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第55章  上洛の急報と重臣たちの嫌味

第55章では、即刻登城命令に遅参した為に、柴田・佐久間らに非難され末席に行かされてしまうが、史実を思い出しながら織田家の今後に備える健一(秀吉)を書きました。




(1565年12月末)岐阜城へ


昼過ぎ犬山城に戻った秀吉は支度を整えるとわずかに遅れて信長の待つ岐阜城へ向かうことになった。


信長の居城に到着した秀吉は、すでに評定が始まっている中、重臣たちの前にたどり着いた。成り上がり


の秀吉が遅れたことで、城内には不穏な空気が漂っていた。


佐久間信盛が皮肉たっぷりに口火を切る。


「ほう、成り上がりの羽柴殿が、お忙しいところわざわざおいでか。殿からの『即刻』の書状が、どれほ


どの重みを持つか、恵那の山奥では伝わりにくかったようですな。」


柴田勝家は黙ってはいなかった。


「くだらん! 常在戦場は知っているな。大将の呼び出しに遅参するような者にそこに座る資格なし。末


席に下がれ、下郎が!」


秀吉は、顔色ひとつ変えずに深く頭を下げた。


「佐久間様、柴田様、ご指摘の通りにございます。恵那の城下、そして人々の冬の支度を整えさせるの


に、手間取ってしまいました。しかし、この遅れはわし一人の不覚。何卒、御許しを。」


信長は無言で秀吉を見つめていた。


その鋭い眼光は、秀吉が遅れた理由とその覚悟を測るようだった。


秀吉は、信長の無言の許しを悟ると、静かに頭を上げた。


そして、柴田勝家の怒気をはらんだ視線を避けず、しかし、一切の弁解をすることなく、重臣たちの視線


の中を静かに歩き、末席に座し歴史の流れを思い起こしていた。


義昭公・・ついに京の表に出るか。


(義輝公の死は、三好三人衆と松永久秀によるもの。しかし、彼らは義昭公の擁立を望んでいない。なら


ば、義昭公は彼らに対抗できる強力な後ろ盾を求めるはずだ。それが、信長様を頼ってきた理由だろう。


だが、三好・松永は畿内随一の実力者。それに加え、将軍家を擁したとなれば、京の公家や寺社も巻き込


む大掛かりな動きとなる。京への道筋は、美濃から近江、そして山城。近江の六角氏や、南近江の甲賀


衆、さらに京に近い細川氏の残党など、行く手には多くの抵抗勢力が控えている。信長様は、これらの勢


力を武力で制圧し、あるいは調略で味方につけて、義昭公を奉じて京へ上る腹積もりか。)


(そして、その先にあるのが、宿敵・浅井長政との関係だ。長政は信長様の妹・お市の方の夫。この婚姻


関係は、信長様が京へ向かう上で近江を通過するための重要な手札となるはずだ。しかし、長政の父であ


る久政は、古くからの盟友である朝倉義景との関係を重視している。もし信長様が朝倉氏と事を構えるこ


とになれば、浅井氏がどちらにつくかは未知数。義昭公の上洛という大義名分のもと、信長様がどのよう


な道を選ぶか。その采配次第で、織田家の、いや、この国の未来が決まる。)


秀吉は、恵那で築き上げた人々の絆と、これからの都で待ち受けるであろう新たな戦いが静かに燃え上が


るのを感じていた。

第55章では、54章と2章に渡って大幅な改稿をいたしました。今後も皆様のご意見やご指摘の度に改稿することがありますのでよろしくお願いします。

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