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ワールドエンドルート  作者: イカランム
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EP:01 世界の希望誕生と世界の現状

クイーン「君が完成したってわけよ!!」


暁「はぁ……。」


俺の名前は天都(あまつ) (あかつき)

割りと普通な学生……だった。


過去形なのはだいぶ昔に少数都市計画でコールドスリープに入ったからだ。

俺が眠った直後にナノテクノロジーが開発され、

順次、コールドスリープを解かれていたらしいが


コールドスリープ中に身内が全滅して天涯孤独になって後回しにされた人間も結構いたそうだ。

俺はその中のひとりでつい1時間ほど前に眼の前に居る女科学者"クイーン"に起こされた。


んで彼女の説明によると今、全世界でゾンビパニックが発生していて

生きている人間がどれだけいるかわからないとのこと……。


なんでそうなったのかは……小難しいから簡単に説明すると


ナノテクノロジーが原因で腐敗病が誕生

更にはナノテクノロジーが病原体を広めてしまったらしい。


ナノテクノロジーは保有者同士で病原体を治療しようとする性質があり

それが原因で他者を襲うんだとか……。


クイーン「随分気の抜けた返事ね。奇跡君」


暁「(あかつき)です。」


クイーン「名前なんてもはや記号よ!貴方は奇跡の人!

唯一ゾンビに対抗できる奇跡の存在!人類の希望なのよ!!」


やたら興奮気味にワイワイ騒ぐクイーン

どうやら、ゾンビに対抗するにはナノテクノロジーを使用されていない個体が必要だったらしいが

現代はありとあらゆる生き物(虫除く)がナノテクノロジーを保有しており


なんとかならないかと目をつけたのが"置き去り(ロストコード)"と呼ばれる俺たち

天涯孤独で起こすタイミングが見つからなかった旧人類なんだそうだ。


クイーン「長かったわ。多くの旧人類を起こしたけど誰も彼もあっという間にゾンビ化してしまうし

そもそも、男も女も戦意というか生きる力っていうのが全然弱くて……」


人類減少が始まったのは性欲の低下が原因だと言われていたが

それ以外にも恒常的な無気力状態というのもあった。


俺はその世代では珍しく生気あふれる若者で

その生気というのが幸運にもゾンビを退ける要素に繋がったんだそうだ。


クイーン「長い研究ももはや終わりよ!

奇跡の子よ!貴方の力で文字通り腐敗した世界を救うのよ!!」バーン


暁「あ~、質問いいっすか?」


クイーン「どうぞ?」


暁「どうやって?」


クイーン「何が?」


暁「どうやってゾンビをどうにかするのよ?銃でも撃つのか?」


クイーン「ゾンビは死なないから銃なんてゴミよ?

頭吹っ飛んでも脳をどうにかしないと普通に蘇生するしね。」


暁「ゾンビすげぇな。」


クイーン「よってゾンビを倒す方法はたったひとつ!」


クイーン「貴方の血液を摂取させることよ!!」バーン


暁「お疲れ様っした~」


クイーン「ちょ!?え、なんで!?」


暁「すまん、俺、カニバル(人食)な趣味もカニバル(人食)される趣味もないんだ。」


クイーン「大丈夫よ!?そんなグロくないし!!ちょっと首筋噛まれるくらいだし!」


暁「痛いのも嫌だよ。」


クイーン「そこら辺も大丈夫!貴方の肉体は色々改造しまくってるからね!

ちょっと噛まれたくらいじゃ擽ったいくらいにしか感じないわ!」


暁「そういう問題でもないと思う」


クイーン「お願いやってよ!もう貴方しか居ないんだよ!

ね~お願い!ね~ね~ね~」


暁「鬱陶しいわっ!」


クイーン「世界を救う英雄になるのよ!?心躍ったりしないの!?」


暁「冷静に考えると俺って置き去りにされたんだよな?」


クイーン「うん、まぁ……。」


暁「世界のためにコールドスリープされたのに放置されたんだよな?」


クイーン「うん……。」


暁「んで、絶望的パンデミックが起こってから復活させたと」


クイーン「大体そんな感じ」


暁「ふざけんな☆」


クイーン「そこら辺は本当に謝るから!人類代表してごめんなさいするから!

お望みならセップクもするから!」


暁「グロ趣味はないと言ってんだろ」


クイーン「お願い~助けてよ~!」ユサユサ


暁「ざっけんな。見返りもなしに人助けなんかするかアホっ

つか、普通に考えて今の状況で英雄になれるわけ無いだろ。どんだけ血を吐き出せば済むんだよ」


暁「英雄様は即身仏ってか?嫌だわ」


クイーン「そこら辺は色々大丈夫だから!」


暁「あと、男に噛みつかれるのも正直無理、しかも首筋とかふざけんな。俺はホモじゃねぇよ」


クイーン「そこら辺も大丈夫だから!血って言っても1、2滴だし!

別に首からじゃなくても指とかでもいいから!」


暁「どちらにしても良いように使われる未来しか見えん。」


クイーン「ほんとうに大丈夫だから!

血を摂取した相手は貴方に絶対服従的な感じになる気がするから!」


暁「ふわふわじゃねぇか」


クイーン「だってまだ実験してないし……。」


暁「おつかれ~」


クイーン「ま、まってっ!」


バンッ!!


