侍女はめんどくさい
「そこまで驚く事でもない。そんな事より、君……。」
アヤと名乗る女はそう一蹴すると、目をギラギラさせながらこちを凝視している。
「強いのかい!?」
「は、はぁ?何言ってんだお前。」
(急にぶつかって来たと思ったら。なんなんだコイツ)
「だから強いのかい君。」
呆れたような顔でこちらを見ている。
呆れているのはこっちである。
「強さだぁ?悪いが俺はそこまでの戦闘経験はねぇんだよ。」
「なんだ、そうなのか。」
アヤは一瞬で興味を失い視線を逸らした。
(まじでコイツ理解不能すぎる。これが侍と言う人種なのか?)
「はぁ〜。ま、良いか。次からはちゃんと周り見ろよ侍。」
(とりあえずコイツと話すだけ時間の無駄だ。早く席に座ろう。)
俺はゆっくり立ち上がると、近くの空いている向かい合っている席へ腰を掛けた。窓に目をやると景色がどんどん流れていく、やはり馬などとは比べ物にならないスピードだ。
窓から目を離し、ふと向かいの席を見るとなぜか侍女が座っていた。刀は手に持ち、目を瞑っている。
て言うかなぜ向かいに座っているこの女。
「何勝手に目の前に座ってんだよ。」
「故郷を離れて心細い女性に吐く言葉では無いな、君。」
「そう言えば君の名前まだ聞いてなかったね。」
「質問に答えろよ。」
俺はアヤを睨みつけた。アヤは一瞬だけ目を丸くすると、、、
「ふ、ふははは。君面白いね、戦闘経験ないとか言ってた割には、噛みつき方だけはいっちょ前で。」
次の瞬間こちらを指差し笑って見せた。
「褒めてねぇだろ。」
「いや、褒めてるさ。で君名前は?」
「はぁ〜〜。」
俺は深くため息を着くと、横にあった机に肘を上げた。
「シン・ソラカド。」
不貞腐れた多様につぶやく。
「なるほど、それで君の神託はなんだい?」
「それ聞く必要あるか?」
「まぁまぁ、シン君もどうせドルトシアの学校に行くんだろ?」
「その心は?」
俺は再びアヤを睨みつける。
アヤは前のめりになっていた身体を起こすと背もたれに寄りかかる。1呼吸置くと堂々とした口調で話し始めた。
「君のその腰に付いている刀、相当年季が入っているよね。そしてさっきからの君の立ち振る舞い。でもこの時期に刀を持ち歩くのなんて、国家兵か兵士候補の人位でしょ。」
俺の腰に付いている刀を指差し、得意げにそう言い放った。
「…当たり。」
(無駄に洞察力高いな。)
「それで君の神託はなんだい?」
「しつけぇな。斬撃だよ、斬撃。」
俺はアヤの圧に負けいやいや答えた。
「なるほどねぇ〜」
アヤはニヤニヤしながらこちらを見ている。
(とても腹が立つニヤケ顔だ、今すぐコイツをぶん殴ってやりたい、て言うか聞いてきたのそっちだよな?)
「で、人に聞いといて自分のは言わないのか?」
「そうだね、それは不公平だ。私の神託は鬼人化。簡単に言えば身体強化だよ。」
確かコイツ、東雲とか言ってたよな。鬼人化、確か真日本の超有名一族、鬼郷家の代々頭首に発現するはずの神託だ。なぜこんなただの戦闘の事しか頭にないような女が鬼人化を持っているんだ?待てよ、嘘の可能性もあるのか?
「君、今嘘だと思ったでしょ。」
(ゲッ)
図星を突かれて、アヤから目を逸らす。
「まぁ、私東雲って名乗ったからね。疑うのは無理もない。東雲家は鬼郷家の分家に当たる一族で、そこまで有名じゃあないもんね。」
「でも、鬼人化は鬼郷家の頭首、それか頭首クラスの子供にしか発現しないんじゃないのか?」
「私も不思議なんだけど、何故か発現したんだ。」
考え込むように、座っている。
「まっ、どうでもいいけど。」
(どうでもいいんかい!)
「どうでも良いんなら良いんだけどよ。」
「話したい話も出来たし、私は寝る。セントルイスに着いたら起こしてくれたまえ。」
「極端な奴だなお前。」
俺の言葉を最後に、アヤはもう返事をしなかった。
背もたれに深く体を預け、刀を胸に抱くようにして目を閉じる。
(……本当に寝やがった。)
「ったく……。」
俺は小さくため息をつき、再び窓の外へ視線を戻した。遠くには崩れた都市跡、そして果ての見えない荒野。
ドルトシア兵士学校か。
チラッと、向かいの席のアヤが視線に入る。
眠っているはずなのに、その口元は微かに笑っているように見えた。
(こいつ……本当に意味分からん。)
数時間後。
外はすっかり暗くなり、辺りの景色は何も見えない。見えるのは列車の灯りで窓に映った自分の顔と、少しだけ視界に入るアヤの顔だけである。あれからアヤは一回も起きずにぐっすり寝ている。
(寝顔も寝顔で腹が立つ。)
「お客様間もなくセントルイスでございます。降りる方は、準備をした方がよろしいかと。」
別の車両から歩いてきた、車掌が話しかけてきた。
そこまで人は乗っていないので、一人一人に話しかけているらしい、それもそのはず、この車両は俺とアヤしか乗っていない。さっき別の車両も確認してきたが各車両に1~5人程度しか乗っていなかった。
(まぁ次のセントルイスで大量に乗って来ると思うが。)
「ありがと、車掌さん。」
「いえいえ、お連れ様の方は大丈夫でしょうか?」
「全然、無視して貰って大丈夫ですよ。お仕事お疲れ様です。」
「わかりました。それでは。」
車掌は丁寧に礼をすると車掌室がある車両へ歩いて行った。
「おい、もうそろ着くってさ女侍。」
車掌が去った後向かいの席を少し蹴っ飛ばした。
「たく、起きねぇし。まぁ、もうちょい待って良いか。」
シン・ソラカド
神託 斬撃
能力 刀系統の武器に斬撃効果を付与する。
東雲アヤ
神託 鬼人化
能力 額から角を生やす事で身体能力の大幅強化、最大二本まで生やす事が可能。




