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第35章 更に歴史を進める 長島一向一揆

一向一揆、ついに蜂起。

信長の軍議に出席した秀吉は、犬山を防衛拠点とした作戦行動に加わります。

数と信仰が動くこの戦、勝つのは合理か、空気か――。

ここから、秀吉=健一の「歴史に抗う挑戦」が本格化します

(1564年3月)岐阜城


春まだ浅い朝、岐阜城に急ぎ登城した秀吉は、信長を囲む重臣たちの輪に加わった。


軍議の間には、柴田勝家、滝川一益、丹羽長秀、森可成、林秀貞、佐久間信盛など、織田家中枢が居並ぶ。


信長は地図を前に、端的に状況を告げる。


「長島の門徒、蜂起した。門徒兵と農民あわせ三千、伊勢の輪中地帯で拠点を築きつつある。」


「美濃はまだ平定間もない、国人衆の忠義も定まらぬゆえ、兵は出さぬ。」


柴田勝家が報告する。


「伊勢・中川筋には私が五百、桑名には滝川一益殿の兵が千五百。」


「犬山には木下(秀吉)殿の手勢、八百から九百程度。」


「墨俣は信長様の直轄地につき、私どもが支配する余地はありません。」


「尾張本国の清洲・那古野の予備兵は三千を保持。」


滝川一益が言葉を継ぐ。


「桑名衆のうち、三割ほどは門徒と深く通じております。出せる実働兵は千程度かと。」


「中川筋も、輪中農民が敵につく恐れが強い。」


「犬山は木下殿の統制が利いておりますが、兵の数では劣勢です。」


丹羽長秀が地図を広げ、墨俣の印を指す。


「墨俣は信長様の直轄地。小規模ながら、舟手と村衆が守備につきます。」


「村ごとの動員は慎重に。」


秀吉が一歩進み出て、犬山の状況を報告する。


「犬山の村々では、門徒筋の集まりが増えております。」


「農民の中には密かに武器を運ぶ者も出始め、寺社筋の動向には警戒が必要です。」


「兵の実働は九百弱ですが、村役人や名主の協力を得て、裏切りを防いでおります。」


信長が家臣たちを見回して命じる。


「よいか。美濃は静観。犬山・桑名・中川筋――ここが要だ。」


「墨俣は直轄ゆえ、村役人と舟手に十分な監視を怠るな。兵の分散を避け、各所の防備を固めよ。」


柴田勝家が続ける。


「長島一向衆は水路と輪中を利用し、各地に内通者を走らせております。」


「伊勢国人にも目配りが必要です。」


滝川一益がまとめる。


「桑名の舟手と犬山の堤防は要。川筋の監視を強化し、門徒の動きを先手で抑える策を進めます。」


信長がゆっくりと一同を見回し、低い声で締めくくった。


「兵は無理に動かすな。各地の情勢が動けば即座に報告せよ。」


「犬山、桑名、墨俣、三点の守りに穴をあけるな。」


軍議の間に静かな緊張が走った。


秀吉は犬山の地へ戻るべく、心を引き締めた――彼の脳裏には、長島一向一揆の悲劇的な結末が、すでに


影を落としていた。

ご覧いただきありがとうございます。今回は、長島一向一揆の前夜となる軍議回でした。


この章のテーマは、武力よりも「信仰」と「空気」の連鎖です。

長島門徒たちの蜂起は、単なる反乱ではなく、民衆の「共同幻想」が国家に挑む構造でした。

信長が慎重に兵を分け、情報の遮断に腐心する様子は、単なる戦略というより、空気を“水際で止める”試みにも見えます。


一方、秀吉は犬山を任されながらも、その背後に「歴史の修正力」という運命を感じ始めています。

今回の一向一揆が、彼にとっていかに決定的な転機となるのか――このあとの章で明らかになります。


次回は、犬山の村に戻った秀吉と、民衆との関係性がより深く描かれます。

信仰の空気に取り込まれる村人たち、その中で秀吉は“戦わずに治める”方法を模索することになります。

お楽しみに!

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