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銀の蝶  作者: yu-zu
14/15

彼女の日常

「お嬢様、お嬢様、起きて下さい」


アイゼン帝国の貴族の一人、オーウェル公爵の一人娘にして末の子供、シャルリーヌ=オーウェル、彼女の日常は家族の誰よりも早く始まる


朝日が昇るよりも少し早く


といっても、彼女は寝起きが悪いのでなかなか起きてこない

10分ほどたち、ようやくノロノロ起き始める

が、頭はまだ半分覚醒しておらず、ボーッとしている


侍女をしているスフィエスはそれを微笑ましそうに見ながらも着替えさせ顔を洗わせる


そこまでいき、ようやく頭が完全に起きたシャルは身代わりくんをつくりーーー自分の身代わりくんは寝巻きをきさせ、寝かせており、スフィエスの身代わりくんは彼女の代わりに侍女のお仕事をするーーー自分の部屋においた転送装置で銀の蝶の本部に向かう





本部に辿り着くと、トレーニング室に向かいつつ、抱きついて来ようとする(はく)をぶん投げ、お姫様抱っこで運ぶよとわけのわからないことをいう(しゅう)を蹴り飛ばし、まずはランニングで体を温める


ちなみにこの間にからんでくる、白と朱は(マスター)の邪魔よ!と、怒るスフィエスに

妨害されるも彼らの方が上手(うわて)のために彼女は追い払うのに失敗するも、さらに煩く騒ぎ始める彼らにシャルがイラッとして、キツイ一撃を入れて気絶させられる


ランニングを終えると白、朱のどちらかと組手を始めーーーもう一人はスフィエスの相手をする。ちなみに相手は交代制で黒や青になることもあるーーーしばらくやった後、シャワーで汗を流し、黒がつくるご飯(とても美味しい!)を食べながら、色々と報告を聞きーーーちなみに、ご飯一品一品美味しいと

言わないと黒は拗ねるので、忘れずにやるーーーそこまで全て終えると屋敷に戻ることになる


最後に悲しそうな顔で見てくる青の頭をいいこいいこしてーーー自分白や朱もやって欲しそうにこちらを見るが、それは無視するーーー屋敷に戻る




屋敷に戻ってしばらくゆっくり過ごすと、朝食に呼ばれるので、食堂に顔を出す


「おはようございます」


貴族の娘らしく綺麗なお辞儀をしたシャルは椅子に座り、壁際にスフィエスは立つ


「おはよう、シャル。今日は元気そうだね」


一番最初に声をかけてくれたのは、長兄のフィリップ=オーウェル。優しい顔していつもニコニコ笑っている柔和な兄だ。18となり、そろそろ結婚適齢期に突入する彼は優しい上に顔も良いので夜会の度にご令嬢たちに囲まれている。そんな彼はお城に文官としてあがり、行く末は父親が務める宰相ではないかと言われている


「確かに。いつもより顔色がいい」


心配そうに顔を覗き込み、ほっとした顔をしたのはレイモン=オーウェル。次男であり、軍務に務めているため、兄よりも身体つきがよく、顔も精悍(せいかん)である。(とし)は17で、軍人でありながらも粗野なところがなく、けれども男っぽさがある彼もよくもてる


「良かったわ」


嬉しそうに笑ったのはシャルたちの母親であるティファニー=オーウェル。いまだに10代に見える恐ろしい人で、子持ちには全く見えないが、立派な母親である。ほややんと笑う人で怒ったりしたことは見たことがない


「具合が悪くなった時はすぐに言いなさい」


家長の席に座っている、厳格な顔をしている渋い男の人がシャルの父親、ヴォルフガング=オーウェル。現皇帝の弟であり、今でこそ宰相とあう文官職についているが、昔は武芸で腕を鳴らした男で体つきは次男よりもしっかりとしている。今でも時々は身体をならしているおり、まだまだ現役な人である。性格もその顔のように厳しいが、愛妻家であり、子供たちのことも大切におもっているので、家族の話になると顔が少し緩むことで有名である







そんな家族の末の子供、シャルリーヌ=オーウェルは病弱なことで有名だ。13歳と社交界デビューが終わってそうな歳だが、病弱なためにまだすんでいない。実際は彼女はどちらかというと健康体質なのだが、銀の蝶としてあちこちを飛び回っている間、身代わりくんが公爵家で生活してくれているが、身代わりくんが動こうとするほどその分身代わりくんが必要とする力の量は多くなるので、なるべく動かなくてすむようにしているのだ。スフィエスは彼女専属の侍女なので彼女の看病と称してこもることができる


ところが、力を常に送り込んでいないといけない身代わりくんは本人が重症などをすると影響して寝込んだりするので、あちこち飛び回りそのたびに無理をしているシャルは結局しょっちゅう身体を壊しているのである


