『和尚さんと小僧さんとずきんと折れた速記シャープの芯』
ある山寺に和尚さんと小僧さんがいました。和尚さんは言葉足らずで、小僧さんは思慮足らずでした。いえ、あるいは、小僧さんは、わざとそうしているのかもしれません。
和尚さんが小僧さんを連れて、檀家さんのところへ出かけたとき、田んぼのわきに梨の木があって、幾つも実が落ちていました。小僧さんは、梨が好きでしたので、拾おうとしましたが、和尚さんに止められました。いわく、落ちているものを拾うでない、と。小僧さんは、指をくわえながら梨の木をずっと目で追いました。しばらく行くと、強い風が吹いて、和尚さんのずきんが飛ばされました。和尚さんは何もおっしゃらなかったので、小僧さんも何も言いませんでした。しばらく行くと、大きな石があって、和尚さんはその石に腰を下ろしました。額の汗をぬぐおうとして、和尚さんは、ずきんがないのに気がつきました。小僧やずきんを知らぬか、先ほど風で飛ばされました、なぜ教えぬ、落ちているものを拾うなとおおせでしたので、というような会話が交わされ、和尚さんに、つべこべ言うな、勝手に落ちたものと誰かが落としたものを一緒にするな、拾ってこい、とどなられた小僧さんが拾いに行くことになりました。
小僧さんは、随分戻って、ずきんを拾い、和尚さんのところへ戻ろうとしましたが、途中で荷物をたくさん積んだ荷馬車を見ました。どうやら荷馬車には、大量の速記シャープの芯が積まれていて、田舎道を揺れながら運んだため、かなりの数が折れてしまい、折れたものを運んでも仕方がないので、荷馬車からどんどん捨てているようでした。これは、勝手に落ちたものか誰かが落としたものかといえば、誰かが落としたものです。。
小僧さんが和尚さんにずきんを渡しますと、中には折れた速記シャープの芯がいっぱいに入っていました。
教訓:和尚さんが、このずきんをうっかりかぶったとして、剃髪していないように見えたかどうかは知らない。




