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02 育成スキル

 スキルとは、人の持つスタミナを使って、特殊な力を具現化する技術のことである。

 かつてスキルは、自力で会得するものであった。才能だけではなく、長く苦しい修行の果てに到達する極地であった。

 これが変わったのは、バランシア帝国最大の危機と言われる『フェルマン民族の大移動』によってであった。

 屈強なフェルマン族の戦士たちに帝国の軍団は粉砕され、国土は蹂躙された。

 帝国の祖神バランクルスは、この危機に手を差し伸べた。それが天与のスキルであった。

 一定のレベルに到達した者には、祈願した場所に応じたスキルが授けられる。

 『はじまりの騎士クルスト』が祀られている霊廟では、騎士の戦闘スキル。『名工ミルフィウス』を祀る職人ギルドでは、鍛冶スキル――といった具合だった。

 とはいえ、レベルを上げる手段は魔獣を倒す以外にはなく、庶民がスキルを賜るのは難しかった。

 しかも、レベルを上げるために必要な経験値の量には個人差があった。

 結局のところ、スキルを賜ることができるのは、レベル上げに時間を注ぎ込める富裕層と、親から戦う術を教えてもらえる一部の者たちだけだった。

 帝国社会はスキルを持つ者と持たざる者とで、階層化が進んでいたのである。



 **



 育成スキル『周回』とは、自らが参加した戦闘を記録し、何度も経験できるというものだった。

 エルズベリーの森で、偶然にもスキルが発動し、フォルクはその効果を知った。


――騎士にはなれなかったけど、せっかく手に入れたスキルだからな。


 フォルクはスキルを検証してみることにした。まだ後ろ向きな気持ちは残っていたが、持ち前の好奇心が勝った。

 フォルクはエルズベリーの森を出て、近くの街道脇でスキルを発動した。

 すると、辺りは鬱蒼とした森へと姿を変えた。さらには、さっきと同じ場所からブロンズハウンドが飛び出してきた。

 フォルクがこれを難なく仕留めると、同じように経験値も取得できた。


――効率が良いな。


 レベルを上げるには、ダンジョンに移動し、魔獣を探すところから始めなければならない。

 育成スキル『周回』は、その面倒さと困難なところをまとめて解消している。

 念のため、フォルクは再びスキルを発動したが結果は同じだった。

 魔獣が同じところから現れて、同じように行動する。これなら、魔獣との戦いで死傷する可能性も低い。


――安全にレベル上げができるぞ。


 フォルクは感嘆した。

 既存の育成スキルは、経験値の微増や仲間内での取得量調整など、地味なものしかなかった。

 ところが、このスキルは一線を画している。欠点があるとすれば、スタミナの消費が大きいところだろうか。

 どのようなスキルでも、使用すると必ずスタミナを消費する。スタミナ量は生まれ持ったもので、レベルを上げても増えないと言われていた。

 ただし、スキルランクを上げれば、スタミナの消費量を減らすことはできた。

 ブロンズハウンドよりも経験値の多い魔獣との戦いを記録し、スキルランクを上げて使用回数を増やし、さらにはマジックアイテムでスタミナを回復すれば、半永久的にレベル上げができる。


――とんでもないスキルなのでは……。


 育成スキル『周回』の可能性を想像し、フォルクは身震いしたのであった。

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