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迷宮奇譚書  作者: 渦雷
プロローグ
5/19

正直者は宝をみる  後編

200X年 9月11日 20:46 山田某自宅


「ただいまぁ・・・すぅ」


 山田は疲れた様子で玄関のドアを開けた。帰りの道中、目の奥が重く、耳鳴りがしていたが、妻の変わらない「おかえり」の声と、娘のエンドレスかとも思われるほど必死な寝返りを見ていたら、すこし落ち着きを取り戻した。部屋着に着替えて、手を洗って、うがいをする、外から帰ってきた儀式を終えて、夕食の席に着いた。今日の夕食は、豚テキ、野菜炒め、ほうれん草の味噌汁であった。


「いただきま~す。うまい。」


「ふふっ♪まだ口の中に入れていないのに、うまいと言ってるわよ。」


 お決まりのギャグをかまして食卓が和み、その後はテレビと夕食を咀嚼する音だけの空間が広がる。山田は食事に集中しながらも、今夜起こった出来事を頭の中で繰り返し思い出していた。



―――――根下がり松公園…あの音の無い空間はなんだったのだろう?そして、黄緑色の光の正体は…――――



 食事を半分ほど済ませたところで「なぁ…幽霊とか信じる?」と山田は妻に不安げに聞く。


 妻は山田の不安げな声のトーンに、私を驚かせようと勘違いし、「なにいきなり?夏はもう終わりよ♪」

と笑い出した。


「いや、そうじゃなくて、なんつうかな、音の無い空間だったり黄緑の光が見えるとかさぁ。」


「やだ、あなたの知らない世界みたい。だけど、あなた体調大丈夫?頭の病気とかの前兆じゃないの…心配だわ。」


「あぁっ!体調は大丈夫だよ。ごめん変なこと言って。実は職場の昼休みに織田無双の話題になってさぁ。」


「織田無双なつかしい~!昔よくテレビに出ていた霊能力者よね。今はどうしているのかしら?そういえば、家の近所にあるカシマ神社の神主さんが有名な霊能力者みたいなのよね。なんか御祓いとかすごく効くみたいよ。近所の奥さんがそこで厄払いしたみたいで、すごく効いたと言ってたもの。」


「近所の奥さんの情報かよぉ~、織田無双並みに怪しいな。」


「あぁっ信じていないでしょ!奥様の情報は週刊誌より当てになることだってあるのよ!」


週刊誌より当てになるのが、どれほどの信憑性があるのか分からないが、山田は「明日は休みだし散歩がてらに行ってみようかな」と思った。無神論者の自分からは想像もできない思いつきだ。しかし、今夜の出来事は非現実すぎて、理解するためには神様に頼るしか考えられなくなっていた。


「カシマ神社ね…明日は休みだし、散歩で冷やかしに寄ってみようかな。最近、運が悪いから、お守りの一つでも買おうか。」


「あらあら♪急に目覚めちゃった感じね。もしかしたら、本当にあなたの知らない世界が見えるかもよ。そういえば、織田無双も言ってたじゃない、正直者は霊を見るだっけ…あなた嘘つけないし本当に見えちゃうかもね♪」


「正直者は霊を見るねぇ…俺は宝が見たかったんだけど…ね。」


「えっ、宝くじ?」


「いやっ、何でもない。この豚テキ美味いよ。特にタレが・・・」


「でしょ!特製のタレだもの・・・・」


 この後も、長野の山が噴火したニュース等の話題で盛り上がり、風呂に入って、床に就くまで、山田は今夜の出来事が頭にこびりついて離れなかった。そして、半信半疑だったカシマ神社の噂が気になりだしており、「早く明日になれ」と興奮して眠れない夜を過ごした。







今回の宝物:無し。

装備:なし。


プロフィール

織田無双:過去にテレビ界を席巻させた霊能力者。テレビの出演では、「正直者は霊を見る」をキャッチフレーズに、愛車であるランボルギーニ・ディアブロSE30で登場するのがお決まりであった。

ライバルにギブミー愛子という霊能力者がいる。最近はテレビには一切出ておらず、噂では詐欺説、死亡説、霊界に修行に行った説等、迷惑だが、どこか憎めないオッサンである。





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