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第106章  春の進軍、雪解けの鉄槌

(1570年3月)越前


三月初旬。


越前と近江の境界、山間の残雪がまだところどころに残る頃――。


織田信長は、号令一下、八万の軍勢を動かした。


先鋒は木下秀吉、五千。 次鋒に柴田勝家、一万。 中央に信長本隊、三万五千。


さらに滝川、佐久間、丹羽らを率いる各軍1万、合流する農兵を含めて計八万。


春の息吹とともに、鉄の塊が動き出す――そう表現する者もいた。


その行軍は、まるで大河が大地を削るように、静かに、しかし確実に進んでいった。


行軍の列は、山を越え、川を渡り、越前の野へと広がっていく。


その数、その威容は、見るだけで膝が笑う者すら出た。


「ここまでとは・・」


朝倉義景は、城から流れてきた報告に言葉を失った。


十八万石の朝倉家が、出せる兵はせいぜい一万八千。


信長の四分の一以下・・いや、士気を考えれば五分の一にも満たない。


そして最初の戦いは、すぐに終わった。


敦賀の外郭、黒崎の砦は一日ももたずに落ち、一気に越前の南半分が織田の手に落ちた。


秀吉は、例のごとく口に笑みを浮かべながら、城の周囲に陣を敷き、堀を断ち、補給を断ち、味方の一兵


も損なわずに降伏を誘った。


「戦は、勝てる時にしかせんことですな」


農兵たちに向けてそう言いながら、食料を与えながら「信長様に従えば、死なずに済む」と囁き続けた。


やがて朝倉本隊も崩れ、義景は山中へと逃れたが――すでに山中も信長の手が伸びていた。


そのまま勢いを止めず、織田軍は加賀へ進軍。


金沢までの各城主は、信長の軍が加賀に入ったという噂だけで開城した。


「・・我が信長様の名は、もはや軍より先に敵を討つわ」


秀吉がそう呟いた頃には、能登半島の端まで、織田の軍旗が翻っていた。


信長の北陸征伐、完了。


春は、天下布武の空に確かに到来した。

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