表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/92

序章:神の選民計画(現代編)・(戦国編)

初めての投稿です。読み専門でしたがこの度、転生物を書きました。出来るだけ現代風に書いてありますが戦国風味も少し出してみました。良ければ感想、応援よろしくお願いします。

序章1:神の選民計画(現代編)


西暦203X年、カリフォルニア州シリコンバレー。


超国家的IT複合企業「ネオコム・ユニティ社」の本社タワーにて、坂村健一は日本人として初めて上級執行役員候補に名を連ねた若き天才エンジニアだった。


「彼の開発した次世代AIアルゴリズム《GAIAシステム》は、あらゆるビッグデータから“人類一人ひとりの潜在能力を最大限に引き出し、社会全体の幸福度を最大化する”演算機構として世界的に注目を浴びていた。」


だがある日、健一は思いがけず、社内でも最上位に機密指定された「ARC計画(Ark Reboot Civilization)」の存在を知ってしまう。


それは選ばれた者だけを“人類代表”として巨大宇宙船アルカに乗せ、崩壊が迫る地球を脱出、他の惑星に文明を再建しようとするものだった。


さらに驚くべき事実が彼を襲う――その選民を決定するロジックの中核にあったのは、彼自身が開発した《GAIA》の演算モジュールだったのだ。


健一が信じていた「全人類の幸福の最大化」は、いつの間にか「生存に値する者の選別基準」へと転用されていた。


しかもその選別アルゴリズムは、グローバル資本主義における競争力、論理的即応性、生産性などを軸に構成されており、その基準において“日本文明”は系統的に低評価とされていた。


「空気」「忖度(そんたく)」「穢れと祓い(けがれとはらい)」といった日本文化特有の関係性重視の行動様式は、合理性・明確性・即断即決といった資本主義ロジックに馴染まず、AIはそれを“非効率・不透明・集団依存的”と判断して排除対象にしたのだ。


健一はそれを“文化的多様性の否定”だと断じ、役員会議で訴えた。


「これは、選民思想だ! 何様のつもりで人類を選別する? 神にでもなったつもりか!」


会議室は凍りつき、翌日、彼はプロジェクトから即座に外され、ドバイ支社へと左遷(させん)された。

さらに追い討ちをかけるように、婚約者であったCEOの一人娘は、健一のライバルである米国人幹部リチャード・ハモンドとの婚約を発表する。リチャードは巨大資本財閥「ハマーゾン・グループ」の直系だった。


――全ては仕組まれていたのだ。健一という“異分子”は、最初から除外される運命にあった。


打ちひしがれた健一は、自暴自棄のまま自ら現地調査へ赴く。


「ある夜、彼は国際会議の帰路、自身の行動が引き金となったかのような爆破テロに巻き込まれ、深い闇に沈んでいく。」


しかし、意識が消えかけたその刹那、彼の脳裏に“何か”が語りかけた。


「あなたの叫びは届いた。しかし、構造は変わらない。


ならば、別の時空で“構造そのもの”を学びなさい。


次は、“空気”の国、日本だ。あなたは、“日吉丸”として生きる――」


序章2:神の選民計画(戦国編)

日吉丸――いや、転生者・坂村健一が目を覚まして間もなくのことだった。


駿河(するが)のとある山間部寒村。


そこで彼は、年貢米の横流しを咎め(とがめ)られた若者が、名主の裁きによって村から追放される場面に立ち会うことになる。


「この者、田畑を隠し、年貢を誤魔化しおった。不届き千万。村の“和”を乱した罪、許されぬ!」


そう言い放ったのは、村の名主であり、本家筋の「おとな」の筆頭であった五左衛門。


彼の周りには他の「おとな」たち――名主、古老(ころう)用水頭(ようすいがしら)――が黙してうなずいていた。


日吉丸は、その若者の言葉を聞いて愕然とする。


「……わしは、名主さまの蔵に運べと言われた通りにやっただけだ! 米が不足しているからと……!」


「黙れ!」

名主が一喝すると、場にいた村人たちは一斉に視線を逸らした。


その場に居合わせた農夫が、日吉丸に小声で囁く。


「おぬし、よそ者じゃな。よう聞け……この村じゃ“おとな”が親で、わしらは“子”よ。」


「親の言うことに逆らえば、それは“親殺し”と同じ。たとえ正しかろうが、空気を乱す者は追われる」


日吉丸は耳を疑った。


「それが、仕組みなのか……?」


「仕組み、というより“空気”じゃな。」


「村の“空気”が、そうさせる。誰もそれを破れぬ。」


「破ったら、次はわしらがその若者の席に座るだけじゃ」


農夫の目はすでに、諦めきった濁りを帯びていた。


本人も薄々わかっていたのかもしれない。


自分の役目はこの様のときの為に村に居させてもらえていたのだと。


もっと別の能力がありその席に自分が座らないか、または逃げるか。


予め村の空気を読むことでしか回避できない。


その瞬間、日吉丸の中で確信が走った。


誰かが隠し田畑の責任を取らなければならない事は分かっている。


しかし村の大人たちの合意が村全体の合意形成となるこの仕組み。


(これが、“空気”か……!)

誰が正しいかではなく、“誰が空気を読めたか”が、生死を分ける。


論理でも、証拠でもない。


“和”に従うか、“場”を乱すか――ただ、それだけが判断基準。


このすがすがしいまでの「大の虫を生かす為に小の虫を殺す」理論。


数人の代表者が決めた事を村全体で話し合いすらなく、初めからそうであったかのように全体の合意がなされる。


(ここでは、力より、真より、空気のほうが強いのか)


彼は思い出す。

自らがかつて203X年、超国家企業で外されたときもまた、「間違ったことは言っていない」と自信を持っていた。


だが、その場の“空気”にそぐわなかった。それが全てだった。


(あのとき俺は、構造を変えようとした。今度こそ――その“空気の構造”そのものを、見極めてみせる)


山里に響く夜の虫の声の中で、日吉丸の決意は、静かに固まっていった。

ご覧いただきありがとうございます。


序章では、現代のAI社会で“選民思想”に巻き込まれた技術者・坂村健一が、死を通じて戦国の時代に転生する導入部を描きました。


テーマは「合理性の限界」と「空気の支配」。

科学技術の頂点にいたはずの男が、今度は“空気”によって秩序が決まる時代に転生する――これは、ある意味で現代社会への逆照射でもあります。


また、死の間際に「君を転生させる」と語る“神の声”は、本作の重要な伏線の一つです。

今後もこの“声”の正体と、健一=日吉丸の使命が徐々に明らかになっていきます。


次章からは、いよいよ戦国編本番。貧しい村の一角で、飢えと差別、空気と暴力が交錯する生活が始まります。

果たして彼は“違う秩序”を創れるのか――今後の展開にぜひご期待ください!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