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シェーラザードと初めての授業

教室に着くと、授業開始五分前だった。


『割とギリギリですね。…まぁ、原因は明確ファッションショーですが』


シェーラはそう呟くと、席に着いたアレンの肩から机の上へと飛び移った。授業の邪魔にならない位置で行儀よく座り、ぱたりと尻尾を揺らす。

ファッションショーをした服のどれもが似合っていたアレンは、結局、無難な黒を基調とした服を選んだ。襟や裾に金の繊細な刺繍が入ったもので、先ほどのファッションショーでシェーラがとても気に入った中の一つだ。

その時の様子を思い浮かべつつ、シェーラはそっとアレンを見上げて小さく鳴いた。


『いつもにも増してかっこいいですよ!』


飽きることなくアレンを見つめていると、ようやく教師が入ってきた。

その教師は、黒板の前に立つと口を開いた。


「それじゃあ、授業を始める。今日は初めての授業だから、全体的に軽く話すだけにしておくか。じゃあ、まず、神聖語の説明から──神聖語とは、精霊と契約するために用いられる特別な言葉だ。昔は精霊と契約できる人間が数多く居たようだが、今では国に数えるほどしかいない。精霊が好むのは純度が高い魔力であり、魔力の保有量が多いほど、強い精霊と契約できるんだが……ここで一つの指標となるのが、その者の相棒となる魔獣だ」

『……はい?』


自分に関連する言葉が出てきた。

そうなると俄然興味が湧いてくるというもので、窓の外を見ていたシェーラは教師の方へと体を向けた。

ぴくぴくと耳を動かし、説明を聞き逃さないように集中する。


「自身の保有魔力量と、相棒となる魔獣の賢さはほぼ比例する。人の言葉をちゃんと理解できる魔獣が相棒なら、その者の魔力量は精霊と契約するのに十分だと言えるだろう。端的に言えば、魔獣は魔力量だけで決まるのに対して、精霊は魔力量とその純度が関係してくるというわけだ」


ご主人様は純度も高いですよ、多分。私のご主人様ですからね!


「と、ここまで魔獣の話をしてはいるが…この中で相棒を持っているのはごくわずかしかいないだろう。貴族にとっては既にいてもおかしくない年齢だろうが、普通の家で魔獣を飼うのは難しいからな。野生は凶暴だから手ずから躾るなんてほぼ不可能だし、かといってそれなりの魔獣を買おうとすれば金貨三枚じゃ足りない」


あ、金貨ってやっぱり貴重なんですね?

この前ちらっと見たところ、ご主人様の財布に何枚か入ってるのが確認できたので、普通に持てるくらいの価値なのかと思いましたが。…そういえば、ご主人様は一応貴族でしたっけ。あの生活をしてると時々忘れますけど。


「そこで、だ。この学園では、三年生になると同時に、魔獣を持ってない者には魔獣を得る機会が与えられる。そこで魔獣側がこちらを気に入ったら契約をすることができるんだが、毎年そうなるのは数えるほどしかいない。…まあ、詳しくはその時期になったら教わることになるけどな。──あとは、そうだなぁ。一応述べておくが、必ずしも魔獣を得る必要はないだろう。相棒を得ることができなくても、歴史に名を残した人はいるからな」


ふむふむ。


「──次に、魔術について話そう。魔術というのは神聖語を基にして造られたもので、精霊の力を借りずにそういった現象を起こそうと考え出された技術だ。自分の持っている魔力だけが拠り所となるから、どこまで使えるかは生まれたときに決まっているようなものだな。魔術については、一、ニ年で重点的にやることになっている。魔力の強さによって独自のクラス編成が組まれるから、このクラス編成でやるのは座学だけになるな。演習は今日の午後から始まるが、今日は様子見もかねてこのクラス編成でやる。魔力の量によって分かれるのは、明日からだ。後で演習のクラスについては廊下に貼り出すから、見ておくように」

『なるほど。……うん、眠くなってきました』


皆さん真面目に授業を受けているところ悪いですけど、寝ていいですか? 魔獣に関係がなさそうな話題になってきたので暇なんですよ。

ご主人様がちゃんと聞いてるみたいですし、そもそも、神聖語とか魔術とか、魔獣わたしが聞いていても意味のない話ですからね。


『(…というわけで、おやすみなさい)』


シェーラは机の隅で小さく丸まると、早々に夢の世界に旅立った。



◆◇◆◇



丸くなって静かに目を閉じている銀狼に視線を固定して、アレンは頬杖をついた。

教師が話しているのは既に知っている内容ばかりで、つまらない。教師よりもシェーラを見ている方がはるかに有意義な時間だろう。


(シェーラ可愛い、本当に可愛い! 触りたいけど…起きちゃうと悪いし)


シェーラは、ふさふさの尻尾に顔を埋めている。息苦しくないのかと思うけれど、気持ち良さそうに寝ているから、それほどでもないのかもしれない。

三限も、あと10分くらいで終わる。お昼を食べるためには食堂に移動しないといけないから、この至福の一時ももうすぐ終わることになるだろう。もっとも、寝起きのシェーラも起きているシェーラも世界一可愛いので、至福の一時は終わらない気もするが。


(今度、シェーラにリボンでも贈ろうかな。絶対に似合うと思うんだけど)


銀色の美しい毛並みに合うのは、何色だろう。

黒を合わせれば格好よくなるし、深みのある青や濃い赤紫色は上品な印象を与えるだろう。シェーラは淡い色合いも似合うから、薄い緑色も映えると思う。

明日と明後日は休日だから、その時にまた街に出てみようか。


久しぶりですので違和感があるかもしれません。何かありましたら指摘していただけると幸いです。

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