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迷宮奇譚書  作者: 渦雷
プロローグ
6/19

神様 仏様 雷様  前編

200X年 9月12日 16:00 カシマ神社


「ここがカシマ神社か…」山田は娘を連れてカシマ神社の出入り口である鳥居を潜った。


 昨夜の根下がり松公園での出来事から、カシマ神社に来た山田某。鳥居を潜って30段の階段を昇ると、周囲を森林で囲われた広場となっていた。ぱっと見て広場には手水舎、狛犬、燈籠、神殿、社務所とオーソドックスな作りとなっている。唯一特徴的なのは、道場のような施設があることぐらいか。神社には、犬を散歩させている中年男性と、孫を連れたお婆さんしかいなかった。


「ほとんど参拝者がいないじゃん。しかし、神社とか癒されるわぁ~マイナスイオン全開のパワースポットだなこれは。さて、神主様は何処にいるのかな?」


 手水舎で身を清め、手始めに神社関係者がいそうな社務所へ向かった。綺麗に敷き詰められた砂利を歩くと心地よい音を立てて足跡を作る。社務所に近づくと、おみくじやお守りが売られている窓口があった。


 山田は窓口に顔を覗かせ、「すみませ~ん」と遠慮がちに声をかける。


「はーい、ただいまー」と若い女性の声が聞こえて、着物が擦れるような音ともに、こちらへ向かってくる音が聞こえた。そして、目の前に現れたのはコスプレイヤーではなく、本物の巫女さんが現れたのである。


 一見して女子高校生であろう年齢。白衣に緋袴。顔は薄化粧をしているが、目尻に濃い紅がされているのが印象的である。だが、そんなことよりもなによりも、一番注目される部分がそこにはあった。


 胸が…胸が白衣からはちきれんばかりに大きいのだ☆刹那、山田は娘を抱っこしながら硬直し、上向きで見事な大きさの乳房を凝視してしまう。娘はすでに卒乳していたが、豊かな乳房を見て反応してしまったのか、右手を乳房に伸ばし、左手を口に入れてチュパチュパしだした。山田は胸から顔に視点を移すと、お互いに目が合った。


「あれ?あれ、あれ、あれ?どこかで見たような…」山田はデジャブを感じる。向こうも感じたらしく目線がキョロキョロとしていたが、何かを思い出した表情に変わっていきなり大声を上げた。


「あっ!あなた、昨日の夜に会った痴漢の人!」巫女は怒声を上げて睨みつけたが、娘がそれに驚き泣き出してしまうと、うろたえてしまった。


「えっ、あれ?ご、ごめんなさい大きな声出してしまって。何で痴漢が赤ちゃん抱っこしているの?まさか、誘拐!真性のロリコンだわ…!」


「いや、俺は痴漢でもないしロリコンでもない!それに、この子は自分の娘で、昨夜も公園で驚いたことがあって…」


 ギャン泣きする娘をあやしながら必死に弁明する。散歩に連れていた犬も娘の泣き声に感化されて吠えまくっている。すると、社務所の奥から身体全体に響く音で、


「なんじゃ!建御雷神様の御前で騒々しい。臍をとられるぞ!」と社務所の奥から声が聞こえ、白衣に紫袴、低身長で細身、禿頭に仙人のような白髭を蓄えた、神主と思われる老人が足音も無くこちらに向かってくるではないか。

 神主の言葉は怒っていたが、声質は穏やかで威厳がある。神主の一声で、娘は「ヒックヒック」と少し泣き止み。犬は尻尾を丸め飼い主の足下に隠れてしまった。




 娘をあやして3分・・・娘は泣き止み安心した様子で眠ってしまった。それを見ていた巫女は、本当に誤解していたのかもと思うような表情に変わっている。場が落ち着いたところで、山田は老人に尋ねる。


「あなたが、ここの神主様ですか?」


「いかにも。わしが、このカシマ神社の第56代目神主、塚原卜念(つかはらぼくねん)じゃ。そして、これが孫の、塚原藍那(つかはらあいな)じゃ。」そう言い、藍那と呼んだ巫女の方を向く。


「藍那です。はじめましてというのも変ですが…」藍那はぎこちなく挨拶する。その表情は困惑顔であったが、敵意は若干薄らいでいた。


「56代目!?凄い数字ですね。」


「今も昔もカシマ神社の神主は危険な仕事もあるからのぉ…命を落として神主を交代することが多いのじゃよ。さて、本題に入ろう。お主は何者で何しにきたのじゃ?」


 神主で危険な仕事?と思いつつ「実は…」と山田が話を切り出そうとした矢先に、藍那が口を挿む。


「おじいちゃん、この人昨夜、根下がり松公園から、突然私の前に飛び出してきたの。だから痴漢かと思ったんだけど…?」


「だから、そうじゃなくて!」山田が再び弁明しようとすると、「ええぃ、また騒々しい!」と卜念は山田の目を睨みつけた。刹那、卜念の眼が金色に輝いたように見えたのは錯覚か?山田は卜念に睨みつけられると、蛇に睨まれた蛙のごとく一歩も動けなくなってしまった。


「ほほぉ~ぅ!お主…一瞬だが、わしの力が見えたか。そういえば、よく見ると何かの力を感じ取れる。しかし、お主自身の力ではないな。取り憑かれている様子もないが…。」


「ふぅむ…。」卜念の睨みから外れると、山田は身体が軽くなった感覚を覚えた。


「藍那!おまえの勘違いじゃ。こやつは、むっつりスケベではあるが、嫁と娘を世界で一番愛しており、正直者である。何よりも、胸より尻を好む、大人の男じゃ!」


「なっなぜ、分かったんだ!?」山田は度肝を抜かれた。しかも、あれほど疑心暗鬼だった藍那は、素直に卜念の言葉を信じて「ごめんなさい」と山田に謝罪をする。卜念は平然と話を続ける


「お主が、ここに来た理由もおおよそ見当がついたわ。話が長くなりそうじゃから、明日お主が仕事が終わってから、再度ここに来るのがよかろう。」そう言うと、社務所の奥に引っ込んでしまった。



 その後、山田は藍那に生徒手帳を預かっている旨を話し、明日届けることを約束してカシマ神社を後にした。





今回の宝物:無し

装備:無し


プロフィール

カシマ神社に散歩に来ていた犬:犬種は秋田犬。名はタロウ。性別はオス。年齢は2歳5ヶ月。やんちゃ盛りで飼い主よりも俺様№1の心の持ち主。救急車のサイレンを聞くと無性に吠えたくなってしまうのは獣の性か…。




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