攫われてたのは美少女でした。
「それで、もう一人の邪教徒は何処に?」
カズは周囲を警戒しながら冷静に問いかける。
「この屋根を降りて、路地裏へ逃げたはず。」
「じゃあ早く追いかけよう。」
俺達は視線を交わし、裏路地に向かって走り出した。
裏路地は人ひとりがギリギリ通れる程の細さだ。さっきの大男が、しかも人を抱えて、本当にここを通り抜けられたのだろうか。壁には古びたポスターや賞金首などの手配書、こんな場所で誰が読むのか不思議でならない張り紙が無秩序に貼られ、地面には空き瓶などが散乱していた。
意を決して裏路地を進む。
何処からか聞こえる笑い声。鼻を突く悪臭の中、裏路地を進むと少し開けた場所へ出た。
建物に囲まれ、表とは全く違う雰囲気を醸し出している。街灯も数本しか立っておらず、微かにしか光を放っていない。
「カズ、居た。目の前だ。」
俺は逃げた大男を見つけ、指を指す。
大男が辺りを見渡しているので近くにあった物陰にふたりで隠れ、様子を伺う。
「あれが、あの体型で良くこの路地を抜けられたな。」
カズは、物陰の隙間から向こうを覗き込む。
「どうする?」
「とりあえず、攫われた人が優先だね。今回はなるべく戦闘は避けよう。」
「了解!」
(攫われた人は……居た。とりあえず、今持ってる物は…っと。)
ポケットの中を確認する。
列車の切符、金、マッチ、ハンカチ。
(つ、、、使えねぇーー。これでどうしろってんだ。)
「ソラカド君、何か使えそうな物はあった?」
カズはこちらを向くと、真剣な面持ちでこちらを見た。
「ポケットに入ってたのだと、列車の切符、金、マッチ、ハンカチだけだな。後はさっきも使った刀もあるけど、ヒビが入ってるから直ぐに折れると思う。」
「じゃあ僕があいつを引きつけるから、その間ソラカド君があの麻袋に入った人を救出してくれる?そのまま逃げて、後で合流しよう。」
「分かった。」
「1.2.3で行こう。」
俺達は物陰の端に移動した。
「1…2…3!」
カズが数え終えると、2人同時に物陰から飛び出した。俺は麻袋、カズは大男の方へ全力で走った。俺はそのままの勢いで麻袋を回収すると、剥き出しになっていた配管を伝って、屋根の上へ登る。
カズは、大男に近づくと飛び膝蹴りを喰らわせ相手の視界を消すと、先程入ってきた道に方向を変えそのまま路地に消えた。大男が、何が起こったのかを理解し切る前に決着する事が出来た。
(まさか、こんなに上手くいくとは。やっぱ凄いなカズの奴。)
後ろから物凄い圧を感じる。
振り返ると、先程、カズさんから飛び膝蹴りを喰らっていた邪教徒の大男さんが屋根に登り、こちらを追いかけて来ていた。膝蹴りを喰らったせいか、仮面の所々にヒビが入っていた。割れている部分もあり、口元の一部が露出している。
(怖ぇーー。俺の事殺す気満々じゃん。)
俺は追いつかれたくない一心で、全力で走った。しかし距離は一向に離れず、むしろ段々と近づいていた。
(あっ。いい事思いついた。)
次の瞬間、シンは突如として姿を消した。
「クソガキ何処へ行った。あっちか。」
大男はそう呟くと、屋根から飛び降り、東の方向へと走っていった。
シンはと言うと………。
「危ねぇ。ギリギリだった。」
俺は、屋根から飛び降り、路地の隙間にあった、ゴミ箱に身を隠していた。ゴミがクッション代わりになったお陰で、臭さと引替えに命が助かった。あと音もなく飛び降りられた。
「ふぅ。助かった。」
安堵と同時に、麻袋が僅かながら動いた。
「あれ。動いた?」
俺は慌てて麻袋を起こし、紐を解くと、中からとても可愛い女の子がこちらを覗いていた。
「あの、」
「はい。」
「助けて頂いてありがとうございます。」
「いえいえ、俺は友達?に言われて助けただけなんで。」
俺は、その女の子を袋の中から出すと、女の子は服に着いたホコリを払いながらその場に立っていた。歳は俺と同じ位だろうか。桃色の髪に、美しい顔。何処かの貴族かお姫様と言っても通じるレベルだ。
「あっ、あの!」
「はい?」
「えっと、その、、。名前をお伺いしても?」
「シン・ソラカドです。君の名前は?」
「レイナです。レイナ・ブロッサム。」
「いい名前だね。」
俺は笑顔で、そう告げた。
「レイナさんはこの街出身?」
「一応そうです。」
「じゃあさ。この後友達と合流しなきゃ行けないんだけど、俺今日この街来たばっかりで、場所とか全然わかんないからさ案内してくれない?」
「全然大丈夫です。」
(なんかやけに話し方が硬いな。俺なんかしたっけ?それともまだ邪教徒の事をきにしてるのか?)
「ありがとう。それで行きたい所が。オゴゴロって店らしいんだけど……。」
「それでしたら、ここを真っ直ぐ行って次の角を右に行けば着くと思います。」
「助かる。」
「とっ。その前に、これ着な。」
俺は着ていた上着を脱ぎ、レイナに着せるとフードを被せた。
「これなら多少は身を隠せる。」
「ありがとうございます。」
レイナはフードを少し手で押えながらそう呟いた。心なしか顔が赤い様にも見えた。
(風邪でもひいてあるのか?)
そんな事を考えながらも俺達は、路地を出てオゴゴロへ向かって歩き出した。周りを見渡すがぎり、邪教徒は見当たらない。おそらくかなり遠くに行ったのだろう。
(早くカズに合流しなきゃな。)
一一セントルイス駅一一
「遅いなぁ。そろそろ限界かも。お腹すいた。」
列車内で席に横になる。
「シン君。早くしてくれたまえ。」
ガクッ
アヤは気絶する様に眠った。




