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世代の勇者「短編シリーズ」

世代の勇者「たった一人の親友」

作者: グミ

本編「世代の勇者」に登場するキャラクター。

エリックの短編小説です。


今日も親友と剣を振る。こんな退屈しない日々が… 。一生。続けば良いのに。

生きていれば、想像出来ないような事なんて幾らでも起きる。その中でも確率の低い出来事に、俺の親友(パートナー)は巻き込まれた。


「やっぱり運命だったんだな」

「本当にそう思うのか?」

「当たり前だろ?」

俺の親友(パートナー)。ヘルアは左手の模擬剣を俺の左脇に振るう。その攻撃を柄で弾き、手首を返して、左上に薙ぎ払う。ヘルアの手から離れた模擬剣は音を鳴らし、地面に落ちた。


「調子が出ないか?」

「…いや。一刻も早く王国に向かいたいと思っただけだ」

「そっか…」

ヘルアは勇者学校の推薦入学者に選ばれた。その事実が、自身の無力感と嫉妬を募らせる。


「お前は凄いよな…」

「?武器を弾かれたのは俺だぞ?」

「そうじゃねぇよ」

「?」

思えば幼い頃から今日まで、20年間。争い、喧嘩し、共闘し、研磨した。この日々が、終わろうとしていると。無くなると思うと。心の底から後悔の念が募る。



何故俺は選ばれなかった?


もっと努力すれば



そんな後悔をしても、現実は変わらない。ヘルアは基本怠け者だが、自分が信じる事に関しては積極的に動く。そうなると必然的に、ヘルアは明日までに旅立つ事は確定した。でも…


「もう一戦やるか?」

まだ…別れたくない。親友(パートナー)であるはずのお前が、躊躇なくここを旅立つ事に納得がいかない。俺だけなのか?俺だけが…親友(パートナー)だと思い込んでただけなのか?


「どうする?」

「…いや、辞めとこう。選ばれた以上。こんな所で時間を潰すわけには行かない。」

「……そうか。なぁ?俺も…勇者学校に入ろうと思うんだ。お前がいないと、この場所にはもう強い奴がいない。だから、二人で王国に行かないか!!」

「…別に。[エリック]が自分で選べよ」

「じゃあ付いてく!ヘルアが推薦入学かぁ…お前!俺との戦闘で勝ったことないのにな!」

「うるさ。さっきのまぐれを抜いたら俺が全勝だったろ?」

「は!どの口が!!」

模擬剣を直し、二人でこっそり訓練所から抜け出す。少しでも隣にいる為に、勇者学校に入るなんて嘘をついてしまった。でも。それでもやっぱり、ヘルアと居る方が楽しいから。本当に勇者学校に入るのも悪くない。


シェアハウスしていた家に戻り、互いに部屋に戻る。荷物を纏めて、明日の出発時間を決める。ヘルアは途中、


「用事がある」

といって、家を離れた。夜。空を見ながら思い出を振り返る。


「思いがけない事。まさかヘルアが推薦入学者になるなんてな…」

これから。一体どんな事が起きるだろうか。勇者学校に入ると言う事は、ヘルアと同じくらい凄い奴も居るかもしれない。最前線に駆り出される可能性もある。それでもやっぱり。


「退屈しない人生を。」

夜も冷え込み、夜遅くに俺は家に戻った。夜が明け、太陽が大地を照らす。出発10分前に俺は目を開けた。


「…行くか」

立ち上がり、荷物を持って部屋を出る。


「ヘルア〜おはよう。準備しろよ〜」

あくびをしながらヘルアの部屋を開ける。しかし、ヘルアは居なかった。荷物も無く、部屋の痕跡を確認し、少し前に家を出たと分かった。


「昨日の間に用事が終わらなかったのか。まぁ良いや!集合場所に行こうかな」

道中襲われない様に、鉄剣を二本持ち、シェアハウスを出る。


「…旅立ちって。こんな悲しいもんなんだな。」

心のどこかで、ワクワクする物だとばかり思っていた。しかし、馴染みのある場所から離れる事は、少し。悲しい物だった。


「でも。ヘルアと一緒なら!辛くねぇわ!!」

故郷を背に、約束の場所へと進む。案の定。そこにはヘルアが立っていた。


「!おーい。また…」

その声は。ヘルアには聞こえなかった。途中で止まったエリックの声は闇に消え、その代わり、一人の青年の声が響いた。


「ヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダ!!!!!!!!!」

「うるさ。」

「…」

直感で分かった。恐らく彼も推薦入学者なのだと。そして。俺の脳内に受け入れられない言葉が過った。



新しい親友(パートナー)



