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02__幼き妖精の災難

1日目の続きです。



___視点:〔森の妖精(イリフィ)〕- リーゼロッテ=サフィール___


魔法使いリーゼロッテは、何処にでもいる 小さな鳥の姿になって 王宮の門にまった。

深い堀をまとった王宮の門は、長い架け橋の両端にある。

堅牢な城砦を(おも)わせる造りだ。

その先に、更に長い 表の庭がある。

此処は、戦ともなれば 兵が揃い踏みをする場所なのだろう。

門から王宮の入口までは 石畳が敷き詰められ、がらんと広い。

様式からして、エスファニア王国とは違う。

隣国-サマリア王国とも異なる建築様式を、小鳥リーゼロッテは 端から見て廻る。


《 敷地だけなら、王城と同じくらい? 》


エスファニア城は、広い。

慣れない侍従官達は 必ず迷子になる程、歴代の王にり 増築を繰り返された城内は 複雑だ。

それとは違い、この王宮は 空間が広いのだ。

西の庭には 大きな池があり、様々な草木が植えられている。

手入れの行き届いた、景観を重視する庭だった。

次にむかったのは、王宮の中心だ。

一際 大きな楼閣は、中央の西側に建っていた。

小鳥リーゼロッテは、その楼閣を 下から上へと見て廻る。

勿論、中には入らない。

各階の窓枠や 手摺てすりまり、何気なく 観察をする。

そうして 最上階へ達した時、男の声が聴こえた。


  「陛下にらせられましては…… 」


どうやら、其処には この国の王と 臣下がいるらしい。

そう感じて、小鳥リーゼロッテは 上層階を目指した。

声は、大きな窓からこぼれてくる様だ。

その窓にむかってぶ間も、途切れ途切れに 声が聴こえる。


  「どうか、お考え直しを…… 」


懇願している様な科白セリフだが、声は き分けのない子供を諌めるモノだ。

語弊を恐れずに表現するならば『良いから こちらの言う事をいておけ』と云った雰囲気のある声だった。

最も近い窓の手摺てすりんでいたが、直感的に 其処は避けようと(おも)った。

小鳥の 小さな羽根がせわしなく動き、ホバリングをしながら 部屋の中を見る。

さっと見回した視界に、小さな天窓が見えた。


  「くだらぬ!」


一際 厳しい声がした。若い男の声だ。

今、小鳥リーゼロッテに背を向けている男が発したモノらしい。

抑えられているが、有無を言わせない強さがある声だった。

大きな机の向う側につ男は、かなりの長身である。

ピンと伸ばされた背筋から、細いが 脆弱さのないからだ付きをしていると察せる。

市井の噂から想像していたよりも、スリムな体格だった。

最早もはや 痩身と評しても良い。

さっと観察しただけで、小鳥リーゼロッテは、この部屋の真上にある天窓へぶ。


  「陛下……っ」


困惑した声は、大臣か 官吏かんりの者達なのだろう。

先程までとは違い、短い言葉に 震えとおびえを含んでいる。


  「このはなしは終わりにしろ」

  「しかし、陛下………… 」

  「くどいぞ」


冷徹な声は、殺気の様なモノを孕んでいた。

さっ と、室内の者達の顔色が青褪める。


成程なるほど、あれが〔獅子王〕……。》


天窓から 室内の様子をみおろして、彼女は ラッケンガルドの王を観察する。

声の印象の通り、若い王だ。

歳は、おそらく、エスファニア王国の若き男爵-セレディンと そう変わらないだろう。

そして、対する臣下達は、顔を伏せる様にし 恐々としている。


《 恐怖政策? 威圧政策? 》


あきらかに威嚇している雰囲気に、天窓の小鳥リーゼロッテは 小首を傾げた。

幾つもの革新的な改革をしてきた様だが、未だに 臣下との溝はあるのかもしれない。

