長旅③
ようやく1話投稿できました。最近テストが多すぎました。
「お前、ちゃんと強いんだな。」
俺は腕を押さえながらアヤを見る。
まさかこんなに強いとは、流石は侍、と言ったところか。
...…そんなことより出血が酷いな。さっきの矢、よく見ると先端に釣り針みたいな返しがかなりの数付いてる。矢を無理に引き抜いたせいで傷が広がっちまった。
「まぁね。でもさ、なんでさっきコイツらが来るって分かったの?」
アヤはゴブリンの死体を指差し言った。
「なんでって、そいつら攻撃する一瞬だけ、少し空間が歪んでいるように見えたんだ。」
「なるほどね。それが分かれば対処はできそうだねっ。」
アヤはそう言うと再び刀を抜き、周りに出現したゴブリンの首を落とした。
「ふぅ。」
早すぎだろ対応、剣筋が全く見えなかった。アヤが刀を抜いた瞬間にはもうゴブリンは地面に倒れていた。
「でもかなり厄介だね。攻撃される瞬間まで見えないから。」
「いやいや、それだけ出来れば十分だろ。」
「それにしても君の傷酷そうだね、それ。」
アヤは俺の右腕を指差す。
「おい、お前らあまり調子に乗るなよ。」
何処からか声が聞こえる。
アヤは再び刀の塚に手を置くと、辺りを見回す。
(誰も居ない。)
「すぅーー……はぁーー。」
呼吸を整えた瞬間、アヤの額から角が生える。同時に、腕と脚の筋肉がわずかに膨れ上がり、心臓が素早く鼓動する。
「ここだ。」
声のする方向へアヤは視線を向ける。
そこには先程までは居なかった黒い紋様の入ったゴブリンがその場に立っていた。
「我が名はシャドウ・ゴブリン。族長ロード・ゴブリン様の忠実な下僕にして右腕。」
異様に長い爪、曲がった背中。身体には黒い紋様が浮かび上がっている。目の前のゴブリンは口をニヤケさせながらこちらを見ている。
「前置きは良いからさ、なんで列車を止めたか話してよ。」
アヤはシャドウ・ゴブリンと名乗る魔物の話を遮り列車を止めた件について言及した。ゴブリンは戸惑っていたがそのまま話を始めた。
「我々の目的は乗客の回収だ主に人族の雌とかな。」
そう言うとゴブリンは舐め回すような目でアヤを見ている。
「あっそ。くだらない理由で良かった、、よっ」
言い切る前にアヤは刀を引き抜き、接近するとゴブリンの喉元へ刃を向ける。
「早いな、そして鋭い剣筋だ。」
ゴブリンは余裕そうな笑うと自分の右腕に左手で引っ掻き傷をつけるとアヤの目の前からその場に溶け込むように姿を消した。すると突然アヤの背後へ回り込んだゴブリンが姿を再び表した。
「いい、いい、いいぞ!これはかなり強力な子が埋めそうだなぁ。」不敵な笑みを浮かべながら舌なめずりをしている。先程自分で傷を付けた腕はもう回復していた。
(あーこれマズちゃったなぁ。背後取られるなんて、いつ以来だろ。シンくんは腕の傷深そうだしどうしよう。)アヤの額から一筋の汗かツーっと流れ落ちる。
「キモイ。」
次の瞬間ゴブリンの背後にチェルキオが現れる。左手には大きな包み右手には大剣を所持していた。チェルキオは持っていた大剣を大きく振り下ろし胴体を真っ二つにした。
「ガハッ。」
上半身と下半身に別れゴブリンはその場に倒れた。
「痛い、痛い、痛い、痛い痛い痛い痛い。なんなんだこれは。こんなはずでは、こんなはずではぁ。」
切り落とされた上半身が血を流しながら地面を這い、チェルキオから逃げている。よくその状態で動けるなと感心したがさすが魔物というべきか生命力が半端なく高い。
「ありがと。助かったよ。」
チェルキオに向かい礼を言うアヤ。チェルキオは剣を大きく再び振り下ろし、血を振り払うと。ゴブリンの血が付いた箇所を手拭きで綺麗に拭き取る。
