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第68章 信長への謁見

京の地に、新たな時代の鼓動が鳴る。

秀吉は信長に謁見し、新たな知行地を得る。

だが、それは終わりではない。堺・石山から「金をふんだくれ」という信長の命が下される――。

(1567年1月)京


年が明けて間もなく、私は三百名の選抜隊を率いて京の町へ入った。


都は思った以上に荒れ果てており、途中、滋賀を抜ける街道もまた閑散とし、往来の人々も少ない。


京入りのその足で、私は信長様のもとに参上した。


まずは将軍擁立と京入城のご祝詞を申し上げ、続けて道中の様子、とくに滋賀周辺の混乱、京の荒廃ぶり


に驚いたことなど、率直にご報告した。


「都の再建と安定のため、いかにすべきか――」


私は自らの考えを述べ、加えて、甲斐武田の動き、徳川や北条の状況、信長様直轄領の改革ぶりも詳細に


お伝えした。


信長様は静かに頷き、「犬山から瀬戸・多治見・美濃加茂までの領有を許す」と告げられた。


名目上は、犬山三万五千石、瀬戸八千から一万石、多治見七千から一万石、美濃加茂一万二千から一万五


千石――合わせて六万から七万石と記されるが、実際は犬山だけで七万石を超え、さらに絹や椎茸、セメ


ント、清酒、鉄製品の収入を加えると、合計で十五万石に相当する規模となることを報告した。


「しかし、それでも黒鋤隊をはじめとする常備軍の維持を思えば、まだ食い扶持が足りぬのが現状です。


当面は、信長様の直轄領を開発しつつ、その間の支援を従前通り賜りたく、伏してお願い申し上げます」


私は深く頭を下げ、信長様のご返答を待った。


私の願いに、信長様は一度だけ静かに考え込んだ。


「そうしてやりたいが――ない袖は振れん」


信長様は唇の端をわずかに歪め、こちらをじっと見据える。


「そこでだ。お前、堺から五万貫、石山から五千貫――しこたま金をふんだくって来い。都の再建も軍の


維持も、それくらいはせねば回らぬ世だ」


私は思わず姿勢を正し、深々と頭を下げた。


「ありがたき幸せにございます。必ずや、ご期待に応えてみせます」


信長様はにやりと笑い、「まずは馬ぞろえだ。その後で存分に稼いでこい」とだけ言った。


かくして私は、新年の天皇上覧の馬ぞろえが終わり次第、堺・石山での金集めという新たな任務に向かう


こととなった。

この章は、戦場を離れても終わらない「戦い」の始まりを描いています。

軍事・経済・政治が絡み合う信長の政略の中、秀吉はいかに立ち回るのか。

これからの舞台は京と堺、次の主題は「経済戦」です。どうぞ次章もご期待ください。



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