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第108章 お手紙将軍

(1570年5月末)金沢・信長軍議の間


金沢の町はまだ戦火の名残を僅かに残していたが、信長の進軍によってすでに能登は平定され、帰国の途


につくのみであった。


しかし、早馬が次々と信長のもとへ駆け込んでくる――。


「報せ、第三報! 比叡山延暦寺、蜂起の兆し! 僧兵、再び武装!」


「報せ、第五報! 石山本願寺、武装蜂起確認! 摂津の門前町に布陣!」


「・・第八報! 上杉謙信、軍を率いて福井へ進軍開始! 越中・加賀国境の防衛線崩壊!」


そのたびに信長の眉は、わずかに、しかし確かに動く。


そして、目の前に広げられた大地図を見下ろしながら、唇をついっと歪めた。


「――なるほど。すべて、将軍の書状が火種か」


その場に控えていた柴田勝家、明智光秀、そして秀吉が息を呑んだ。


信長は地図上に碁石を置くように、次々と命を下す。


秀吉はその場で少しだけ顔を上げたまま、信長に声をかけた。


「――殿。この動き、やはり火薬を読まれたかもしれませぬ」


「火薬の入手困難なうちに多所同時蜂起ではないかと」


信長は目だけで秀吉を見た。


「わかっておる。奴らには“あれ”を作れまい。」


「だが、我らはまた作れる、奴らは作られる前に、我らを叩こうとしたのだ。」


「窮鼠猫を噛む。あの花火は刺激が強すぎたな。」


地図の上には、すでに敵の居城にも味方の城にも、碁石のような目印が整然と並びはじめていた。


「まずは、上杉よ。奴は動けば強いが、動くまでが遅い。」


「秀吉――貴様の五千ともう五千で、ここ金沢御坊を即刻砦とせよ、お前が得意のやり方で上杉を止める


砦を作れ、いますぐかかれ。」


「はっ。では御免」


「権六は小浜・舞鶴に向かえ。後詰めには佐久間の手勢5千。権六には手勢1万とさらに5千を付ける。」


「佐久間、万一のときは別の道で先鋒を取れ。行け。速さが一番じゃ 」


「はっ!」


「京方面は?」と光秀が問う。


信長は静かに頷いた。


「貴様に任す。一万を預ける。琵琶湖東側より南へ進軍、京へ急行せよ。」


「義昭が何をたくらもうと、もはや“お手紙将軍”に過ぎぬと知らしめよ」


「かしこまりました」


「さて、残りの者は儂の下で武を見せろ。」


「比叡山――この延暦寺こそ、もはや仏ではなく魔の巣よ。」


「わしが3万で琵琶湖西から南下し、一気に抑える」


秀吉は信長が比叡山に向かう事を知らずに砦作りに向かったのだ。


戦は、再び始まる。

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