「まぁ、あんなザコに背後を取られるとは東大陸の侍も程が知れたな。それで兵士志望なのか?それにシン、油断のし過ぎだ。ゴブリンごときの弓に当たるようでは騎士は当然上等兵にもなれないぞ。」
チェルキオは剣を拭き終わると俺達へダメ出しを始めた。的確過ぎて反論する余地はなかった。
(馬鹿め油断しているのは貴様の方だ、大剣使い。俺はこのまま逃げさせて貰うぞ。そしてロードゴブリン様の恩恵を受け私は復活してやる。)
ゴブリンは再び右腕を引っ掻く。
しかし何も起きない。
「何故だ、何故だ、何故だ何故だ何故だ。」
ゴブリンは何度も右腕を引っ掻くが何も起こらない。
引っ掻き傷をつけ続け腕がボロボロになっている。
「言い忘れていたけど。お前当分神託は使えないぞ。」
言い終えると剣を鞘に収め背中に背負った。
ゴブリンは緑色の肌を青色に染め絶望の眼差しをこちらに向けた。
「それはお前の能力か?」
俺は腕を抑えながら列車から降りた。
「そうだが正確にはそうじゃないな。」
「どういう事?」
アヤは刀を鞘に収める。こちらをチラ見みすると少し破けた裾を切り取り俺に渡した。受け取った俺はそれを替えの包帯として腕を縛り、落ちていた薬草で少し痛みを和らげた。薬草とは言ってもそこら辺に生えてる雑草と何ら変わらない草に近く痛みも少ししか和らげないがないよりはマシだ。
「俺の神託は武具強化だ。要はその武器についる特性を他の武器に移して私用することができる能力だ。」
腕を組み手首に巻いている包帯を再び巻き直す。
「武器の特性?」
アヤは首を傾げる。
「武器には一つ一つ特性があるんだ。例えば足が速くなったりとか武器の切れ味が上がるとか筋力が強化されるとか。その特性を俺は他の武器に移植、つまりは特性を重ねがけして使用することができるんだ。まぁ大抵の武器は3つ以上付与すると壊れるがな。」
チェルキオは得意げに話す。
「バカどもが今頃、帰還しない我々の事を考えロード・ゴブリン様含めた精鋭がこちらに向かっているはずだ。ざまぁみろこの人族どもが。復活し次第お前は可愛がってやるからな人族の娘よ。」
ゴブリンはボロボロになった右手腕を引きずり、こちらに罵声を浴びせている。
「お前まだ生きてたのか。」
今更だがこいつの小物感半端ないな。おそらく爪で引っ掻いた者を周囲に溶け込ませることができる能力だろうが隙があるみたいだな。
「あっ、もう1つ忘れてたな。ほらよ。」
左手に持っている大きな包みをゴブリンに投げる。
中にはとても大きなゴブリンの生首が入っていた。頭には冠を耳には金のイアリングを付けていた。
「ろ、ろ、ろ、ロードゴブリン様?」
ゴブリンの絶望が頂点にまで達したのか一言なにも発しなくなった。
「これどうしたの?」
アヤは体育座りをして木の枝で生首をつついている。
「近くの丘でふんぞり返って座ってたから近くにいた側近まとめて殺してきた。」
アヤもアヤだがケロッとした顔で良くもまぁそんなことを軽々と口何できるな。
「てかこいつやっと絶命したぞ。」
俺はシャドウゴブリンとか名乗っていたゴブリンの死体を思いっきり蹴飛ばした。
「列車の中に人が居るよ。」
アヤは列車に飛び乗るとさっきまでは居なかった乗客が気絶はしているがしっかりとそこに座っていた。
「どうやらあのゴブリンの能力も切れたようだな。」
チェルキオは再びロード・ゴブリンの首を風呂敷に包み持ち上げると後方車両へ移動を始めた。
「てかこれの後始末とかどうするの?」
アヤはチェルキオの後を追いかけた。俺もそれに続き元いた車両へ向かう。しかし見渡す限りゴブリンの死体一体何体殺したんだこいつら。
てかどうしよ後始末は良いけど俺の腕早いとこ医者に見せてないと出血ガチで止まらん。ここまで来て出血多量で死にたくは無いな。ほんとどうしよう。カズは精霊呼び出せるらしいし回復できる精霊はいないのかな?
