表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
121/183

第120章 第2次石山合戦

(1570年10月)石山本願寺


織田信長が率いる石山本願寺包囲軍に、柴田勝家が合流した。


権六は、当初の予定通り、担当した城を全て落とすか降伏させ、一万五千もの兵を信長のもとへ引き連れ


てきた。


これで、信長軍は総勢四万五千。


圧倒的な兵力で石山本願寺を取り囲んだものの、その巨城は容易には落ちそうになかった。


本願寺は強固な防御を誇り、門徒衆の抵抗も激しい。


信長は状況を見極めると、柴田勝家に命じた。


「権六、そのまま包囲を続けよ。わしは京へ戻る。将軍義昭に、直接会う必要がある」 


信長は、苛立ちと同時に、新たな策を練っていた。本願寺を力攻めにするには犠牲が大きすぎる。


それよりも、この戦の真の火種である将軍義昭を叩くことこそが、急務だと判断したのだ。


柴田勝家は、信長の意図を察し、深く頭を下げた。


「はっ! お任せくだされ。この権六、必ずや本願寺を抑え込み、殿をお待ち申し上げまする!」


権六は堀塞ほりふさぎを命じ、外郭に土手と矢倉を次々と足した。


「舟手が要る――河口を押さえねば、米は尽きぬ」


雑賀・泉州筋の商船はまだ本願寺に出入りする。


権六は堺の行商を呼び出し、塩と油の目録を逆算して締め付けを始めた。


信長は、残りの兵を柴田に預け、少数の供を連れて京へと馬を向けた。


石山本願寺の重厚な門は、信長が去った後も、頑として閉ざされたままだった。


京では、信長と将軍義昭の最後の対決が迫っていた。


■将軍義昭と信長


京・二条御所。土塀の白に、秋の光が鈍く反射していた。


殿下でんか御成おなり――」


侍臣の声が細くのび、織田信長は十数騎の供回りだけを連れ、馬をゆるめた。


廊に並ぶ近習の眼が、冷えている。


将軍・足利義昭は御座敷のふすまをわずかに開け、そのまま閉じた。


信長は扇を畳み、献上の目録と意見状を机上に置く。


「まず一つ、私戦を禁ず。一つ、本願寺へのえにしを絶て。一つ、畿内の諸役は一年止める。その


うえで――天下の軍令は、将軍の御名にて出す。儂はただ、執行するのみ」


義昭の扇が小さく動く。


「織田殿。仏法の山を焼き、いままた法灯を断てと申すか」


「焼いたのではない。乱を摘んだ。そして、乱の根はここにある」


「・・・・・よい。申してみよ、その“天下の次”を」


数呼吸の沈黙。


障子の外で、鴨脚いちょうの葉が一枚、ゆっくり落ちた。


信長は深く一礼し、“合意の設計”を語り始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