「…。!エリック。お前遅いぞ」

「…」

「?どうした?」



俺はもう…



「必要ないのか?」


心の中で感じていた劣等感。ずっと隣に居たのに、ヘルアだけが選ばれて、俺は置いて行かれた。


「?」


頭の中で暴れる感情を整理できない。自身への不満。他者への嫉妬。俺は鉄剣を一本ヘルアの足元に投げ、荷物を置いた。


「拾え」

「…あ?」

「この戦いが終わったら。俺達は今後一切関与しない」

「何を…」

「最後の決闘だ。」

ヘルアも何かを理解し、鉄剣を握る。俺は剣を左で持ち、左後ろに構える。右足を前に踏み込み、右手を左肩前へ、頭を少し下げた。


大地を駆け抜ける風の音が脳に響く。剣を強く握り、ヘルアが瞬きをした瞬間。踵を浮かせ、突進した


ギャキン!!!!!!


激しい金属音が辺りに響く。剣と剣が交差し、エリックは右膝をヘルアの左脇にめり込ませた。


「ガッ?!」

怯んだヘルアは体勢が崩れる。瞬時に剣を空に投げ、左回転。左脚の踵で顎を狙う。しかし、しゃがみ、ギリギリで避けたヘルアはそのまま左脚でエリックの右足を薙ぎ払い、地面に倒れたエリックの腹を右手で殴る。


「ガハッ?!?!ンッ!!!」

エリックはヘルアの髪を両手で掴み、全力で頭突きをする。


「?!?!」

「ガァ??!」


距離を離し、空から落ちてきた剣をエリックは掴んだ。


「はぁはぁ…」

「…」

ヘルアは剣を中段に構える。呼吸を整え、再び、俺は突進する。右上。下、回し蹴り。距離を空け、突。驚く事にこの全てをヘルアは剣で弾いた。エリックは再度距離を空け、呼吸を整える。


「はぁはぁはぁ」

「こんな物か?」

「…!!」

「本気でコレなら選ばれないのも当然だな。」

ヘルアも勝つ為に言葉を選ばなかった。集中が、途切れるとどの部位が切り裂かれてもおかしくない。ヘルアの読み通り、エリックは反応した。


「クッ!!!!」

エリックは焦り、剣を振りかぶる。らしくない荒々しい剣はヘルアの剣と接触し、粉々になった。


「な?!?!」

破壊(ブレイク)

壊れた剣に動揺したエリックは放たれた右腕の拳に反応出来ず、顔面に食らった。


「ガ?!?」

地面に倒れ、空を見上げながら、エリックは敗北を受け入れた。流れる涙が視界をボヤかし、咄嗟に手で顔を覆う。ヘルアは鉄剣を地面に落とし、何も言わずに青年を掴んで歩き始めた。


「え?!良いの??あのままで??」

「…」

「仲間なんじゃなかったの??」

「いや…」






「たった一人の親友(ライバル)だ」

突き抜ける風が髪を揺らす。無音の空を見上げながら。俺はひたすら。涙を流した。

ご覧頂きありがとう御座います。エリックは本編「世代の勇者」にて、微力ながら登場します。良いねと感想。ブックマーク登録も是非是非。それでは





















「何だこれ?」

家に戻ると一通の手紙が届いていた。見覚えのある手紙を開け、中身を確認し、俺はその場で崩れ落ちた。


「そりぁ…ねぇよ」


[勇者学校推薦入学認定証 エリック殿]

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