EP:15 収集完了と次なるステージ
結構な数の物資を発見したから搬入には相応の時間がかかるだろうと思っていた。
リフトはここに一つしかないし、上昇下降の速度はさして早くない。
結構な量の物が乗ると言っても限度は有る。
最初はDVDやCDとかの娯楽品はコンテナ扉に乗せて運ぼうとしたが……。
当然のように重量オーバーだった。
軽く数千本はあったから当然といえば当然だろう。
仕方がないので近くにあった車の残骸とかで鉄の箱を作り、
そこにDVD&CDを収納してリフトの重量制限ギリギリまで積み込んで居た。
が当然時間がかかる。
簡単に持てるからと調子に乗って大量に持ってきたのが仇となった。
とは言え、せっかく持ってきたのを置いていくのも気が引ける。
何とか積み込み速度が上がらないかなぁ?と思っている時、俺はふと思った。
俺の体ならある程度落下しても大丈夫なんじゃないだろうか……と
ライフルを後頭部あたりに受けても無傷なのに
まさか足が貧弱……ということはないだろう。
そう思って、咲実と交代でリフトに乗り込んだ時
……まずは3mの高さから飛び降りてみた。
当然、無傷
登る時はどの程度ジャンプできるか試せば10mくらい飛ぶことが出来た。
そして、色々試していった結果……。
暁「よっと」スタッ
咲実「まじでどういうスペックしてんの?規格外過ぎじゃね?」
暁「俺もまさかこれほどとは思わなかった……。」
途中から咲実と結託して調べると落下耐性と跳躍力の高さに気が付き
積み込み速度が向上した。
更に冗談半分でどのくらいイケるんだろうと試すと……。
暁「まさか、一番上から落ちても無傷とは……。」
咲実「流石にオレでも無理だと思う高さだぞ?」
暁「耐久力はゾンビ以上なのかもな。」
東京から地面までの高さは相当だ。
東京タワー……ほどじゃないと思うが
少なくとも200mくらいは有るだろう。
その高さから落下しても完全無傷
生身のときの感覚で言えばその場でジャンプした程度の衝撃しか受けなかった。
流石に跳躍力はそこまで高くなかったが……。
ちょっと本気を出せば余裕で壁を走って登ることが出来た。
小さい頃は滑り台を下から全力疾走で登ったりしたことがあるが
まさか未来で目が覚めるとほぼ垂直の壁をダッシュで登れるとは思わなかった。
一体どういう改造をしたんだか帰ったら問い詰めないと……と思いながらも
おかげで搬入速度は驚くほど向上した。
むしろリフトを使うほうが時間がかかるくらいだ。
登る時は壁を走り、降りる時は自由落下何だから当然だが……。
当然の如く、途中で合流した和に危ない危険すぎると怒られたが
……全くの無傷で時間削減になると説得して渋々受け入れてもらった。
彼女もこの世界で長く生きている。
最初は心配そうにしていても三回目くらいで適応して
今では効率の良さと俺の頑丈さに感心しきりになっている。
ついでに量が多かったり、細々していたりで諦めていたものも追加し始めた。
その追加内容も徐々にヒートアップ
最初はお皿とか代用できるし、今必要ない細々としたものだったが
徐々に中華鍋とかケーキクーラーとか使いどころが限られているものへ
そこからさらに食器洗浄機なんかが加わり
最終的にはキッチンそのものとかでっかいベッドとかソファーとかが入った。
まぁ、キッチンそのものはいくらなんでも持って落下すると怖かったし
本人も危ないと思ったのか普通にリフトで降ろした。
結局、積み込みにかかった時間は僅か2時間ほど
積み込みすぎてコンテナが一つ満杯になってしまったが……。
和「調子に乗りすぎてしまいました。」
咲実「何度も来るよりましだろ。」
暁「そうだな。」
俺も咲実も必要と思わなかったが
家事全般を司る和には必要なものがかなりあったんだろう。
