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とある憑依領主の懐刀  作者: sayu
第一章
4/18

悪女

 

 side リーシャ


 村の復興に目処が立ち、アデルハイトに戻って来たある日の事です。

突然、侯爵閣下に呼び出しを受けました。先輩方には、何かミスったのかとか、お前の事がばれたんじゃね?とか面白がられましたが、私にとって一大事です。


 ああは見えても、先輩方は口が堅いし、今まで関わった村の人々には口止めをしています。

私の業績に関しての呼び出しではないと、信じたいです。


 我らの侯爵閣下は、クールビューティと言う表現がピッタリの美人さんなのですが、いかんせん笑顔が妙に冷たく見え、一部では《永久氷壁の微笑》などと呼ばれています。


 そんな彼女の第一声は、『貴方を私の直属に抜擢します。業務に励みなさい。』でした。

私が愕然としながらも、理由を尋ねて見たら『私の友人が、貴方を推薦したからよ』との返答があった。


 もしかしたら友人とはあの村であった、レティシアさんの事なんじゃないかと思い至った。

思えばあの美貌で、ただの旅人と言うのがおかしな事だったのだ。


 もし断れば、彼女に何らかの不利益があるかもしれない。あの時に口止めをしていたらと思うと、頭がガックリと下がった。かろうじて『直属の件、たしかに拝命致しました。』と答えるのが、精一杯でした。




side アイーシャ


 彼女を呼び出し、直属にする旨を伝えた。あの日は気が付かなかったが、あの感情は自分の醜さを自覚してしまった為であった。


 今日も彼女が勘違いする様な事を匂わせ、彼女のレティシアに対する好意を利用した。彼女の葛藤を理解した上で、直属の件を納得させる様に仕向けた。


 私には彼女が必要だが、そんな苛立ちが冷たい口調になってしまった。

彼女は計画通りに折れてくれたが、これから苦難な道が彼女に待ち構えている事でしょう。


 侯爵領は広大であり問題は、日々増産されている。しかも私には人望もなく、彼女が問題解決の第一線に立つ事はちょっと想像するだけで、解ってしまうのだから・・・・・・・




side リーシャ

 

 【なんだか大変な事になってしまった】と言うのが、素直な感想だった。正直なところ、断ったとしてもレティシアに被害が及ぶとは考えづらかった。しかし万が一と言ったこともあるので、仕方がない状況でもあった。


 もし私の能力を知っていて、元々直属として抜擢するつもりだったら・・・・・・。

彼女からの推薦を機に、私に飼い主として首輪を付ける事が目的だった可能性もありえる。


 《私の友人》と一言いっただけで、私が閣下の思惑を読み取り対応する。最終的に首輪を付けた、有能な部下を確保しようと考えての発言だったら・・・・・そう思うと、侯爵閣下の智謀に寒気が走った。


 その日の午後に、気分転換をしよう街に出かけた。そこで偶然にも、レティシアさんを発見する事ができた。彼女を発見した瞬間に、午前中の出来事が自分の中から消えていくのが、自分でも理解出来た。

この時に、《私、本格的にまずいかも・・・・・・・・・・・・・・》と自覚してしまいました。




side レティシア


 侍女に執務室で、業務を行うから部屋に入るなと指示を出しました。以前に同じ指示を出して、お茶を出しに来た侍女を叱責したことがあり、それ以来部屋に入るな=入ったら機嫌を損ねると言う図式が、侍女達の間で常識となっています。


 さっき彼女に会った時は、能面の様な表情をしていました。現代でいえば会社で会長と対面する、平社員な様なものでしょう。


 その顔を思い出した瞬間に、無性にレティシアとして、彼女に会いたくなってしまいました。レティシアでいる時だけ、無償の笑顔を彼女が、提供してくれるからです。


 私の元々の世界での仕事は、芸能人のメイクをしていました。これでも売れっ子で、何人もの大物スターに名前を覚えて頂いていたので、腕には多少の自信があります。


 さらに趣味で、ワリウットの特殊メイクも習っており、変装には自信があります。多少道具が変わったところで、なんの問題もありません。


 恐らく本気で変装をした私を特定出来る人はいないと、自負しております。そんな変装術を駆使した結果、誕生したのがレティシアと言う訳です。今日も偽り姿・偽りの口調・偽りの性格を駆使して、彼女に会い行きます。



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