飾りの王と云う訳ではない様だが、これはこれで良い状態ではない。


《 どうやら、まだ 完全統治はされていない? 》


国王と 臣下達の様子を見て、再度 首を傾げる。

内乱から数年では この程度と云ってしまえば それまでだが、これは 外遊先には適さない気がする、と(おも)う。

これまで魔法使いリーゼロッテが見てきた様々な国には、様々な事情があった。

その中でも、内政の混乱や 王と臣下の確執がある国は 余り良い事が起きない。

最悪の場合、王権転覆をはかる者達の悪意に エスファニア王家の者達が利用される可能性もある。

休暇に訪れた先で 生命いのちの危機に晒されるなど、ってはならない。

勿論、何が起きても護り切るだけの自信も覚悟もある。

だが、ナルシェル王との事があった後だ。

なるべく、いやな思いはさせたくない。

特に、今回の目的は 王と王妃の『息抜き』だ。

安全で 安心な場所でなければ、意味はない。


《 陛下の息抜きは、他の国にして頂かなくては。》


そう考えれば、この国への訪問は回避する事が適切だろう。

視察から戻る前に 他の国へも出向くべきかを考えていると、視線を感じた。


《 ん? 》


改めて 室内をみおろすと、若き王とが合った。

癖のない 艶のある漆黒の髪に、黒々とした 切長きれながの瞳。

長身痩躯にして 脆弱さのない優美なからだに、妖艶と評したくなる様な美貌。

おそらく、老いも若きもうばわれるだろう容姿の美丈夫。

そんな青年が、真っ直ぐ魔法使いリーゼロッテを見上げているのだ。

いつの間にか、室内に 臣下達の姿はない。


  「これは、珍しい」


言うなり、若き王は 壁際の紐を引いた。

がこん、と 天窓が内側へひらく。


《 きゃ⁉︎ 》


天窓のガラス板の上に乗っていた 小鳥の姿の魔法使いリーゼロッテは、そのまま 室内に転げちた。

勿論、床へ激突する事はない。

くるくると回転しても、翼を拡げる。

床まで 1メートルの所で羽摶はばたき、宙にとどまる。

そして、天窓を目指して舞い上がった時だ。

「逃がさぬぞ」

大きな手が 小鳥のからだを包んだ。

強引に、だが 優しく、青年の手が 小鳥リーゼロッテとらえた。


《 不覚……。》


もがいたところで、逃げる事は叶わないだろう。

そう見極めて、魔法使いリーゼロッテは 抵抗せずに手の中に収まった。

「珍しい小鳥、そなたの名は?」

指の間から覗き込む様に尋ねられて、彼女は 瞠目した。

魔法使いリーゼロッテは 今、有触ありふれた 白い小鳥に変身している。

同じ様な小鳥は、この王宮の庭に 幾らでもいる。

何処の国でも、決して珍しい種類の鳥ではない。

それに向かって、この王は はっきりと『珍しい』と言ったのだ。

われ知らずに、魔法使いリーゼロッテからだが硬直する。

名告なのらぬか?」

好奇のを向けられている事も 名を問われている事も、1っの可能性を示唆していた。


《 !––––––––––––失策しまった。》


この国に入った瞬間に感じた違和感・・・の正体が、今になって判った。

幼い魔法使いリーゼロッテは、とらえている手から のがれる事にした。

まずは 嘴での攻撃だ。

「つっ⁉︎」

てのひら突付つつかれて、ラッケンガルド王は 手を緩めた。

その隙に、幼い魔法使いリーゼロッテは 指の間を擦り抜け、天窓へと翔びった。

しかし、今は 小さな小鳥の姿だ。

すばやくは翔べない姿である。

一瞬 遅かった。

「っ!」

先程の紐にって、天窓は ざされた。

「逃がさぬぞ?」

南側にある大きな窓は 閉まっている。

北側にある部屋の入口は、じられている。

き場を失って、白い小鳥は 部屋の隅にあったランプの上に停まった。

