蛍「そっか……。本当に世界が助かるんだ。」
咲実「うん……まぁ、ちょっと約一名心配なやつ居るけど……。」
蛍「何その釈然としない感じ……。」
咲実「多分すごい人だとは思うんだ。多分……。
凄いなんかお子様だけど……。」
蛍「ちょ、やめて?不安になる感じやめて?」
咲実「実物見たら不安になると思うんだ……。」
蛍「そ、そんなに?」
咲実「そんなにだな。オレ復帰して少しくらいなんだけど
そいつが和に説教食らってる所めっちゃ見た。」
蛍「そんなに!?」
咲実「あれで暁を起こしたり、ゾンビ対策で自分を改造したりしてるし
大丈夫だって思うんだけど……うん。」
蛍「せ、せめて白だけでもなんとか……。」
咲実「とりあえず、暁と和と一緒にいれば問題ねぇよ。
二人共めっさ頼りになるしな。オレをもとに戻してくれたしさ」
蛍「まぁ、暁くんは強いし、和さんは頼りになる感じだよね。」
咲実「ちなみにオレは脳筋だから期待すんな。戦力は一番だけどな。」
蛍「自分で脳筋って……。」
咲実「いや、これは脳筋と言わざるを得ない。
野菜人級の戦闘力を手に入れたしな。」
蛍「それは凄いけど……あ、もうそろそろ着くよ。」
咲実「結構長かったな。てかもはや迷路だったな。」
蛍「帰りは陸路のトラップを解除できるから楽だよ。
もうここに居ることもないだろうしね。」
咲実「だな。」
出口に到着してまずはゾンビに襲われない咲実が先行し
続いて蛍が外に出る。
蛍「ここにあるトラックが全部燃料プラントだよ。」
出口の先には大きな駐車場があり、多数のトラックが停車していた。
咲実「へ~結構残ってるもんだな。」
蛍「元々、ここは軍が防衛拠点にするつもりだったらしいからね。
これでもかなり減ったんだよ。最初は50台位あったし」
咲実「それが5分の1か……。」
蛍「燃料さえあればって無謀に持ち出そうとしてそのまま……ね。
ここに居るから分かると思うけど軍用犬が想像よりも凶悪でさ」
咲実「あ~なんか鬱陶しいくらいに索敵範囲広かったな。」
蛍「別の場所に行くには絶対に運搬リフトに乗らなきゃダメなんだけど……。」
咲実「辿り着く前に死ぬか、たどり着いてもってことか」
蛍「結局、誰も持ち出せずにずっと残ってるんだよね。
私達も移動させようと思ったけど軍用犬はエンジン音に敏感でさ」
咲実「あ、電車でめっちゃ襲ってきたのって」
蛍「大きな音に反応してその近辺を索敵してるんじゃないかな?
って白が言ってた。」
蛍「私達の銃は最初からサイレンサー付けてたから気付くの遅れたけどさ」
咲実「ゾンビは別に大きな音出さんだろ……。」
蛍「ヴァ~ヴァ~言ってるからその関係じゃないかな?」
咲実「あぁ……納得、あいつらなんか常に声出してるもんな。」
蛍「で、持ち運べるん……だよね?」
咲実「このくらいなら余裕だな。
……そういや、何個持っていけばいいんだ」
蛍「え?知らないけど……。」
咲実「流石に全部じゃねぇよな?」
蛍「念のために2個でいいんじゃないかな?」
咲実「そだな。んじゃさっそ―――」
ドッッゴ…………ン
咲実「なんだ!?」
蛍「あっ!あっちから煙!」
小型プラントを持ち運ぼうとする直前に遠くから爆音が響き
プラント内部から煙が吹き上がっていた……。




