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転生令嬢人生は、ヤンデレ騎士の監視付き  作者: サモト


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11話 レベルアップ!

 手をつなぐくらいで照れていては、悪魔も騙せない。

 次の日、わたしはミシェル様と恋人らしさを磨くべく修練に励んだ。


「まずは一緒にお散歩でもしましょうか」

「よろしくお願いいたします」


 柔道の試合前の挨拶みたいに、わたしはミシェル様に右手を差し出した。


 ……大きいなあ。

 ミシェル様の手は、わたしの手をすっぽり包めてしまう。

 色んなことをこなせる自分の手が、初めて頼りないものに感じた。


「……小さいですね」


 ミシェル様が、わたしとは真逆の感想を漏らす。


「どうしてあなたは指の先までもこんなに愛らしいのでしょう」


 ぎゃーーーーーっ!

 口づけられそうになる手を、必死で取り戻す。


「ミシェル様、早い! 展開が早いです!」

「え? ……すみません。つい」


 ついって。意識しなくてもできるの? そういうこと。

 恋愛スキル、生まれつき師範クラス?


「自重しますので、ニナ、戻ってきてください」


 一歩下がってしまったわたしを、ミシェル様が手招きする。

 自分を不甲斐なく思いつつ、もう一度手をつないだ。


「良いお天気ですね」

「ええ。散歩日和です」


 他愛ないおしゃべりをしながら、城の周りを散策する。

 一周する頃には、手をつないでいる状態に慣れた。


(慣れたけど……恋人らしい雰囲気が足りないような……)


 姉とその恋人の様子を思い出し、何が違うか気づいた。


「ミシェル様。腕、組んでもいいですか?」

「どうぞ」


 すぐさま提供された腕に、腕を絡める。

 恋人同士といえば腕組み――だけど、何これ! 歩きにくっ!


(そうか、身長差!)


 ミシェル様は背が高い。わたしの背は、その肩くらいまでしかない。


「すみません、ミシェル様。わたしの背が足りないせいで腕が組めないです……」

「なら、私がニナを抱えればいいですよね」


 言うなり、ミシェル様はわたしをひょいと抱え上げた。

 ぴぎゃ―――――っ!


「ミシェル様、早いです! 展開が早い!」

「え? ……すみません。つい」


 地面に降りると、わたしはもう一度、手をつないだ。

 今度はただ握るのではなく、指に指を絡めて。

 いわゆる恋人つなぎだ。


「これなら歩きやすいし、恋人っぽいですよね」


 ぎゅっと力を込めると、ミシェル様がやおら真剣な顔になった。


「……ニナ。すみません、抱きしめていいですか?」

「はい?」


 良いと言わないうちから、抱きしめられた。


「もう無理……自重できない……できるわけがない」


 ミシェル様がうめくように言う。


 え……無理って……すいません、まどろっこしすぎて、付き合いきれなくなってきましたよね。

 ごめんなさい。いちいち展開早いとか騒がず、極力受け入れます。根性見せます。


「ミシェル様、デートしてもらえませんか?」

「しましょう」


 二つ返事と同時に、ミシェル様は町の方へ足を向ける。

 わたしは慌てた。


「少しだけお時間を! 着替えてきます」


 部屋に駆け戻って、ワンピースに着替える。髪は結ってリボンで飾った。

 ミシェル様の横にいても、恥ずかしくない程度になったはずだ。


「お待たせしました。見苦しくないでしょうか?」

「ニナはいつでも完璧ですよ」


 即答された。お世辞でも嬉しい。

 ミシェル様の馬に乗せてもらって、町へ降りる。


(やっぱりミシェル様と一緒だと目立つなあ……!)


 道行く人が振り返ってくるので、緊張する。


 でも、気にしない気にしない。このくらいで恥ずかしがっていては、いつまで経ってもレベルが上がらない。


「適当に町を回りましょう」


 馬はおいて、とりあえず大通りを進む。


 小さな町だけど、青果店に金物屋、薬屋などいろんな店が軒を連ねている。

 生活に必要な一通りのものはここで揃えられるので、近くの村々からも人がくる。それなりに人で賑わっていた。


「あれ、ニナが作ったものですよね」


 雑貨店の前で、ミシェル様が店先の石鹸とサシェを指差した。

 さすが。よくご存知で。

 生活費の足しにするため、雑貨店で販売させてもらっているのだ。


「ああいうものを作るということは、お風呂がお好きなんですか?」

「はい。とても落ち着くんですよね」

「そうなんですね。覚えておきます」


 ミシェル様が深くうなずく。


 いい感じなのでは?

 一緒に町歩きをして、相手の新たな一面を知る。デートの醍醐味だ。


「ミシェル様は、やっぱりそういうものが気になるんですね」


 ミシェル様の歩みは、魔法道具を扱う店で止まった。


「この土地のポーションは出来がいいですね」

「魔力の濃い、山の水を使ってますから」


 お気に召したようだ。ミシェル様が数本、手に取る。

 財布を出すと、店主が激しく手を振った。


「お代は結構です!」

「いえ、払いますから」

「使徒様からいただくなんてとんでもない!」

「経費で落ちるのでご心配なく」

「どうぞ!」


 ミシェル様以上に、店主は頑固だった。

 さらに数本追加した上で、ミシェル様にポーションを押し付けた。


「身元が割れると、毎度こうなるんですよね……」


 ぼやくミシェル様。

 次の武具屋でも同じことが起こった。砥石を買おうとしたら、特製オイルまで無料で押し付けられていた。


「すごいですね………」 


 その後も行く先々で物を押し付けられ、今やミシェル様の腕は貢ぎ物でいっぱいだった。


「お気持ちだけいただいて、あとで教会に寄付します」


 これ以上、なにかもらってはたまらない。

 わたしたちはコソコソと裏通りへ逃げた。


「ニナ!」


 振り返ると、友人のリリアンがいた。

 真っ赤な顔で、わたしにバスケットを持たせてくる。


「これ、絶対グラン様に食べていただいてね! よろしく!」


 リリアンは「きゃーっ!」と叫びながら、逃げていった。

 友よ、おまえもか!

 お茶会の時、「グラン様の血肉の一部になりたい」と狂気的なコメントをしていたけど、こういうことだったんだ。


「お昼……これでいいですか?」

「せっかくですので、それはいただきましょう」


 ミシェル様は苦笑した。


 わたしたちは馬のところまで戻って、その背に荷物をくくりつけた。

 人目のない静かな場所で、バスケットを開ける。

 三種類のサンドイッチに、飲み物までついていた。


「この、ホロホロ鳥のサンドがオススメです」

「いただきます。――本当だ。柔らかくて、ソースも美味しいですね」

「お口に合って良かったです」


 リリアンも喜ぶことだろう。

 サンドイッチを一つ食べ終えてから、ミシェル様が眉を下げる。 


「すみません。デートになりませんでしたね」

「ミシェル様と一緒なら、どこでも楽しいですよ」


 自然と、そんな言葉が出た。

 この人と過ごす時間は、本当に心地良い。監視という緊張感があるはずなのに、なぜかとても安らぐ。


「ニナ……」


 なんの前触れもなく、ハグされた。

 大丈夫、もうこんなことぐらいでは動揺しない!

 わたしは慌てず騒がず、チーズサンドを飲みこんだ。


「キスしていいですか?」

「どうぞ!」


 続くセリフにもひるまない。

 わたしは根性を見せ、ミシェル様からのおでこへのキスを受け止めた。


 よし! 今日一日でだいぶ恋愛スキルがレベルアップした気がする!

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