そんな事を考えているうちに元いた車両に戻っていた。
「カズ、カズ居るか?」
チェルキオは車両の目の前で大きな声でカズを呼ぶ。
「片ずいたかい?」
カズは眠そうな目を擦りながらドアを開けた。
「あぁ。ひとまずケリはつけた。」
「なら良かったよ。」
「なぁ悪いんだけどカズ。これ直せる精霊とか居る?」
俺は恐る恐るカズに腕の傷を見せる。
「かなり酷くやられたみたいだね。残念だけど僕の出せる精霊の中でそこまで酷い傷を直せる精霊は居ないな。力になれなくてすまない。」
カズは申し訳なさそうに頭を下げている。
「いや、いいんだ。」
俺のミスなのに逆に頭を下げさせて申し訳ない。
とりあえずこれ以上血は出せないから圧迫強くしとこ。
俺はさらに腕を布で締め付ける。
「そういえば。運転席を見てきたがブレーキやその他もろもろは破壊されていた。もうこの列車は動かん。」
「そっか。それはかなり困ったね。ドルトルイスまでかなりの距離があるし、ほかの乗客達を残して歩きって言うのは...」
「じゃあレイナちゃんに頼めべばいいじゃん。」
アヤは飄々とした顔で車両の屋根に登り、胡座をかきくつろいでいた。
「私がどうかしましたか?」
話を聞いていたのか車両のトを開けて外へ出てきた。
「……頼むって何を?」
チェルキオが不思議そうに尋ねる。
「ねねレイナちゃん。あれ持ってない?」
「あれ?」
「ほら、あれだよ。天灯弾。」
天灯弾とは主に中央大陸と北欧大陸で用いられる救助信号で、銃の形をしており空に向かって打つこでとても眩しい赤い光を放つことができる代物だ。だがその貴重さゆえ持っている者は限られる。例えばご要人を守護する兵士や中級騎士以上しか持つことを許されていない。
「そんなもの持ってるわけ、」
「ありますよ。」
「あるのかよ。」
レイナはチェルキオの話を遮りながら腰の魔法袋から天灯弾を取り出した。
「えっと。。これをどうするんでしたっけ?」
「貸してみろ。」
そう言ってチェルキオは慌てているレイナから天灯弾を取り上げると引き金を引いた。ヒュンッという音と共に赤い光が空へ打ち上がった。
「で、なんでこれを持ってること知ってたんだアヤ。」
チェルキオは即座にアヤへツッコミを入れる。
「いや〜。いくら正式発表まで黙ってるとは言っても流石に誰も護衛なしにドルトルイスまで1人では来させないでしょ。だから何kmか離れて護衛してるんじゃないかと思ってね。」
淡々と説明する。
「でもなんでセントルイスで攫われた時護衛の人は助けに来なかったんだろう。」
「それは単純に天灯弾を打ち上げなかったからじゃない?」
「あってるの?」
「はい全て。」
俺は後ろに立っていたレイナに尋ねたが全て合っていたようだ。流石はアヤ。
「なら、来るのは上級騎士だろうね。」
「そんな事よりシンの傷は大丈夫なのか?」
「痛いよかなり。」
拭いても拭いても血がでてくる。
「レイナちゃんの神託で何とかできない?」
レイナにアヤは話を振る。
「私の神託は植物には効果ありますが。人間には効くのか分かりません。」
レイナ・ブロッサムの神託は成長あらゆる植物の細胞を活性化指せる事でその植物の成長を早めたり逆に遅くすることができる。
「この状況で試すのもリスキーだよね。」
「一旦助け待つしか無いだろ。」
ですよねーー。
──列車前方、迷いの森──
赤い光が空に打ち上がる。
「団長、天灯弾打ち上がりました。」
黒い軍装に肩から腰までの長さのローブ。襟元の金色のバッチにはひし形のマークが4つならびローブは9とルイス文字で刻まれている。
「あれぇ。今回の任務は比較的楽だと思ったのに。これがあるから騎士は嫌だよ。」
【円卓の13騎士 第九席 グラン・ファスト】
「そう嫌がらないでください、今日は兵士学院中等部の現トップ3の1人が見学に来てるのですから。」
「とりあえず早く行こう面倒な事になる前に片付けたい。」
「それでは。第9騎士団任務開始。」
そうグラン・ファストの付き人が大きな声でそう告げると50人もの兵士と騎士が一斉に動き始めた。
「出発ですよ。」
付き人は下を向き座っていた女性を呼ぶ。
「イア・レインハート」
「はい。」
イアは呼ばれるとフードを深く被り直し、白い手袋装着した。




