ナチスの孫
俺の名前は那智弘樹。高校二年生だ。特にこれと言った特技も自慢もなない・・・・・と、言いたいところだけど、俺の母親はドイツ人では親父は日本人。つまり日本とドイツのハーフだ。
まあ、ハーフと言っても髪は日本人と同じ黒髪で日本の人と違うと言えば瞳の色が青いくらいだ
俺の家庭はほかの人と同じ、普通の家庭なのだが、一人だけ違う人がいた
それは俺の祖父だ。俺の祖父、バカラシン・イイノデビッチ・ゾルはドイツ人で昔はナチスドイツ武装親衛隊に所属していたらしい。階級は大佐だった気がする。祖父はいつも険しい顔をしていつも無口。しかもやたらに規律にうるさく、どこか近寄りがたい感じのする人だった。
そんな祖父の部屋にはいつもナチスドイツの旗とそのドイツの相当・・・・独裁者のアドルフ・ヒトラーの写真が置かれていた。
そんな祖父に家族はほとんど相手にしようとしなかった。そんなある日のことだ。家族が用事で出かけ、俺と祖父だけが家にいた時のことだ
「・・・・・弘樹・・・・ちょっとこっちに来なさい」
いつも無口で厳しい顔をしていた祖父が今まで聞いたこともないような優しい声で俺を呼んだ
「何、祖父ちゃん?」
俺はそう言い祖父に近づくと
「ふむ・・・・弘樹。お前は儂を犯罪者だと思っているか?」
「え?なんだよ突然に?」
「お前も知っておろう。わしが若かりしとき、ナチスに所属していたことを・・・・」
「うん。知っている。ナチスって世界大戦のときにあったドイツのことだよね?なんか悪党の軍団とか言われているけど?」
「悪党…悪党か・・・・そうじゃな。総統閣下の命で我々は多くのユダヤ人やその住民を虐殺してきた。悪党の軍団と言われてもおかしくはない。そしてむろんこの儂もかつてナチス武装親衛隊大佐としてその虐殺に手を貸してきた」
「でもそれは祖父ちゃんの本心じゃなかったんでしょ?」
「・・・・本音を言えばそうじゃと言いたいところだったが、わしもまだまだ若すぎた・・・・あの時はそれが正しいと思っていた。じゃが戦争に負け、我々がしてきたことは大きな間違いだと正直思っていた。それは総統閣下も同じじゃ・・・」
「総統閣下って…ヒトラーのこと?」
そう言うと祖父は頷き、タンスに指をさし
「弘樹や…そのタンスの奥にある服を出してはくれないか?」
「う・・・・うん」
俺は祖父に言われるがままタンスを開け奥の方に手を突っ込み引っ張り出すと、そこから明るい茶色の軍服みたいなのが出てきた右腕にはナチスを象徴する赤生地に白い丸。そして真ん中には鍵十字・・・・ナチス党のハーケンクロイツの紋章があった
俺はその軍服を床に広げる
「祖父ちゃん・・・これは?」
そう言うと祖父ちゃんは懐かしそうな目でその服を見て俺にこう言った
「これはな・・・・総統閣下が着ていた服装じゃ・・・・」
「え!?ヒトラーの!!」
俺は驚いてそう言いさっきの服を見た。確かによく見たら写真とかで見たヒトラーのあの服だ
「しし、声が大きいぞ」
「あ、ごめん・・・・・でもなんでヒトラーの軍服を祖父ちゃんが持ってるの?」
「・・・・これは総統閣下がなくなる前に総統が儂に託したものじゃ・・・・・」
そう言い、祖父はポツリと話し始めるのであった