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戦国†恋姫Ⅹ 戦国の独裁者  作者: 疾風海軍陸戦隊
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総統の遺品

1945年1945年4月30日ベルリン


「閣下はなぜ、私を一人呼び寄せたのだろう・・・・」


若き弘樹の祖父、ゾルはそう独り言をつぶやき、廊下を歩く。場所はナチス総統のアドルフ・ヒトラーの部屋である。そして部屋の近くまで来ると、そこには数名の将校がいた。すると将校の一人が


「ゾル大佐か・・・・」


「ええ。皆さん方こんなところで何をしているので?もうすぐソ連の連中がここベルリンにまで迫ってきているというのに?」


「言わずともわかろう。ゾル大佐。総統閣下に別れを言いに来たのだ。もう他のものは挨拶を済ませた。後はお前だけだ」


「・・・・・・」


将校の言葉にゾルは何も言わずに扉の前に立つ。すると将校が


「総統閣下・・・・ゾル大佐が参られました」


《・・・・入れ》


扉の向こうから声がし、走行がドアを開け、ゾル大佐は中に入る。部屋のの中には質素なイスとテーブルがあり。そしてテーブルの前にある椅子には灰色のコートを着た中年のちょび髭を生やした男性がやつれた顔でゾル大佐を見ていた。その人物こそ、20世紀史上最大に独裁者と呼ばれた、ナチス第三帝国総統アドルフ・ヒトラーであった。

ゾル大佐は不動の姿勢を取り


「|Heil Hitlerハイルヒトラー!!!」


右手をピンと張り、一旦胸の位置で水平に構えてから、掌を下に向けた状態で腕を斜め上に突き出すナチス式敬礼を取りそう言うとヒトラーは


「ゾル君・・・・いよいよ別れの時が来た」


「閣下・・・・」


「君も知っているであろう。もう直ソ連の軍勢がここに押し寄せてくる。対して我々にはそれに抗う力はもう残ってはいまい・・・・」


「申し訳ございません閣下・・・・我々の力が及ばないばかりに・・・・」


「君が謝ることではない・・・・・この前に私はヨードルやブルクドルフたちに罵倒し、暴言を吐いてしまった・・・・だが、彼らが決して悪くない。裏切ったヒムラーとは違い彼らは私のために戦ってくれたのにな」


「総統閣下・・・・」


「私はただ・・・・ドイツのために祖国のためを思い、ここまでやってきた・・・・・私はいつから間違ってしまったのだろう・・・・・独ソ戦のときか?焚書のときか?ミュンヘン一揆からか?第一次世界大戦か?それとも美術のアカデミーを合格できなかった頃か?・・・・今更後悔しても遅いな・・・もう過ぎてしまったことだ・・・・」


そううつむき呟くヒトラー。その姿は誰もが知る独裁者の姿はなかった。ただの疲れ切った男にしか見えなかった


「総統閣下・・・・今からでも遅くはありません。ベルリンを脱出してください。あなたが生きていれば、また再興できます」


「ゾル君・・・・すまないが私はベルリンを離れる気はない。離れるくらいならいっそ頭を撃ち抜き自決する。我がナチス第三帝国も終わり時が来たのだよ・・・・・ゾル君。最後に君に頼みたいことがある


「なんでしょう閣下」


ゾルがヒトラーに返事をするとヒトラーは一着の軍服を出す


「閣下・・・・これは」


「私がかつて演説をした際に着ていたものだ。お前に預けよう。私が死んだあと、燃やすのもよし売って金に変えるのよし・・・・好きにしろ」


「そんな大切なものを・・・・・いただけません」


「かまわぬ。ゾル君。君はナチ党結成のときから最後まで私の味方でいてくれた。最後まで私に忠誠を誓ってくれた・・・・・それにもう私には必要のないものだ・・・・話は終わりだ。一人にしてくれ」


「・・・・失礼します閣下」


ヒトラーに軍服を渡されたゾルは涙をこらえ深々と頭を下げ部屋を出ようとすると


「ゾル大佐・・・・・今までご苦労だった・・・・」


と、ヒトラーの声が聞こえゾルは


「|Ehre sei dem Dritten Reich《第三帝国に栄光あれ!!》!!|Ehre sei Hitler《ヒトラーに栄光あれ》!!!」


涙を浮かべ敬礼をしそう叫び彼はヒトラーの部屋を出るのであった。その数時間後、ヒトラーは自決するのであった・・・・








「まあ、そういことじゃ・・・・・この軍服は総統閣下から頂いた遺品だ・・・・どうしても燃やすことも売ることもできなかった・・・・」


「それで祖父ちゃんはどうしたの?」


「総統が自決した後、儂は急いでドイツを離れ海を渡り、日本の小さな島で身を潜めていた。なんせ日本にはアメリカ軍がいたからな。アメリカ軍がいなくなった後、私はドイツに帰らずここ日本で暮らしている。総統とのことは誰にも話していないし、服もお前以外見せていない」


「じゃあ、なんで俺にこの服を見せたの?」


「なぜじゃろうな・・・・・・ただ若い世代に儂は何か伝えたかったのかもしれなかったのかもしれないな・・・」


そう言い祖父ちゃんは何も話さなかった。俺はヒトラーについては記録でしか知らない、ヒトラーが何を考え何を思っていたのか。それはヒトラーをこの目で見た人しかわからないのかもしれない



そしてこれが祖父ちゃんと最後に話した日だった。

その数週間後、ヒトラーが自決した同じ日の4月30日に祖父ちゃんは亡くなった。

死んだその時の顔はとても安らかな表情をしていたまるで、言いたいことを言いきった。そんな表情だった・・・・・

そして祖父ちゃんの隠し持っていたヒトラーの服は今俺がこっそり部屋の中に隠している。

これは俺がその後、不思議な出来事に出会うまでの1年前の出来事であった・・・・・

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