「 ––––––––––––どうやら、その様子では 違う様だな」

王が、小さく独白した。

そして、ふぅ と溜息をこぼす。

この間にも、小鳥リーゼロッテは 周囲の様子をうかがっていた。

蒼いが、右の大窓を見た。

ちらり と向けたが、すぐに ラッケンガルド王を見る。


《 逃げ道は、ある。》


この姿でも 魔法は使える。

施錠はされているが、開ける事は容易たやすい。

一瞬の隙をけば、窓を開け 此処からのがれられる。

しかし、その一瞬・・を捉えるのが難しい。

先詠さきよみをされれば 容易に停める能力スキルが相手にある事を、魔法使いリーゼロッテは理解していた。

そのタイミングを図っていると、声を掛けられた。

「君は 誰?」

冷やかだった声が、一変していた。

「何処から来たの?」

やわらかいモノへ急変した声と 表情に、魔法使いリーゼロッテは 再び瞠目した。

勿論、小鳥の姿をしているので 大した変化は見られなかったが、喫驚と同時に 混乱もしていた。

穏やかな声と 好奇心に溢れたを向けてくる男は、先程 臣下達を震え上がらせた〔獅子王〕とは 別人に見える。

「教えてよ」

しらばっくれるべきか 正直に答えるべきかを悩みながらも、彼女は 小さく答えをこぼした。

「北と 西の間より、参りました」

まだ混乱はしていたが、今は 目先の問題を解決する事が先決 と判断したのか、半ば 自棄やけになったのか。

或る意味、正直な答えを返した。

「魔女?」

「そのたぐいの者、と お考えくださって構いません」

「つまり、厳密には 違うの?」

きょとんとしているラッケンガルド王を見て、彼女の戸惑いは 深まっていた。

最初に見た姿は、冷徹で 非情な王の顔だった。

先程の 臣下達のおびえた様子を見ても、恐怖の対象である事は 明白だった。

しかし、今の姿は 無害な猫の様である。

警戒心もなく 威圧感もなく、子供の様に 小鳥リーゼロッテを見詰めている。


《 な……? 》


今の彼には、自国の民から〔獅子王〕とばれる威厳や風格はなく、威圧感すら欠片も残っていない。

臣下達におののかれていた人物とは、とても(おも)えない。

「どう違うの?」

エスファニアの王妃の 幼い弟君の様な無邪気な問いに、戸惑いは増すばかりだ。

「教えてよ」

軽く混乱していたせいか、魔法使いリーゼロッテは うっかりと答えてしまった。

「彼等から、妖精(ディナ・シー)ばれる者の1人です」

この答えに、ラッケンガルド王は 表情を変えた。

すい と、冷徹な王の顔になる。

だが、その視線は つめたいのではない。

何かを企んだ 含みのある微笑をかべたのだ。

「そうか。エスファニアの妖精(ディナ・シー)か」

「っ⁈」

小鳥リーゼロッテは、びくりとからだを強張らせた。

われかえった、と云っても良い。

森の妖精(イリフィ)〕は、有名だ。

魔法属で、そのを知らぬ者はない。

彼女の存在は すべての魔人・魔女の 垂涎の的であり、存在するだけで その地に豊かな実りと繁栄を与える。

人間でも、これを知る者は 彼女を欲してまない。

それだけに、魔法使いリーゼロッテは 普段から変幻を使って姿を変え、必要-以上に 素性をかくす。

習慣化していたと云うのに、何故か 正直に答えてしまったのだ。


失錯しくじった   っ。》


あの仔猫の様・・・・な態度に気がゆるんだのか、身分を明かしてしまったのである。

相手が危険な人物だと理解していたにもかかわらず 本当の事を答えるなど、これまでになかった事だ。

成程なるほど。そのうつくしさも、妖精(ディナ・シー)ならばうなずける」

ラッケンガルド王の言葉に、魔法使いリーゼロッテおのれの予測が正しい事を確信した。


《 何て事……まさか、この人が。》


