EP:17 工業地区と生き残り
電車『まもなく八王子……八王子に到着します。お降りの際は』
暁「そろそろだな。」
電車内に機械音声で到着駅の放送が流れ、徐々に電車の速度も下がってきた。
ここに到着するまでに計8匹ほどの軍用犬を処理してきた。
索敵能力以外に大したこともなかったが今は動いている電車内に居る。
地上に降りたら一体どれだけの軍用犬が居るのか……
咲実「ようやくか……」グググ
和「……」
二人も数が多すぎるとどうなるかわからないと考えてるんだろう。
声には出さないが警戒レベルを引き上げ、咲実は軽い準備運動をしている。
プシューと音が聞こえ、
ピロロロロロロっとアラームが鳴る。
そして……扉が開く
暁「先手必勝!!」ブォンッ!!
犬EFGH「「「―――――」」」ドシャァ
ある程度知能はあるのかドアの前で待ち伏せしていた4匹を一撃で塵に返す。
咲実「走るぞ!どけやおらぁぁ!!」ボボボッ
犬「ギャウンッ」グシャッ!
流石に狭い場所での戦闘は不利と考え、
咲実が先陣に立ってホームを一気に駆け抜ける。
俺も和も一騎当千の咲実の後を走り、
左右から飛んでくる軍用犬を塵にしていく
移動速度は俺達のほうが圧倒的に早く、
直ぐに軍用犬は俺達の後ろについてくるようになり……
咲実「めっさああああああああつ!!!」ドッッッッゴォォン!!!!!!
犬's「「「ギャォン!!???!??!?!?」」」
後で一塊になった所を咲実の全力正拳によって一網打尽にし、
あっという間に危険地帯を脱することに成功した。
咲実「ははっ!どんなもんよ!!」
暁「よくやった。」
一緒に何人かのゾンビが巻き添えになったが
この状況では尊い犠牲と思うしかないだろう。
鬱陶しい犬が居なくなったことのほうが大きい。
和「開けた場所に出たならひとまず危機は脱したでしょう。」
咲実「危機ってほど強くもなかったけどな。」
和「咲実さんが規格外なだけです。」
咲実「いや、和も相当だと思うが……
まぁいいや、こっからのナビゲートは大丈夫か?」
和「問題ありません。
多少距離はありますが2時間ほどで到着するでしょう。」
咲実「駅で30分だから全部で2時間半か……」
和「探索などで残り2時間半も十分潰れるでしょう。
本拠へ帰還するのは難しそうですが……」
和「キャンピングトラックは問題なく到着していそうですね。」
咲実「だな。」
和「到着していない場合は……他の宿泊場所を探す必要がありますが」
咲実「普通の宿泊だと気が休まらなそうだし、着いてるといいなぁ。」
和「ですね。」
暁「……にしても随分ゾンビが多いな。」
目的地から大分離れている場所のはずなんだが
そこら中にゾンビがウロウロしている。
咲実「軍服も結構いるし、
やっぱりこっちを防衛してたんだろうな……。」
暁「ざっと見て軍人ゾンビだけで10以上か
……コレだけの軍人が居ても勝てなかったんだな。」
和「不死の上に身体能力もある程度強化されていて、
しかも銃が殆ど効きませんからね。」
和「一応、頭が跡形もなく飛べば機能停止しますが……」
暁「実際、頭が吹っ飛ぶほどの威力の銃ってそんなにないよな。」バスバス
咲実「あっても反動凄そうだし、かなり近くで撃つ必要ありそうだな。
それなのにこっちは噛まれるだけでアウトか……。」
和「いえ、血液感染なので飛び散った血を摂取してしまっても感染します。」
暁「ってことは近接戦で口に入ってもアウトか……。」バスバス
和「初期の頃はそれでかなりの数が感染しました。」
咲実「完全にチートだよな。」
咲実「ところで……なんでさっきから軍人ゾンビバスバス撃ってんの?」
暁「軍人が持ってる無線機が高性能らしいからドロップ回収しておこうかと」
咲実「それと撃つの関係あるのかよ!?」
暁「間違って噛まれたら嫌じゃん?」
咲実「そうだけど……なんか……さ。」
和「ココらへんのゾンビはあまりいいものを持っていませんね。
一応、ナイフが数本、手に入りました。」
咲実「そっちはそっちで無表情で死体あさりって……。」
和「反応管理もしてますよ?」
咲実「……いいけどな。
別に……てか、撃ったゾンビは放置でいいのか?」
和「ナノマシンの防護機能でこのままでも特に問題はありませんね。
雨風に晒されても何もありませんよ。」
咲実「気分的に嫌だろ。一応生きてる状態なんだし」
暁「とりあえず、そこら辺の車を解体して小屋でも作れば問題ないだろう。」
咲実「吹きっ晒よりはマシか……。」
文句を言いつつも手早く小屋を立てる咲実
俺と和は倒れたゾンビを並べていく
こんな感じで軍人を見つけては
狙撃&ドロップ回収&小屋安置を繰り返して先に進んでいく
途中で何度か軍用犬に襲われるが
集団じゃなければ大したこともなく順調に進んでいた。
暁「臭うな……。」
咲実「え……やっぱ半ゾンビだから腐臭とかする?」
和「も、申し訳ありません!すぐに水洗いを」
暁「違うから……間違ってもお前らを臭いとかいわないから
そうじゃなくてこの周辺……おかしくないか?」
咲実「なんかおかしいか?」
和「いわれてみれば……妙にゾンビの数が少ないですね。
それに所々に死体が幾つかありますね。」
咲実「普通じゃね?
