長旅①
「と、まぁこんな感じかな?」
カズはこれまで起こった事を全て話し終えた。
「なるほどねぇ」
アヤは席に座り直すと少しニヤニヤした表情を浮かべ、腕を前に組んでいた。
「……カズの話から推測するに、そのお前らと遭遇した邪教徒は恐らく、一等教徒ってところだろうな。」
チェルキオは気難しい顔をしながらそう呟いた。
「一等教徒?」
アヤは首を傾げながら、チェルキオに問いかけた。
「はぁ……。そんな事も知らないのか。」
チェルキオはため息をつき、呆れたようにアヤに言うと、近くの席に着席し、背もたれに寄りかかる。
「うん。知らない。」
元気に答えるアヤ。チェルキオは更に呆れている。
「まず邪教徒にも、兵士や騎士と同様に“位”が存在する。下から。三等、二等、一等教徒、、」
「なーんだ、それなら普通の兵士と一緒じゃん。」
アヤは軽口を叩くと、姿勢を更に崩す。
そんなアヤを見たチェルキオが面倒くさそうな顔をし、こちらを凝視している。
すいませんチェルキオさんアヤはこう言う奴なんです。興味ない事にはとことん興味がないんです。
俺も今朝知り合ったばかりだけど。
「はぁ……。」
本日2度目のチェルキオのため息。
チェルキオは三本の指を立てると説明を始める。
「念の為。一から全て説明するから、よく聞けよ。
まず。三等教徒、こいつらは、特に気にする事はない、ただの雑魚だ。神託すら持っていないから無視でいい。」
指が二本になる。
「二等教徒。この位から奴らが崇拝している邪神より、神託が付与される。上からの命令を忠実に実行する部隊だ。」
「そうなんだ。」
「私も初めて知りました。」
レイナも口を開くと、アヤと共にチェルキオの話を聞いている。アヤは少し興味を持ち始めたのか姿勢が良くなってきた。
指が一本になる。
「一等教徒。選りすぐりの教徒の中でもかなり上位に当たる存在で、神託を使いこなし、常に二人一組での行動している。国家兵でも1人を捉えるのに、少なくとも5人必要レベルで、非常に厄介な存在だ。」
「………待ってよ、上位に当たる存在?て事はそれより更に上の邪教徒がいるのかい?」
アヤはチェルキオにそう問いかける。
「やっと興味を持ったか。その通りだ。この上には残り4つの役職持ちの教徒が居る。それぞれ、
司祭、司教、大司教、教祖。そしてさっき説明した教徒を含めて、邪教徒。そう言われている。」
「一等教徒より上って事はそいつら強いの?」
「うーん。どうだろうね、一等教徒以上となると流石に表には出てこないから、そこまで情報はないんだよ。」
カズは苦笑いしながら答えた。
て言うかこいつら結構邪教徒の事知ってるんだな、俺も流石に位までは知っているが、強さとか邪教徒の神託に関しては全く知らなかった。
「…どちらにせよもう関わらない方がいいね。」
カズはどこから出したか分からないティーカップでお茶を1度飲むと冷静にそう言った。
カズさんそれはフラグって奴では?
