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とある憑依領主の懐刀  作者: sayu
第一章
6/18

猿芝居


side リーシャ


 今日から、侯爵閣下の直属として日々が始まります。

まずは初日ですので、閣下に挨拶をすべく執務室の前までやってきました。ノックをしようとドアを叩こうとした瞬間に、中から閣下と部下の人の会話が聞こえてきました。


 良く見るとドアがわずかに開いており、そのせいで中の会話が聞こえた様です。

【今日から新人が1名やってきます。あなたのやっている業務を1週間で彼女に教え込みなさい。】部下の人が、1週間ですか?と問い返す声が聞こえてきました。


 仮にも侯爵閣下の直属・・の人が行っている業務を(恐らくとんでもない量であろう)1週間とは厳しいと部下の人も思った様だ。


 【彼女は優秀よ】と閣下は部下の人に言い、さらにこう付け加えました。【たしか貴方の妹さんの、結婚式がせまっていたはずね。彼女が1週間で仕事を覚えてくれれば、貴方にお休みをプレゼントする事が出来るのだけど】と侯爵閣下は部下の人に言い、部下の人も絶句している様だ。【ど・・・・どこでそのはなしを・・・・】と言葉を詰まらせていた。


 【そんな事は置いておいて、もう暫くしたら彼女がここに来るから頼んだわよ。】と言い部下の人も【最善を尽くします】と返答していた。


 この場にいるのがばれるといけない気がしたので、一旦出直してさりげなく挨拶に伺う事にしましょう。【部下の人には悪いので出直しますが、あんな猿芝居に何の意味があるのでしょうか?】




side アイーシャ


 彼女の事ですから、初日は早めにやってくると踏んでひと芝居打って見る事にしました。

この芝居からどれだけの事が読み取れるか、噂の《リシャールの至宝》がどれほどのものか楽しみです。


 彼女なら当たり前の様に、芝居だと言う事は見抜くでしょう。当然、一種の人身掌握術にんきとりだと感じた事でしょう。


 さらに、私が彼女リーシャの反応を見る為に打った、茶番だと言う事も十分に理解出来たでしょう。まだ芝居を打った意味は色々あるのですが、どこまで読んで来るのか? 


 彼女との会話で、お互いに複数の利益じょうほうを得る事でしょう。得た情報から私の繰り出す《次の一手》が読めるのでしょうか?・・・・・・・・・・・・・今から物凄く楽しみです。




side リーシャ


 10分ぐらい経ったので、再び執務室を訪れた。ここに来るまでに、閣下が打った猿芝居の意味を考えていました。いくつかの点で、心当たりがあります。ですがすべてを語らない、気づいていますがあえてスルーしてますよ的なスタイルが良い様に思います。


 恐らくこれは、一石何鳥を(多数の利益を狙った造語です。本来は一石二鳥が正)狙ったテストだと思われます。こちらから底は、見せない方が良いでしょう。

 

 執務室のドアをノックして、反応を待ちます。【入りなさい】とすぐに、反応が返ってきました。

入室すると、侯爵閣下が書類を書いているところでした。


 【執務中に失礼します侯爵閣下。リーシャ・ストラトフ着任致しました。】と定型文的な挨拶をとりあえずしておきました。閣下も【貴方の着任を心から歓迎します】と定型文で返してきました。


 黙っていても仕方がないので、こちらから切り込んで見る事にしました。

『随分とお優しいですね、侯爵閣下。話に聞いていたのと、随分ちがいますね。』と言って見たら苦笑され『家督を継いだ際に無茶をしすぎて、離れてしまった部下の人気取りに大変なのです』と返ってきた。


 『貴方は当時の直属ではないので、被害は少なかったでしょう?』とストレートに聞かれてしまったので、素直に『そうですね。就任当時は、寝る間もなく働いた記憶があります。』と返しておいた。


 『それは迷惑をかけましたね』とあっさり返されましたが、『貴方以上に被害を被った文官がかなりの数に及んでおり、彼らの間で私の評価は最悪なのよ』と愚痴っぽいものを聞かせられました。


 その後も探る様な会話の押収がありましたが、無事乗り切る事が出来た様です。閣下との会話が終了して、部下の人と対面させられました。


 閣下に乗せられている感がありますが、これから1週間でこの人の仕事を引き継ぎ、問題なく結婚式に参加させてあげたいですね。(しかし閣下は、私にどこまでをお望みなのでしょうか?)



 

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