東京よりはひどくないし、ここで戦闘があっただけだろ?」
和「いえ……違いますね。何者かに狙撃されたゾンビの死体ですね。」
咲実「まじで?ゾンビって頭吹き飛ばないと死なないんじゃないのか?」
暁「どういうわけか分からんが死んでるな
……いや、ゾンビ事態元々死んでるんだが完全に動いてないな。」
咲実「新兵器とかがあったのか?」
暁「かもしr」
和「暁様っっ!!」バッ
突然、声を上げた和が俺の前に飛び出した。
次の瞬間、バスッと聞き慣れた音がして……和がその場に崩れ落ちた。
…………
………………
距離 5km先 食料プラント第三監視塔
かつて、食料プラントを防衛するために急増で作られた防衛施設の一つ
簡易的なライフラインを確保してあり、
対ゾンビ電波を放出することで長期間防衛を可能にしたものだ。
その防衛施設には二人の少女が居た。
蛍「あ~暇っだ~暇よ~白ちゃん、お姉ちゃん暇~」
やたらデカイスナイパーライフルを膝に乗っけながら椅子をギシギシ言わせる
プラチナのようにまばゆい白髪のロングヘアの少女
名は晃河 蛍
白「暇なら食料持ってきてもいいと思うよ?
余分にあるけどいくらあっても困らないし……。」
暇暇と煩い蛍をクールに流してパソコンのキーボードを叩く
同じく白髪でポニーテールの少女……名は晃河 白
二人は姉妹であり、この世界の数少ない生き残りだった。
妹の白が技術力に長けていたおかげで施設を改造し、
武器を改造し、なんとか生きながらえていた。
蛍「え~やだぁ~なんか、あのキモいでっかいのやたら活発な気がするし
余分にあるならまだいいじゃん?」
白「普通に危ないし、別にいいけどさ
……そんなに暇なら外で見張りしてくれば?」
蛍「見張りね~。見張りもゾンビ撃つくらいしか無くない?
そもそも電波で全然来ないし」
白「でも絶対はないよ。あのおっきいやつの事もあるし」
蛍「そういうやばいのが来たら警報なるんでしょ?」
白「なるけど……でも絶対はないよ。」
蛍「二回言わなくてもわかってるって……そだね。
暇だし、ちょっと見てくるよ。」
白「お願いね。」
…………
蛍「って、早速なんかいたよ。もしもし~」ムセン
白『どうかした?』ムセン
蛍「なんか変なのが……3人?敷地内にいるんだけど?」
白『どの方向?』
蛍「あっちは~駅かな?特別区の方のやつ」
白『ちょっとまって……ホントだ。』
蛍「警報ならなかったの?もしかして壊れたとか?」
白『そんな様子はないけど……生存者かな?』
蛍「や~スコープから見てるけど肌色はゾンビっぽいよ?
てか喋ってるのかな?ん~わかんない。」
白『どうする?こんな危険地帯を歩いてくるなんて普通じゃないけど……。』
蛍「もしかして新種とか?やだなぁ~
とりあえず、撃ち落としとこっか」
白『物騒だね。』
蛍「いやいや、そもそもこの世界が物騒の塊だから」
白『否定しないけど……やるなら一撃でね。』
蛍「3人いるから1撃は無理だけど、一矢一殺でやってみるよ。」
蛍「さてと……流石に女の子からってのはあれだし……男から殺るかね。
ってか男だよね?なんか細いしイケメンだけど……」
蛍「女の子だったらごめんなさいねっと」ドゥンッ!!
彼女との距離は5km、普通に考えて弾丸が到達するような距離じゃないが
彼女の持つ銃から放たれた弾丸は一切速度が落ちることがなく、
まっすぐと狙っていた男の頭に吸い込まれ命中……
することはなかった。
蛍「はぁ!?」
白『どうかした?』
蛍「いや、意味分かんないんだけど……なんかゾンビが男庇った。」
白『どういうこと?』
蛍「そのまんまの意味だって!
三人組の一人が男庇ったんだって!やばいかもしれない!」
白『すぐに逃げる準備するよ。』
蛍「わ、わか―――」
白の判断は正しかった。
この世界において一瞬の躊躇が即、死に繋がる。
彼女たちが攻撃したのはゾンビを軽く超越する化物で
攻撃してしまった以上は逃げるのが正しい
しかし、 そもそも攻撃したのが最大の間違いで……
彼女たちに選択肢は残されていなかった。
ドガッシャーーーン!!!
僅か十数秒……彼女たちに人生最大級の災厄が襲いかかった……。