後悔の渦の中にいる 魔法使いリーゼロッテの、あかさまな動揺を面白がっているのか。

ラッケンガルド王は、ふっと笑う。

少し前の、少年の様な表情ではない。

いろいろな意味で、ぞくりとする笑みだった。


《 逃げなくては………。》


そう(おも)うが、もう それが叶わない事も察していた。

「諦めよ、私からは逃げられぬぞ?」

念を押す様に述べられ、彼女は せた。

「っ〜〜〜〜 不覚でした」

未だに後悔しつつ、幼い魔法使いリーゼロッテは 呟いた。

「まさか、此処にも 戒縛の天賚てんらいそなえる方が いらっしゃるとは………… 」

「ほう、他にもいるか」

「はい」

「そなたがエスファニアにいるのは、このちからるのか?」

「いいえ」

きっぱりと否定して、小鳥リーゼロッテは ラッケンガルド王を見た。

「あの国の方々は、そう云った事をさいません」

「 ………… 」

ラッケンガルド王の表情が、一瞬で変わった。

若いが威厳のある〔獅子王〕の顔から、人畜無害な猫の様になる。

「そうかーーー…… 」

少し哀しそうなになった事に、彼女は 再び面啗めんくらっていた。

「平和な国だもんね〜」

ぽつりと呟いてから、淋しげな笑みをかべている。

おのれの国と比較しての事なのか、自分が辿ってきた境遇との違いに対するモノなのか。

ラッケンガルド王は、ふっ と自嘲する様な息をいた。

彼処あそこの王様は 僕より若いって聴いたけど、どんな人? やっぱり、穏やかで優しい?」

「は、ぃ」

「どんな人なの?」

「ぇ、と……… 」

一瞬前まで 複雑な表情を覗かせていたと云うのに、魔法使いリーゼロッテに向かい合った途端 笑みをかべる。

それも 如何にも無邪気な笑みを、だ。

「優しい?」

「好奇心が旺盛で 狩りなどを好む、壮健で 勇敢な………でも、朗らかで にこやかな方です」

「ふぅん」

何処どこまでも正直に答える小鳥リーゼロッテに、若き王は 相変わらず笑みを向けている。

しかし、その興味津々な顔の中で 瞳だけが淋しさをうかがわせている様に見えた。

「君は、お城に仕えてるの?」

「はい」

「どうして?」

「以前、お約束を………… 」

何と答えて良いか迷いながら、実に簡素に そう返した。

「誰と? エスファニアの王様?」

「いいえ。当時、エスファニア王の執政官をさっていた方と」

「ああ、亡き執政官-ヘリオス=リンザー=クェンティン殿だね。彼と 契約を結んだの?」

生命いのちを、救われました………わたしは、その時の ご恩を返さなければなりません」

それは、8年前の事だ。

「ふぅん」

当時 前エスファニア王に仕えていた執政官-ヘリオス=リンザー=クェンティンとの出会いは、偶然のモノだった。

血塗れの少女と 休暇を郊外の私邸で過ごしていたヘリオスとの、最初の出会いである。

この出会いの御蔭で、消えかけていた 1っの生命いのちが救われた。

同時に、消えてしまった 2っの生命いのちむくわれた。

魔法使いリーゼロッテは、そう確信している。

故に、後日 リンザーのもとを訪れた彼女は、恩を返したいと申し出た。

これに対して リンザーは『いつか 自分に何かあった時に、自分が仕えている人をたすけてほしい』とだけ願った。

そして、魔法使いリーゼロッテは これを受け入れた。

勿論、彼が仕えている人物・・・・・・・など 知るよしもなかった。

「じゃあ、本当に このちからで縛られてるんじゃないんだ」

「はい」

8ヶ月前、リンザーが天寿をまっとうした事で 契約の条件が揃い、魔法使いリーゼロッテは、リンザーの若き主人-フェイトゥーダに仕える事になる。

国土の守護者でもあり 周辺国に人脈もある彼女は、国王の〔盾にしてつるぎなる者〕として 申し分なかった。

