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ワールドエンドルート  作者: イカランム
14/67

EP:13 不穏と戦略


暁「さて、行くか」


駐車してから各々装備を手にとって車を出る。


俺と咲実はウェストポーチを身に着け、アサルトライフルを担ぐ


和も同じ様な装備を貰ってるんだがメイド服には合わないという理由で

スカートの中に収納できるようにして、一見手ぶらのような状態だ。


見た目を気にしても見るような奴はいないんじゃないか?と思ったが

常にメイド服な彼女にとっては譲れない一線だと思うし、

そういうものなんだろうととりあえずスルーした。


武装二名にメイドと異質な組み合わせで

前回使ったリフトの前に立つ……は


暁「……少し待て」


咲実「なんかあったか?」


暁「…………。」


前回同様、リフトに乗り込んで東京に入ろうとした時、

何か小さな違和感を感じた。


暁「このリフト……動いたな。」


咲実「動いた?」


和「確認します。」


俺の言葉に和がそばの監視塔に向かった。

機械類なんかは未だに稼働しているものも多い

このリフトも移動記録とかが残っていたからそれを調べにいったんだろう。


和「暁様の言うとおり、4日前に動いてますね。」


咲実「4日前って言うとオレらが撤退した後か?」


暁「そうなるな。」


和の話を聞いて、別の生存者が東京に乗り込んだのでは?

と思ってあたりを確認するが

俺達以外で最近駐車場に入り込んだ痕跡は見つからなかった。


つまり……。


暁「東京内にまだ生存者が居るってことだろうな。」


咲実「もしかして、前回の奴らの仲間か?」


暁「その可能性が一番高そうだな。

僅かに……複数の人間の血の臭いがする。」


咲実「匂いなんてわかるのか?」


暁「訳わからん改造されてるみたいだからな。

手摺りの部分に知らない人間の匂いが付いてる。」


和「仲間だとすると報復のために……でしょうか?」


暁「そこまでは分からんが……入念に調べた形跡があるな。」


リフトの床に俺達が乗った後よりも乗っている砂が増えている。

手摺りも随分とベタベタ触った痕跡がある。


暁「人数は三人くらいか……。

前回に何か気になることとか無かったか?」


咲実「潰した奴らか?

