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迷宮奇譚書  作者: 渦雷
プロローグ
2/19

迷宮が私を選ぶのではなく私が迷宮を選ぶのだ!

200X年9月10日 19:18 山田某自宅


「ただいまぁ~す。」


マンションの玄関から、誰にも聞こえないであろう声で挨拶をしながら靴を脱ぐと、妻はキッチンから山田某に聞こえる声で


「おかえりなさ~い。」


と、いつものように優しい声が返ってきた。ダイニングに入ると、0歳6ヶ月になる娘がベビーマットの上で、最近自分で出来るようになった、うつ伏せの状態で、「どうだ!」と言わんばかりに満面の笑みを浮かべて父親の帰りを待ち構えていた。

山田某は、娘の視線を笑顔で返す。そして、仕事着であるスーツを歩きながら脱ぎ、洗面所で部屋着となっている、ハーフパンツとポロシャツに着替えてダイニングに戻り、愛娘と戯れた。


「ただいまでちゅ~う。寝返りゴォロゴロできてすごいでちゅね~!」

「バァーブゥ~。アァ~~ブゥ♪」

「ご飯できたわよ~。」

「うぃーす。」


 本日の夕食は、鯖の塩焼き、ほうれん草のお浸し、南瓜の味噌汁である。山田某は「いただきます」と言い、鯖の塩焼きを一口食べて、


「うまい」


必ずこの言葉を、どんな食事に対しても言うようにしている。それが、妻への感謝の気持ちと家庭を上手に保つ秘訣であると考えているからである。後は、簡単な雑談と食事に集中である。


「あぁ、そういえばこれ課長からもっらたわ。」食プリの商品券を妻に差し出す。まさか、迷宮に入って宝物がこれでしたなんて言えるわけがない。


「なに?あっ食プリの商品券じゃない!どうしたのこれ?」

「課長が、オムツ代にでもてっくれたんだよ。」

「気前がいいわね課長さん。丁度、お米がなくなりそうだったのよ。あっ、でも他の食品を買ったほうが得かしらねぇ。」

「オムツ代にはしないんだね。まぁじっくり考えとくれや。」

「食プリに来るお客さんって、綺麗にしている人が多いのよねぇ…私も、行くときはしっかり化粧しなくちゃかしら。フフッ。」


 そんな談笑で食事を終え、山田某は食器を洗いにキッチンへ向かう。食器洗い、風呂掃除等、夫がやれることを積極的に行うことも夫婦円満の秘訣である。山田某が食器を洗っている最中、妻は立ちながら娘を抱っこしてテレビを見ている。何気に妻の後姿より尻を観察する。


「――― 嫁の尻も食プリマダムに負けてないな―――」


 妻は、今年31歳になり、娘を一人生んでいるが、元々中学生体形であったせいか、体形が崩れず、逆に子どもを生んだことによって、女性ホルモンが開花したのか、出るとこが出てきた魅惑ボディに変身していた。

今夜のYes・No枕はYesであることを願いつつ、21:00には、Noと表示された枕とともに、妻と娘の可愛い寝顔がそこにはあった。赤ちゃんがいる家庭は生活の流れが早いのである。


「ふぅーおつかれちゃ~ん。」そっと寝室のドアを閉める手が寂しい。


 まだまだ残暑厳しい季節ではあるが、それでも朝夕は涼しく、今も窓を開けると虫の音と共に涼しい風が入ってくる。山田某は、ソファに深く腰掛け、テレビのチャンネルをニュース番組に変更する。そして、ビジネスバッグより、迷宮奇譚書を取り出しパラパラと流し読みする。


 迷宮奇譚書は、大きさはB5サイズであり、ページ数は500~700P程あると思う。ページ数が曖昧なのは、本の何処にもページ数が記入されていないからである。1枚1枚ページ数を数えれば、総ページ数が分かるが、めんどくさいのでしていない。ただ、不思議なことに、この本は手に取るたびに重量が変化している感じがしており、今まで見たことがない内容のページがでてきたり、逆に栞紐をしっかり挿んでいないと、もう一度読みたかったページに辿り着けないこともあった。


「次の迷宮は、他人に見つかってもやばくない場所がいいな。何々、浜南森林公園の迷宮、ヒントは樹液まみれのクヌギ下にある…無理無理、俺はカブトムシも触れない虫嫌いだぜ。もっと他には…。」


 腑抜け野郎と思われるかもしれないが、今年30歳になる平凡な会社員になると、虫が好きだったことなど少年時代に置いてきてしまっている。パラパラと本をめくる音が2LDKのマンションに心地よく響く。


 ニュースからは、「東京で蚊によるデング熱の感染が広がっている」と流れている。


「マジかよ!やっぱ、虫は無理だわ。何か他にないのかよ、会社帰りにふらっと立ち寄れる、お手軽迷宮さんはよぉ。おっ、これなんかいけそうだな。」


迷宮所在地:根下がり松交差点前の自動販売機。難易度:部活帰りにゴロナミンZ一気飲み中学生レベル。ヒント:「日頃の行いが良い人はクリアが簡単よ♪えっ私は…グフフッ。」


「俺は、日頃の行い良いと思うし、自動販売機なら立ち止まっても怪しくないしな。ここにするべ。」


 山田某は迷宮奇譚書に栞紐をしっかりと挿み、明日の迷宮探索に胸躍らせて寝室に向かうのであった。


今回の宝物:無し。

装備:無し。


プロフィール

山田某の妻:良妻賢母。中学生体形からの出るとこ出てきた魅惑のボディの持ち主。3サイズB81W55H86(山田某の観察眼)。


山田某の娘:0歳6ヶ月のうお座。寝返り大好き。身長約70cm。体重約6800g。母乳よりミルク派。





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