リンザーの『先見の明』の成せるわざだった。

「でも、その契約って このちからより厄介だよねぇ」

ふと、ラッケンガルド王が呟いた。

「いつが終わりか判らないんだから」

リンザーは、もう亡くなっている。

彼女を この役目から解放する者は、存在しないに等しいのだ。

「 ………… 」

魔法使いリーゼロッテは、沈黙だけを返した。

おのれの進退については 語る必要はない、との判断だろう。

そんな彼女の様子を見て、ラッケンガルドの若き王は 何故か嬉しそうな微笑をかべた。

ところで、何で この国に来たの?」

話題を変えた王に、小鳥リーゼロッテは 違った意味での沈黙を返した。

正直に言って良いモノか悩んだ後、誤魔化しても意味はないと悟ったらしい。

「今回は、視察に……… 」

言い濁してはいるが、真実を言葉にした。

「エスファニアなら『宣戦布告』じゃないでしょ? 外遊か何か?」

「はい」

「誰かに しらべて来いって命令されて?」

彼女は、エスファニア王国に仕える魔法使いだ。

王の為にしらべて来いと言われれば、断るすべはないだろう。

そう(おも)ったラッケンガルド王の思惑は、あっさりと否定された。

「いいえ、自発的に参りました」

「 …………そうなの?」

意外だと言いたげな声に、魔法使いリーゼロッテは 小さく頷いた。

「私は、此処-数年間 支配区域テリトリーから出ずにおりましたので、周辺国の近況には疎く、お時間を戴いては 諸方を巡る事にしておりました。今回、こちらへ参りましたのも その一環です」

勿論、必要な時は 出歩いていた。

しかし、諸国漫遊と云う訳ではなく、訪ねるべき場所へ直行し 他には寄らず真っ直ぐ帰ると云った味気ない外出だ。

もっとも、その事をはなす必要はないと判断していたし、事実 語る事はなかった。

妖精(ディナ・シー)って、支配区域テリトリーから出歩くの 危険なんじゃない? 狙われるんでしょ?」

これは、事実だ。

魔法属にとって、妖精(ディナ・シー)と云う存在は その属性のまま『光り』である。

ラッケンガルドの王は その事を知っているのだと察して、小鳥は 小さく笑った。

小鳥の姿になっているが、眼の前の青年には 視えているだろう。

「見付からなければ 大丈夫です」

「それで、こんな姿なの?」

小鳥に変幻している理由を指摘されて、魔法使いリーゼロッテは 軽く狼狽うろたえた。

「そっ……こ、れは………… 」

「『これは』?」

確かに、姿を変える事-自体は 日常的にやっている。

これは、彼女だけではなく 魔法使いならば誰しもがおこなえる技能アビリティと云って良い。

中には 変幻出来ない者も、出来るのに面倒がってやらない者もいる。

彼女は、エスファニア城にいる時も 外出する時も、本来の姿でいる事はない。

しかし、この王には その魔法は無意味だと悟っている。

小鳥の姿でいる魔法使いリーゼロッテの 本来の姿が視えたからこそ、こうして 部屋にじ込めた筈だからだ。

「視えて おいでなのでしょう?」

「綺麗な銀髪だね」

まさしく 本来の姿が視えているのだと判り、察していたとは云え 溜息が零れる。

「 ––––––––––––わ たし……… 」

言いづらそうな様子に、ラッケンガルド王は 優しいになった。

「綺麗だね」

「 ………… 」

すっかり俯いた小鳥リーゼロッテに、ラッケンガルド王は そろりと近付いていた。

「とても綺麗だよ」

優しく声を掛けながら、小鳥が停まっているランプに歩み寄った。

「ぁ、りがとう ございます」

彼女は、項垂れていて 気付いていない。

にたり と、若き王の頬が笑みを象った。

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