再出発
一一セントルイス駅一一
「念の為大きめの個室を取ろうか。」
カズは駅に着くと、そう俺達に話しかけた。
「別に良いけど、個室なんかあんのか?」
「この駅から特別に個室が付いている車両が連結するですよ。」
「そうなのか!」
全く知らなかった。
「とりあえず4人部屋で良いかな?4人部屋と言っても結構な広さあるし、僕の連れも一人いるから。」
「私は構いません。」
「俺も……。」
「あっ」
「どうかしましたか?」
「えっと……。」
アヤどうしよう、今伝えればまだ間に合うか?とりあえずカズに相談してみるか。
「カズ悪い、俺も一人連れが居るんだ。だからもう少し大きめの部屋でお願い出来ないか?」
「別に構わないけど。」
「今連れてくるから先に切符買っといてくれ。」
俺はそう言うと今まで乗ってきた車両へ歩きだした。
俺も大分お人好しだな、今朝出会ったばかりの厄介な侍女を気にするなんて。
俺はそのまま列車に乗り込む。
「……スー……」
「居た。」
こいつまた寝てやがるのか、腹減ったからと言って俺を半強制的に買い出しに行かせた奴の取る態度では無い。
「起きろ。」
俺は力強くアヤが眠っている椅子を蹴る。
「ん………?」
アヤは目をこすりながら起き上がり、ゆっくりと背伸びをする。まだ眠そうな顔をしながらあくびをした。
「だいぶ遅かったね。」
「……お前。荷物はしっかり見守ってたんだろうな。」
「……?」
「『そんな事言いましたっけ?』みたいな顔してんじゃねぇよ。」
アヤはしばらくぽけっと俺の顔を見つめた後ふいっと視線を目の前の荷物に目をやる。そして何事も無かったかの様に置いてある荷物に指を指す。
「ちゃんとあるよ。」
「お前絶対寝てただけだろ!」
「起きてたさ!」
「最初の方は。」
アヤはボソッとそう付け加えると悪びれる様子もなく肩をすくめた。
「やっぱり寝てたんじゃねぇか!」
「でも盗られてないよ?」
「それは結果論だろ。」
俺は頭を抱える。
「で。買ってきたの?」
「はぁ〜、お前は本当に…。まぁいい。」
アヤは不思議そうな顔でこちらを見ている。
「今は時間が無い、これから個室車両に移動するぞ。」
「……なんで?」
まぁ、そうなるよな。
「説明すると長くなるから、移動中に話す。」
「はいはい。」
そうして俺達は第4車両から外に出る。
個室車両は1度外へ出てからでは無いと乗れないらしい。俺も乗った事が無いからよく分からないが。
確かカズも連れが居るとか言っていた。つまりこれからドルトルイスに向かうのは、合計すると五人も居るのか。
結構な大所帯だな。
ホームに出るとかなりの人がこの列車に乗り込もうとしていた。セントルイスに最初来た時とは大違いだ。
「居た。こっちだよ、ソラカド君。」
後ろからカズの声が聞こえ、振り向くとそこにはカズとレイナそしてもう一人。赤黒い髪、片側だけ刈り上げられた頭。身長は俺より少し高い、175cmくらいだろうか。
一一ちなみに俺は170だ。
「こいつは僕の連れの、、」
「チェルキオ・インカント。」
「俺はシン・ソラカド。」
「あぁ。」
「「・・・・」」
沈黙。
気まずいにも程がある。
「ごめんねソラカド君。こいつ口下手で。」
「いや、全然。俺も口下手な方だし。」
「で、そっちの人が?」
「あぁ、今朝知り合った。」
「東雲アヤだ!」
アヤは堂々と胸を張り、その場に仁王立ちしている。
こいつ……本当に………恥って概念を知らないのか?
「よろしくね。東雲さん。」
「よろしく頼む。でで、そっちのピンク髪の子は?」
「わ、私はレイナ・ブロッサムです。」
「レイナちゃんね、よろしく!」
アヤはぐいっと距離を詰めて笑顔を向ける。
レイナは困ったような表情で俺を見るが、すまない、俺にはどうしようも出来ない。
この女、やっぱり初対面の距離感がおかしい。
「それじゃ、立ち話もなんだし、乗ろうか。」
カズがそう言うと俺達は列車に乗り込んだ。
部屋は、車両の3分の一程度の大きさで、収納式の机や仕切り、トイレにシャワーまで簡易的だが備わっている。
「なぁ、カズ。」
「なんだい?」
カズは剣を壁際に立てると、上に着ていたコートを脱ぐと、壁にかけた。
「ここ結構いい値段するんじゃないのか?」
「そうですね、私にも支払わせて下さい。」
レイナも、俺に続くようにそう言った。
「全然お金の心配はしなくて良いよ。」
「そんな事言っても………。」
「そんなに言うならいいじゃん!」
と、話に割って入ってきたのは東雲アヤだった。
見ると、アヤは既に座席に横になっている。
……アヤこいつは礼儀も知らないのか。
と思った矢先、今度はチェルキオに矛先が向いていた。どうやら彼の剣に興味津々らしい。
「ねぇ、これ振れんの?」
「近寄るな。」
チェルキオは露骨に嫌そうな顔をしながらアヤの手から剣を遠ざける。
最初から思っていたが、異様に大きい剣だ。
刀身だけで、チェルキオとほぼ同じくらいある。
汽笛音が外から聞こえ、腹に響く振動が足元から伝わった。金属同士が擦れる音と共に列車はゆっくりと動き出す。
「どうやら動いたようだね。」
カズはそう言うと近くの席に腰を下ろす。
窓の外を見るとプラットフォームが少しずつ後ろへ流れて行った。
少しして全員が着席すると、カズは話し始める。
「えっと、とりあえず何から説明しようか。」
カズは苦笑いを浮かべ、事情を知らないアヤとチェルキオに今まで起こった事、そしてこれからの事についてあらかた説明をしている。
俺はその間、外の景色を眺めていた。
早めに書き終わりました!




