ライト
その後ナターシャはモモナお姉さんと待ち合わせをしていました。
「すごいわ、ナターシャちゃん時間が読めるようになったのね?」
「うん、ヨクバールさんに教えてもらったの。」
「ふふふ、それに良く喋るようになったわ」
ナターシャはモモナお姉さんが何時も挨拶してくれても「あ」とか「うん」とかしか答えられなかったのを思いだしました。
「モモナお姉さん何時も気にかけてくれてありがとう。」
ナターシャはモモナお姉さんを自分の屋敷へ連れて行きました。
モモナお姉さんは立派なお屋敷に連れてかれ、後ろ向けに転びそうな程驚いていました。
モモナはその晩、お湯の中につかりながら、色んな事を考えました。
そして、着替えるとお屋敷のてっぺんの塔に登りました。
「魔人次の願いが決まったわ。」
「あなたに残された力は後三つだけ、今度は何を差し出しますか?」
現れた魔人は丁寧に聞きました。
「ところであなたの魔人さんの願いはなんなの?欲しいモノは無いの?」
魔人はびっくりした顔をしました。
「勿論、私の願いはあなたの力を貰う事です。」
「あなたは凄い魔人なのに、何でそんな事が必要なの?」
「私はもう人では無いので、人が何をどんな風に感じるのか、知りたくて堪らないんです。」
「”もう”って言うことは前は人だったの?」
「…。」
魔人は黒い影の中で顔を消しました。
「答えたくないなら。答えなくていいよ。」
「そうですよ。私は以前人間でした。ナターシャ様。あなたは私のご主人様です。あなたの質問に私が答えないと言う事は出来ません。」
「何で魔人になったの?」
「私は神と契約し、最強の魔法使いになる代わりに、自由を手放したのです。」
「神様っているの?」
「どうでしょうか…契約依頼、一度もお会いした事がありません。」
魔人は黒い影の中でゆらゆら手を振るばかりで、どんな顔をしているか見えませんでした。
ナターシャは塔の上からランプをかざしました。
「わたしの次の願い。わたしの聴く力と引き換えにこの国中のゴミ置き場をトウモロコシ畑にして!」
ナターシャがそう叫ぶと、持っていた星のランプが眩く光り、空から沢山の流れ星が落ちてきました。
そして流れ星は国中のゴミの上に落ちると、たちまちゴミをトウモロコシに変えてしまいました。
国中もう大騒ぎです。
真っ暗の夜の中、塔の上に居ても人の驚く声が幾つもあちらこちらから聞えてきます。
ナターシャと魔人はにっと歯を出して微笑み合うと、自分の部屋に戻ってぐっすり眠りました。
「魔人さんあなたに名前をあげる「ライト」よ。」
次の日、耳が聞えなくなった事をモモナお姉さんに説明しました。
モモナは心底驚いて目を丸くしましたが、泣きながら自分がずっと側にいるとナターシャに約束しました。
後から屋敷に訪れたヨクバールも心底驚いて、目が飛び出す程驚いていましたが、ナターシャ本人が余り悲しんでいない様子なので、あれこれ聞くのを止め、これからどうするか話し出しました。
ヨクバールの話は全部モモナお姉さんが紙に描いてくれました。
ナターシャはモモナお姉さんのお人形がもっと売れるようにならないか、ヨクバールに話を持ちかけました。
ヨクバールは喜んで話に乗ってくれました。