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序章

            序章 

 「ハァ、なんでこんな目にあってるんだ俺は...」

季節は真夏と呼ばれる頃を過ぎようとしている中、少年は走った後の大量の汗で染みた目を嫌そうに開け、ため息をつく。思い返せば心当たりしかない。手をつけずたんまり残った宿題、バックレてしまったバイト、自分のことを嫌っている同級生、後はもう思い出すことも出来ない。こうなってしまった自分を恨んでももう遅い状況に少年は頭を抱える。

この少年の名は城早乙女(じょう•さおとめ)。城は姓で早乙女が名前だ。彼自信この名前は嫌っているが、決まってしまったものは仕方がないと諦めている。一方城という姓は気に入っているようで城と呼ばれる方が好きらしい。桜葉(さくらば)高校という学校に通う高校2年生で、丁度1年前この流鏑馬(やぶさめ)町に引っ越して来た。そんな普通の少年だ。

しかしどうやらこの世界は普通ではないらしい。手を刃物に変える少年や体から火を吹く少女、時間を止めるなんてことが出来るやつもいる。こんなのはこの世界では珍しくもないらしい。おそらくこの少年にもそんなキテレツな能力があるのだろう。

少年が目にたまった汗を拭い、とぼとぼ歩き出すと

「おーい城くん、ご機嫌如何かな?♡」

目の前にいる筈の自分より1つ年上の女性に耳元で囁かれ、少年はまたもうなだれる。

「またですか先輩。」

「まぁまぁそう言わずにさ、力になっておくれよ後輩君。可愛い先輩が良い声を出して耳元で囁いてあげたんだからさ♡」

「実際はただその場で囁いてるだけでしょ...」

「可愛いのと良い声って言うのは否定しないのね☆」

「いちいち否定するのが面倒なだけですよ...」

彼女の能力は移動音声(サウンドマジック)と言って音の出所を自分の能力の範囲内で自由に移動させることが出来るらしい。

「っていうかここ最近毎日俺が作った料理家に持って来させて、少しは自炊でもしたらどうです?」

いつもの絡みが少し面倒くさくなり、本題へ話を移す。

「良いじゃない別に。材料費は出してるんだし☆」

「それはすごく助かってます!」

「素直で良いわね☆」

彼女の名は田口咲。少年と同じ桜葉高校に通う高校3年生で家が向かいにあることで知り合った長い黒髪が綺麗な女性だが、言葉の尾に記号がついてそうなしゃべり方をしているので、良いところと残念なところが相殺しあっているなんとも残念美人な先輩である。

「ところで、どうしてそんなに汗だくなのかしら?☆」

「あぁ、これはですね...」

少年が質問の答えを返そうとした時だった。

ドガァアァァァァアアァアアンという強烈な爆音と共に道路の向かい側にあるビルの3階が爆発し、割れた窓のガラスが外を歩いていた人々に雨のように突き刺さる。先程まで静かでいつも通りだった町が悲鳴と炎で溢れ変える。おそらく能力を使った犯罪が行われたのだろう。

「城くん!私、助けてくるわ!」

いつもの彼女らしくない口調に少年は少し思考が停止した。彼女がこういう事を言う人間なのは分かっていた。困っている人を見捨てられず、いつも助けてばかり、自分にどんな事があっても決して投げ出さない。そんなところを少年も尊敬しているし、見習ってもいる。しかし今回ばかりは困っている人を助けるのとは訳が違う。

「なんで危険なとこに行こうとするんですか!?強い能力を持った警察官に任せましょうよ!」

彼女が言った言葉に少年は動揺と怒りが混じったような焦った声で反応した。

「どんなに危険でも、どんな理由があっても私はこの状況を見逃したりなんか出来ない!それが今の私の生きる理由だから!」

「でも...」

「なら早乙女君は早く逃げなさい。早乙女君は早乙女君なのだから」

彼女は少年の手を握り微笑む。しかしその微笑みはもう少年を男としてではなく守るべき保護対象として見るものに変わってしまったのである。そして彼女は走り出す。その後ろ姿を見て少年は行き場の無い苛立ちに襲われながらただ立ち尽くすことしか出来ないでいるのであった。






ゆっくり更新したいな

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