偵察
side リーシャ
この村の復興もようやっと軌道に乗ってきたなぁと、思いつつ炊き出しをしている時の事でした。
このあたりではお目にかかれない程の美少女が、辺りをキョロキョロしながら歩いていました。
ご飯支度をしながら、その少女を観察していました。格好から察するに、冒険者か旅人といったところでしょうか?
準備が出来たので、何時もの様にみんなにご飯の合図を送ろうと鍋を叩いた時に、音にビックリしたのかその美少女がとっさに此方を振り向いた。
正面から見て改めて思いましたが、ここら一帯でこの少女の美貌に匹敵するのは、侯爵閣下ぐらいでしょうか。そんな事を考えていたら、目があってしまいました。私にそんな気性はありませんが、思わずご飯を一緒に食べませんか?と誘っていました。
まるで使い古されたナンパの様なセリフを、恥ずかしげもなく口走っていました。そんな事は気にもならない程、目の前の美少女に目を奪われていた事と、この少女との会話を楽しもうとしている自分がいる事に、現段階の私は、まったく気がついていませんでした。
side アイーシャ
私は彼女と食事をしながら、何とか情報を得ようとしました。彼女の身元を判別出来ればと思い、色々と探る様な会話をさも好奇心が強い旅人を装って行いました。
そこで分かった事は、
・彼女の名前はリーシャと言い、我が侯爵家に使える文官だと言う事。
・普段は色々な村を回って、トラブル対応の様な事をしている事。
・目立つ事や過分な労働はしたくないと思っている事。
・自分が、《リシャールの至宝》と呼ばれているなどと夢にも思っていない事。
・侯爵閣下《私のことだ》に対しては、別に悪感情は持っていない事。
・何故か、私《偽名でレティシアと名乗っている》に妙に好意的である事。
これだけ分かればあとは、彼女を私の幕僚として招聘する事は難しくありません。
今度また会いましょうと約束をして、私はその場を立ち去りました。何だか心の奥底に良く解らない感情が渦巻いていて、その場に居られなかったです。
side リーシャ
レティシアさんと食事をしながら、私は過去にない程にリラックスしていて何だか余計な事まで喋っている気がします。楽しい時間程、早く過ぎさりあっと言う間に食事の時間が終ってしまった。
彼女は私の仕事を思ってか、会話を切り上げてまた会いましょうと言って旅立って行きました。
美人さんで会話も面白く、気遣いも出来るとは同じ女性として多少の嫉妬感を覚えてしまいます。
アデルハイト(侯爵領で一番大きな都市)にも寄ると言っていたので、また会う機会もあるでしょう。
後になって思ったのですが、なぜか彼女には初対面とは思えない程の好意を感じています。もう忘れかけていますが、男性だった自分が残っていて反応しているのかとも思いました。