特に思いつくのはないな……気持ち悪かったくらいで」


和「少し、待ってください……。」


咲実は細かいことを気にするタイプじゃないし、

ぱっと思いつかなければ何もでてこないだろう。


対して和は僅かな情報でもかき集めようと記憶を探り始める。

些細な事でも見つけるつもりなんだろう

目を閉じてその時の映像をじっくりと調べているように見える。


和「いくつか気になる点がありました。」


咲実「まじで?」


和「まず、彼らの体ですが結構痩せてましたね。」


咲実「痩せ?」


暁「食事制限をしていたとかか?」


和「そういう感じではありませんでした。あれは食糧不足による痩せでしょう。」


咲実「そんなに何もなかったか?」


和「私たちは自由に動き回れますからね。

彼らの居た周辺のコンビニやスーパーはまるで何もありませんでした。」


和「かなり荒らされた形跡もあり、

陳列棚の保存機能も死んでいて腐りきった食料も見受けられました。」


和「おそらくは長期間あの場に居続けたことで

深刻な食糧不足に陥っていたのかと……。」


暁「なるほど」


和「それと寝不足の様子でもありましたね。

目の下にクマのようなものが見えました。」


咲実「よく見てんなぁ~」


暁「寝不足……。深刻な食糧不足に寝不足か……。」


咲実「腹減りすぎて眠れなかったとかかね?」


暁「いや、もしかしたら怯えてたんだと思う。」


咲実「ゾンビにか?ずっと居たなら気にしないだろ?」


暁「……俺の推測に過ぎないがあいつらは多分人間を食ってる。」


咲実「……まじで?」


暁「あいつらの死体から相当な数の人間の血の臭いがした。

そして、今のこの状況下で唯一食べられる自然界にある肉っていうのが」


和「人間……ですね。」


暁「思うに動物がゾンビ化しているかどうかの確認は難しいが

人間がゾンビ化してるかどうかはわかりやすい。」


和「理性的な行動を取っていれば

イコール腐敗病に感染してないということですね。」


咲実「それで人間を?うえぇ……気持ち悪ぅ……。」


暁「人間を食ったんだったら飢えてるのも寝不足なのもわかる。

おそらく仲間に怯えてたんだろう。」


和「理にかなってますね。生きるために人間を食べたということは

食糧不足になれば……次に食われるのは自分かもしれない。」


和「そう考えてしまえば……もう寝れないでしょう。

寝込みを襲われる可能性があるんですから」


咲実「一応仲間なんだろ?」


和「いえ、そこまで信頼関係が成立しているようには見えませんでした。

言うなれば生きるための互助会みたいなものだったんだと思います。」


和「少なくとも私達のように何かあったら即座に助けに来る。

……と言った風には見えませんでしたね。」


咲実「でも、オレらが使ったリフトを入念に調べてんだろ?」


暁「多分……俺らを食料としてみてるんだろうよ。」


咲実「ま、マジでか……。」


和「それが一番可能性が高いと思います。

私達を問答無用で襲ったのも食料としてしか見てなかったからなんでしょう。」


和「普通に考えれば私達は怪しいことこの上ありませんし……」


咲実「ゾンビの中を普通に歩いてたしな。」


咲実「ってことは……上に行くと賊が待機してるってわけか」


和「予想が当たっていればですが……まず間違いないでしょう。

また来るという確証はありませんが来ないという確信もありません。」


和「唯一、安全に食べられる食料を生きるために待つ

狩る側としてはまっとうな思考ではありますね。」


咲実「人間としてはまっとうとは言い難いけどな……。」


和「時代が時代ですから……。」


咲実「つか、人間喰うくらいならプラントに行けばいいんじゃねぇの?」


和「それは……難しいでしょう。」


和「電車が使えない状況では世田谷区から

プラントのある八王子市方面までは距離が遠すぎます。」


和「電波塔は23区に集中してますし、

特別区を超えた先には居住区画もありますから、並の行軍ではありません。」


咲実「道中で死ぬ可能性が高い場所に行くよりここで獲物を待つってか?」


和「腐っても東京ですからそれなりに生存者が来るんでしょう。

監視塔の情報記録を調べましたが月に何度かはリフトが動いた形跡があります。」


和「多少の危険を犯しつつ、食料を確保していれば定期的に食料がやってくる。

そう考えれば理にかなってはいます。」


咲実「ただの先延ばしな気がするけどな。」


和「生きることを優先したんでしょう。」


暁「当然だが黙って殺られるつもりはない。

電波塔の位置から潜伏場所を絞れるか?」


和「はい。

クイーンから貰った電波塔の配置図の書かれている東京の地図があります。」


和「昨日通過した場所の地形は全て頭の中にありますので容易に絞り込めます。」


暁「流石だな。」


和「メイドの嗜みですから」


咲実「メイドってまじで凄いのな。」


暁「これは和が特別なだけな気がするが

……咲実はコンテナの扉を持ってきてくれ」


咲実「扉?コンテナ潰すのか?」


暁「いや、念のためにコンテナの後は取り外せるようになってるんだ。」


暁「そこら辺の車のボンネットでもいいんだが

スナイパーライフルだと貫通されるかもだからな。」


咲実「なるなる、了解。」


クイーンが用意した物と和と咲実の力を借り、入念に戦略を練る。

生存者を消費して自分たちだけが生き残ろうとするやつに遠慮はいらない。

とにかく、殲滅することを念頭にお互いの役割を決める。


咲実「準備完了だな。」


和「ですね。」


暁「思ったよりもリフトに物が乗って助かるな。」


準備したのは特性コンテナの扉(盾)と

幾つか使えない車を潰して作った鉄の固まり

作戦は単純で狙撃されたら位置を特定して鉄塊を投げつける。


コントロールに関しては俺も咲実も相当なもので

軽いテストで10回中8回ほどドンピシャで命中した。


残り2回もカスってだし、威力がとんでもなくてカスるだけで的が吹っ飛んだ。

人間なら近くを通過するだけでまず助からないだろう。


和「では、リフトを動かしますね。」


ゴォン ギギギギ ウォォン……


昨日と同じく、軋む音を響かせながらリフトが動き出す。

多少の緊張感はあるが……。


咲実「スパッと始末したいな。」


和「そうですね。さっさと片付けてプラントに向かいましょう。」


本当に多少で割りといつも通りな二人がいれば

大概なんとかなりそうだなぁと気楽に構えてリフトが到着するのを待つ。

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