中にはどこで使うんだろう?と思うようなものもあったが
説明して丁寧に答えてもらう内に疑問を持つこともなくなった。
東京までそれなりに早く着くとは言え距離は有る。
何度も来るよりは一回で済ませたほうが楽なのは間違いない。
これだけ積み込めば足りないとなっても少量で済みそうだし
このまま帰ってもいいくらいの収穫でもある。
それに……。
咲実「次はプラントでコンテナそのものだしな。
野菜を入れるコンテナが一個あれば問題ないだろ。」
ってことだ。特に言うこともない。
暁「あれ?……今更なんだが野菜を入れて運ぶんだよな?」
和「そうなりますね。」
暁「コンテナを向こうに持っていったほうがいいのか?」
和「あ~……どうしましょう。」
野菜は生物だ。
流石に生身で腐臭漂う世界で持ち歩くのは色々問題があるだろう。
保存性能が飛躍的に向上していると言っても野菜そのものの話じゃない。
あくまでも保存する収納具の性能が向上してるだけだ。
となると何かしらで回収して移動する必要がある。
が、ここからプラントまではかなりの距離があった。
咲実「向こうに荷物入れるでっかいカートとかあるんじゃねぇの?」
咲実「それに入れて持ってきて、移し替えるなりなんなりすりゃよくね?
流石にコンテナ持って行き来するのは厳しいだろ。」
暁「だよな。そもそも、電車にのるのかどうか……。」
和「一応、自動操縦がありますから場所を設定すれば先行できますが」
咲実「時間かかりそうじゃね?」
和「電車よりは……」
和「ですが電車にコンテナを乗せることは出来ませんし
カートに入れたとしても裸でこの世界で食料品を持ち歩くのは……」
咲実「まぁ、オレも嫌だけどさ……。」
暁「じゃあ、先行させとくか?」
咲実「それしかなさそうだな。」
暁「時間がかかると言っても何日もかかる訳じゃないだろ?」
和「そこまでは大丈夫です。
かなり丈夫に作られてますから簡単な障害物は突き抜けて行くでしょう。」
和「推定では……5時間ほどですか」
咲実「思ったほど時間はかからんのな。」
暁「そのくらいなら問題ないだろうな。」
和「流石に5時間後は暗くなりますから向こうで一泊する必要はありますが
ある程度食品もありますし問題はないでしょう。」
暁「電車を使わないなら向こうでコンテナも積み込めそうだし、
手ぶらで行って良さそうだな。」
咲実「おっけ~」
和「了解しました。」
こうして、無事にここでの目的は完遂された。
生存者に狙撃されるトラブルはあったがそれ以外の問題らしい問題もない。
心配してた突然変異種との接触もなかったし、幸先はいいほうだと思う。
が、電車に乗ってからは分からない。
電車もその先も安全とは限らない。
車を先行させる以上はここで準備をしっかり整える必要がある。
俺と和は収集品から使えそうなものを装備
今回は和も収集したレトロなトランクケースを用意して詰め込んでいた。
揃って準備を終え、車を自動操縦で先行させ
ある程度進んだのを確認してからリフトで東京へ
そこから地下鉄へと向かった。
清掃ロボットのおかげで地下鉄は割りとまともな環境になっている。
近くにゾンビがウロウロしているのを気にしなければ普通の地下鉄だ。
咲実「さて、次のステージは何があるかなぁ」ワクワク
和「油断禁物ですよ。」
咲実「わかってるって、でもワクワクすんじゃん?」
暁「まぁ、そうだな。ゲームみたいで楽しいのは楽しいな。」
咲実「だろ?」
和「はしゃぎすぎないでくださいね。」
咲実「わかってるって」
少々能天気すぎる感じではあるが
むやみに緊張しているよりは全然いいだろう。
なんてことを思いながら次のステージ
八王子方面、工業地帯へと歩を進めるのだった……。