暁「あん?」


クイーンと口論しているさなか、突然扉が大きな音を立てて開かれる。


??「…………」


入ってきたのはロングヘアにサイドツインテールを結っている。何故かメイド服の美少女

俺が生きていた時代ではまずお目にかかることのない本物のメイドの雰囲気を見せる美少女だった。

出来ることならお近づきになりたい!と思わせる可愛さなんだが……なんか様子がおかしい


クイーン「(のどか)ちゃん?……そう、貴方も感染したのね。」


和「せん……せい……ご、なさ」


意識が混濁しているのか視線を泳がせながら言葉を紡ぐ(のどか)と呼ばれた少女

なんというか……やばい雰囲気がする。


クイーン「暁くん……あれが腐敗病よ。あの娘の手を見てみなさい」


暁「手……」


言われて手を見てみると色が明らかにおかしい

青白く体温を全く感じられない……見るだけで寒気がする色になっている。

まるで死体みたいな……。


クイーン「腐敗病に感染すると数日で体から体温が消え、全身が青白くなるの。

最後は理性を失い、他の人間を襲うようになる。新たな感染者にするためにね。」


暁「…………」


ただ聞かされるのと実際に見るのでは全く違うんだと理解した。

眼の前にいる美少女はさっきまで人間だったが……もう人間じゃないものになろうとしている。


暁「…………噛まれれば良いんだよな?」


クイーン「えぇ……。」


あまりにも悲惨な現実に特に何かを考えること無く、決断した。

眼の前にいる少女を助け事を……。


和「う……ぁ……きちゃ……め」


暁「……」ゴクリ


なんとか理性をかき集めて人間であることを保っている少女に少しずつ近づく

正直、噛みつかれるとか小さい頃に友達と喧嘩して以来だ。


その時は歯型が付く程度だったが今回はそれじゃすまない。

血が出るまで噛まれないと行けない……クイーンは色々言ってたがイマイチ信用しづらい。

天才なんだろうが……凄いアホっぽい


和「に……げ……ぅ……ぅぅ」


暁「大丈夫だ。こい」


しかし、信用出来ないと言っても信じる以外に俺にこの娘を救う方法はない。

耐え抜こうとする少女に覚悟を決めて両手を広げて誘う。

1分……2分とメイドは耐える……いつしか、それも限界に到達し


和「ぅ……ぅがぁぁぁぁぁ!!」ガバッ


暁「っ!」


突如、はじけ飛んだようにメイドが飛びかかってきて

一目散に俺の首筋に噛み付いた。

襲いかかる痛みに両目を瞑って耐えようとする……するんだが……。


暁「…………??」


クイーン「ど、どう?助かりそう?」


暁「いや……ん?ちょっと失礼。」


和「ぐがぁ……うぐぁ」


首筋にへばりつくメイドを引き剥がす

本当に色々改造されているのかかなり強い力でしがみつかれているたのに

壁にへばりついたスライムを剥がす感じであっさり剥がれた。


そして、口の中を確認してみると……。


暁「クイーン」


クイーン「なにかしら?」


暁「ゾンビになると歯が全部なくなるのか?」


クイーン「は?いいえ、そんな事例は知らないけど?」


暁「このメイド……歯が一本もないぞ?」


クイーン「えぇ!?」


驚いて確認に来たクイーンにメイドの口内を見せる。

メイドの口内はきれいなピンク色で歯を象徴する白色がひとっつもなかった。


クイーン「なんてこと……この娘……自分で歯を……。」


暁「マジかよ……。」


よく見れば、すでに乾いているが歯茎の部分が赤黒いもので塗れている。

ペンチか何かで歯を引っこ抜いたのかもしれない

誰かに噛み付いて新しい感染者を出さないために……。


暁「…………他にどうすればいい?助ける方法はあるんだろ?」


クイーン「血を飲ませさえすれば大丈夫なんだけど……ど、どうしよう。」


流石にこの事態は予想外なのか困惑するクイーン

どうしたものかとあたりを見回してみるとガラスの破片が目に入った。

さっき、メイドが入ってきた時の衝撃で何かが落ちて割れたのかもしれない。


暁「ちょっと持ってて」


クイーン「持つって……え!?ちょっと!?」


メイドをクイーンに押し付けてから転がっているガラスの破片を拾う

そして、迷わず破片で指先を切る。

痛覚も鈍くしているのか痛みは殆ど無く、指先から血が流れ始めた。


暁「よし、コレを飲ませるぞ」


クイーン「で……出来ればお早めに……この娘めっちゃ力強い」グググ


全力で羽交い締めにしてるんだろうがクイーンは少しずつ引きずられている。

急がないとあっさり拘束が解けそうで素早くメイドの口に指を突っ込む


和「ぅがっ……ぐがぁぁぁぁっ!!!?!??」


指を突っ込み……多分舌で血を舐めたと想った瞬間

電気でも走ったかのようにビクンビクンと体を震わせ……


和「…………」ドサッ


糸が切れた人形のようにその場に倒れた。


暁「なんか……反応がやばかったんだがほんとうに大丈夫か?」


クイーン「だ……大丈夫よ!絶対大丈夫だって!……多分」


暁「多分って聞こえたんだが?」


クイーン「大丈夫だって!私を信じて!」


イマイチ信用できない研究者である……。

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