そのため家族が心配して、社交界デビューをまだすませていないのである






「いってらっしゃい」


公爵が妻にキスしてでかけ、その後兄二人も出かけるのを見送ると、母親によこになることをすすめられたシャルは部屋に戻った



と言っても素直に寝るわけがなく、再び身代わりくんを出した二人は屋敷を抜け出した


向かった先はーーーお城である






彼女たちは3年前から、アイゼン帝国の軍部に入隊したのである

もちろん、家族には秘密に



















「相変わらず、すげぇな」


「あの細い身体のどこに、あんな力があるんだ」


「お、吹っ飛ばされたな。おーおー、よく飛ぶーーーーー、おい、飛びすぎじゃね…、誰かキャッチしろー!そいつ骨折っすぞ!!」」


あがった怒鳴り声に慌てて吹っ飛んだ近くの数人が慌てて走り回り込んで、落下したところを上手く捕まえた


「大丈夫か?!おい、おい?」


「ヤバいぞ、白目剥()いて、泡吹いてる」


「意識が戻らんっ!救護室運ぶぞ!」


力強く叩いても目を覚まさないことに焦ったその人たちは、担架で救護室に運んで行った











「ったく、やり過ぎだろう」


呆れたように吹っ飛ばした少女に、先ほど叫んだいかついおっさんが近づいて行った


「…この身に降りかかった火の粉が、二度と私を燃やそうなんて馬鹿なことを考えないように、教育的指導をしたまでよ」


ベーッと運ばれていく騎士に下を出した自分の部下の頭をなだめるように叩いたこの男は、特殊部隊団長ことダウリー=デルウェルデスである



このアイゼン帝国は

王族の護衛を任されており、王直属の部隊の近衛部隊

城内や城下町の見回りを行う第一騎兵隊

主要な都市や砦、国境砦につとめる第二騎兵隊

その他の街の見回りを行う兵役隊


第二騎兵隊以上は騎士以上でないと勤めれず、騎士には兵隊の中で腕が良いものをとりたてたり、貴族の子弟がなる

けれども、第一騎兵隊以上は完全に実力主義のためどんなに賄賂を積んでも貴族でもなれず、逆に平民でもやることができる

その中でもさらに選ばれた者が近衛部隊になれる


魔法部隊は魔法を使えるものが多くないので、城に常駐(じょうちゅう)し、あちこちに派遣される


そして、特殊部隊は他と変わっており、絶対に剣と魔法の両方を使えないといけない

この部隊も王直属であり、試験などはなくスカウト制で選ばれる基準などはわかっていない


そんな部隊に二年半前、若干(じゃっかん)10歳で入ってきたのが目の前の少女である

顔が包帯でグルグル巻かれており、口と鼻、目の一部しか出ていない

酷い火傷をおったようでそれは自分も確認していた

青黒い髪をポニーテルでまとめている彼女は身長は低い方で身体つきも細い


若くしかもそんななりで強く見えないのに、皆の憧れの部隊に入ったためよく羨まれ、絡まれているのを前は見たが、容赦なくやり返すことで有名で最近は絡む奴は全くいなくなっていた

けれども、新任が入ってくるたびに馬鹿なやつは絶対何人かいるようで、さっきのやつはその一人なのだろう



「だからといってあれはないだろう。あいつ何日か使い物にならんぞ。上にどやされるのは俺なんだ、少しは手加減してくれ」


「手加減は充分にしましたよ?あそこまで弱いとはさすがに思ってなかったんです」


罰が悪そうにフイと顔をそらすその横顔ーーーといっても、ほとんど見えないがーーに苦笑する


「んじゃ、怒られる時は一緒に怒られてくれ」


「…わかりました」


素直にコクリと頷くその頭をポンポンと撫でると今日の訓練は終わりとばかりに訓練場を出た

強いといってもいまだに13歳なのだ

どうしても甘やかしてしまうのは仕方が無いと勝手に納得することにする


「お前は部隊室に戻っててくれ」


了解と胸に腕を横に当てて敬礼すると少女は走って去って行った












「あら、隊長。訓練は終わりで?」


「ああ。シャルルがまた他の隊のものを白目剥かせたからな。そこの部隊長に報告を一応しにな」


「あら。その馬鹿は誰です?」


スッと腰にさしている得物(えもの)を抜こうとしているソフィを止める


「やめろ。あいつは怪我をしていないから、やめてくれ」


城内で通りかかり、声をかけてきたのはこちらも自分の部下のソフィ。シャルルと一緒に入団してきた。見た目は美しく、ウェーブのかかった金髪をそのまま後ろにながしている。普段はとても優しいので、よく声をかけられているが、興味がないとニコリと笑ってきっていく。だがシャルル命の彼女は、しゃが絡むと豹変する


「シャルルに絡んだ時点で、罪にあたります」


「んなわけあるか。とにかく、本人は吹っ飛ばして満足そうだったから本気でやめてくれ」


「そうですか…。だったらしょうがない…ううん、でも」


「部隊室に戻るんだろ?シャルルも戻ってると思うから、何か飲み物でも入れてやったらどうだ?訓練終わりで。喉渇いているんじゃないか?」


「そうですね!そうします!では!」


そそくさと去っていくその後ろ姿を頭がいたくなる思いで見送った


頼りになるといわれている親父こと特殊部隊団長はさっさと家に帰って、妻に慰めてほしくなった

















「じゃあ、お先に失礼します」


「失礼します」


お腹空いたー!というシャルルことシャルリーヌ=オーウェンに付き合い、スフィことスフィエスは食堂に向かい、シャルがご飯を食べ終わるのを待ち、誰もいない場所まで移動すると屋敷に戻った


ちなみに、シャルが包帯を巻いているのは顔をかくし、兄や父親にばれないようにするためである

逆にスフィエスは屋敷では(かつら)を被り、長い前髪で顔をかくし常に下を向いているので職場では顔を出している




そんな二人は身代わりくんを戻すと、夕飯で呼ばれるまで蝶の本部と連絡を取りあう


夕飯は帰ってきた家族ととりーーー時々誰かがかけるがーーー寝る仕度をした後、何かあった時は蝶の本部に向かい、ない場合は就寝となる











そんな彼女の一日はもうすぐ壊れることとなる

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