よろしく
「よっしゃ、成功。」
相手は刀を足元へ取り落とし、膝をついた。
(…何が起きた。居合は近距離技の筈だ。あいつからここまでの距離は8M程ある。なるほど……)
(神託か。)
「はぁ……。めんどくさい、こんな所で。」
邪教徒はため息混じりに呟き頭を抱えると、右手を上げる。
――パチン。
指を鳴らした瞬間だった。
ツゥ――
俺の右頬を、温かいものが伝う。
「血?」
(なんだ身体が動かない、毒か?でもどうやって。)
「毒ではない。少しばかり電気を流した。」
邪教徒は刀を拾い上げながら立ち上がる。先程まで流れていた血はいつの間にか止まっていた。
(電気で身体を焼いて、傷口を止めたか。)
「悪いが、今俺は虫の居所が悪いんだ。」
刀を構え徐々にこちらに近づいてくる。
(俺の我流居合抜刀は一撃必殺の初見殺しだ。しかも俺に斬撃を当てる程の器用さは無い、さっき当たったのはたまたまだ。)
どうする……。俺
「死ね。」
(あぁ、やべ。死んだな、、俺。)
次の瞬間。
後方から複数の刀が飛んできて相手の右肩に突き刺る。
「新手か。」
「大丈夫か、そこの黒髪の君。」
(誰だ?誰が通報した兵士か?)
「あんたは一体?」
「僕は、カズ・フラゼ。一応もうすぐ兵士候補生かな?」
首を傾げながら刀を構える。
歳は同じくらいだろうか。目立つ金髪に見るからに正統派イケメン顔だ。応援に駆けつけてくれたのはありがたいが何だ腹が立つ。
「はぁ…。本当にめんどくさい。」
「帯電。」
邪教徒の刀は電気を纏い青色に色が変化する。
『青龍電撃』
刀を中心に青い稲妻が広がり、稲妻が邪教徒の真後ろに龍を形成した。
「まとめて死ね。」
「…ふぅ。ここは僕が。」
カズは1呼吸を置き持っている剣を屋根に突き刺し、何かを唱え地面に魔法陣を形成している。
「龍刀一閃」
邪教徒の手元で刀が微かに光る。その瞬間、空気が裂けるような音とともに、青白い稲妻を纏った龍が一直線にこちらへと突進してきた。
「土壁」
龍が直進して来るのと同時にカズの剣が土色の光を帯び、目の前に土の壁が出現する。
壁と龍が衝突するが、龍は壁の表面だけを焦がしたが崩れず電気だけを受け流す事が出来た。
「何とか受けきれた。」
「凄えなお前。
おっ、腕が動くそろそろ電気も抜ける頃か。」
「今のを受け流すのか。」
(まぁ、この程度で足止めは十分だろう。)
「仕事は終わりだ。」
そう呟くと、両手を鳥の形に組んだ。
「次は殺られる前に。」
俺は土の壁を壊し、邪教徒との距離を詰め刀を相手に突きつけた。
「はぁ、はぁ。もう1人の男はどこに行った。」
「邪魔だ。」
邪教徒は手の形を変えず、蹴りで俺を退ける。
「クッソ。」
『雷鳴』
稲妻が巨大な鳥の姿を取る。
邪教徒はその背に乗り、夜空へと舞い上がった。
「くっそ、逃げられた。どうする追うか?」
俺は刀を鞘にしまう。
「嫌、今は連れ去られた人を探した方が良いと思うよ。」
カズは剣を腰の鞘に収め、冷静に現状況を確認する。
「・・・?攫われた、人?」
「?」
カズは不思議そうな顔をして俺をじっと見ている。
「えっ。今の邪教徒は人攫いなんだよね?じゃあ攫われた人を探さないと。」
「・・・・。あっ。」
(忘れてたぁーーー、飯の事でイラつき過ぎて攫われた人の事だいぶ忘れてたぁーー。)
「あ、あはは。その顔は忘れてたって顔だね。」
カズはキョトンとした顔をしていたが、すぐに腹を抱え大笑いしている。しかしそれは決して人をバカにする笑いでは無く、安心の笑いであった。
「嫌、忘れてたと言うかなんと言うか。」
「そう言えば君の名前。まだ聞いて無かったね。」
「あぁ、そうえばそうだな。」
確かにその通りだ。名前を一方的に聞いてはいたが、自己紹介を忘れていた。まぁ、あの状況で堂々と自己紹介をする奴は居ないだろうが。
「シン・ソラカドだ。」
「ソラカド君だね。」
とても眩しい笑顔。見るだけで、昇天してしまいそうだ。あぁ、あの戦闘狂にカズさんを少しでも見習って欲しい、そうだよな初対面って普通こんな感じだよな。
「改めて、僕はカズ・フラゼ。よろしく、ソラカド君。」
そう言うとカズは自然に俺に手を差し伸べた。
これは、、、握手で合って居るだろうか?
俺は不安になりながらもカズの手を取り握手を交わした。短い握手だったはずなのに、不思議と胸の奥に残る感覚があった。
この人について行けば、間違えない。そう思わせる様な何かをこの人に感じた。
「…よろしく。」
「とりあえず、攫われた人探そうか。」
カズの笑顔と共に、後ろから絶対的な圧を感じる。
「あっはい。」
これは逆らえませんわ。
カズ・フラゼ
セントルイス出身。
セントルイスの中等教育学校では、2番目にモテていた。剣は叔父のお下がり。




