未定
そこは戦場だった。
数多の命が消えていく。
剣と剣が、槍と槍が、斧と斧が、武器という武器がぶつかる金属音が見渡す限りで響く。カンという高い音は幾重にも重なって今にも鼓膜が破れそうだ。
トラのような獣がその背に戦士を乗せて疾走する。戦士は片手剣を赤い血で染めていく。獣が通った後には無数の屍が無惨に転がっていた。
無数の矢が放たれる。矢は雨となって降り注ぐ。そしてけたたましい叫び声が響く。
たすけてぅれ
まだしにたくない
魔法が飛び交う。
火球が飛ぶ。少し遠くのほうに落ちた火球は焼き尽くす。人も、獣も、何もかも飲み込んでいく。
竜巻が荒れる。ぐちゃぐちゃになっていく。原型はもうない。
氷矢が貫く。体の真ん中に大きな穴を作る。穿たれた兵士だったものは力なく崩れ落ちていく。
石柱が放たれる。潰す。潰す。潰す。赤く染まる。
空を見上げる。
ドラゴンらしき生物が空中を舞う。その口からは炎が吐き出され、新たな屍を生み出していく。ドラゴンの使役者らしき人影がその背に見える。よく見えないが何か指示を送っているようだ。
と、そのとき。一歩の矢が使役者を刺し貫いた。使役者が落ちていく。ドスっと力ない音がする。制御を失ったドラゴンらしきものは暴走し、しばらく暴れまわった後、火炎の餌食になって果てた。
爆音とともに命が消えていく。これこそが阿鼻叫喚の地獄そのものではないか。命あるものすべての墓場ではないか。
一本の剣が放たれ、戦場の中心部に刺さる。すると剣の刺さったところから炎が生み出されていき、命を摘み取っていく。人が燃える。獣が燃える。気が燃える。神が燃える。浄化の炎だ。
燃える。燃えていく。何もかもが燃えていく。
世界のすべてが燃えている。
何もかもが焼き尽くされる。灰も残らず燃えていく。後にはもう何も残らない。
何もかもがゼロに巻き戻る。