でも実際。これ以上関わりたくないな、あの雷の邪教徒は恐ろしく強かった、カズが来てくれなかったら俺はもうこの世には居なかっただろう。
そんな事を考えていると、カズは手に持っていたティーカップを置き、提案をした。
「次の駅までかなり時間があるから交代制で、見張りをしないかい?」
「見張り?」
「見張りと言っても、列車のしかも個室だからね安全だとは思うけど。念の為警戒はしておいたほうが良い。狙いはレイナ君だから、アヤ君はとりあえずレイナ君の近くで守って貰っても良いかな?」
「任せといて。」
アヤは即答だった本当に大丈夫だろうか、まぁ女の子同士の方がやりやすいか。
「2時間交代にしようか、まずは僕から見張りをするよ。言い出しっぺだからね。」
「分かった。」
「あぁ。」
俺とチェルキオが頷くと、カズは立ち上がり、剣を腰に装着する。そのままドアを開け横に付いている足場に乗り、見張りを始めた。
さて、俺はこの2時間かなり暇になってしまった訳だが、どうしよう。疲れているし寝るのはありだが気を遣われて見張りを次に回されそうだからな、できるなら見張りは早い内にやっておきたい。
「そう言えばレイナちゃんって何処出身なの?」
アヤは突然レイナに話しかける。アヤは少しビクッと身体を震わせ、答えた。
「えっと、私はセントルイス出身です。あのアヤさんは………。」
「私は東大陸の真日本出身だよ!」
レイナが言い切る前にアヤは答える。
(まぁ、そうだろうなとは思っていましたけど……。)
「て言うか、なんでアヤちゃんはドルトルイスに?まさかとは思うけど兵学じゃないよね。」
変な略し方をするな。
「私はその、…入に。」
ボソボソとレイナは呟く。
「ごめん聞こえなかった何て?」
「その、嫁入りに。」
「「え!嫁入り?!」」
驚きのあまり俺とアヤは同時にそう大声で叫んだ。
「なんでまた。」
俺はレイナに尋ねる。
「私の家は貴族の家系で、と言ってもそこまで位が高い家系ではないのですが。この前貴族同士社交パーティに出席したさい、その、言いずらいのですが。」
レイナは少しモジモジしながら言うのを躊躇っていた。
「いや、言いたくないなら言わなくても良いけどさ。」
「いえ、助けてもらった恩もありますし。フー。」
レイナは呼吸を整えると、手を 膝の上置く。
「実は結婚を申し込まれたのはドルトルイスの国王である、アルディア・アル=ドルトなのです。」
「「はぁーー!」」
俺とアヤは再び大声で叫ぶ。
「うるさい。」
叫ぶ俺達をチェルキオが静止させる。
「でもでも、アルディアってあれでしょ。今50歳のちょーーおじさんじゃん!」
「まぁ、15歳の人と50歳の人が結婚しちゃダメなんて法律は無いから。」
「だが、あいつ今嫁何人居るんだ?」
「確か、10人位だったかと…。」
「ゲッ、そんなに居るの!私の国だったら有り得ない。」
「……それでだ、そんなお妃様はどうして、護衛も無しに出歩いているんだ?」
チェルキオは1度その場を落ち着かせると、腕を組んだまま、低い声で冷静にレイナに質問をした。
「あの、何と言えばいいでしょうか、実はまだこの婚約はまだ公にされていなくて、護衛もドルトルイス駅からの予定だったので。」
「そっかー。それなら護衛着いて居なかったのも納得。」
「納得早いなお前。」
チェルキオは腕を組んだまま、背もたれに持たれれかかる。
「ダメなの?」
「じゃあレイナは、ドルトルイスに着くまでゆっくりしてたら良いよ。」
俺は笑顔でレイナにそう告げる。
レイナは俺の顔を見るなり顔を赤くすると下を向き、そのまま動かなくなった。
あれ、なんか今俺おかしなこと言ったけ。
やっぱり俺嫌われてるのか?
そう思いながら、下を向いたれいなの顔を覗き込むと、眠っていた。邪教徒に攫われたり、逃げたりして、かなり疲れが溜まっていたのだろう。
「おい、アヤ。」
「なに?」
「レイナ寝ちゃったから、少し横にならせてやれ。」
俺は寝ているレイナの方へ視線を向ける。
「なんで、命令口調なの君?まぁいいけど。」
「それなら、アヤその脇のレバー引いてみろ。」
チェルキオは脇に付いてる謎のレバーを指さした。
「ここ?」
アヤは不思議そうにレバーを引くと、ガシャガシャと音を立て、一瞬にしてアヤとレイナ側の座席がベッドへと形を変えた。
「えぇー凄いじゃんなにこれ!」
アヤは目を輝かせながらベッドのシーツをまさぐっている。
「前に何度か乗った事があるんでな。」
「なんで?」
「なんでも。」
チェルキオをもなかなか鋭いツッコミ入れるな。それともアヤと話すのがめんどくさいのか?
ふと部屋にある時計に目をやると、カズが外に出てから2、3分しか経っていない。俺の見張りの番までまだ2時間はある。
「かなりの長旅になりそうだ。」
俺は、ぽつりとそう呟いた。




