14 アムネリア(1)
バランシア帝国には、戦闘スキルの属性で分けられた五つの騎士団がある。
戦闘スキル『雷槍』を賜ったアムネリアは、雷系の天雷騎士団に配属された。
天雷騎士団は、帝国最強と言われているエリート部隊であった。
「天雷騎士団のエリート様は、いかがお過ごしで?」
女騎士セレンが言った。
アムネリアと同期の彼女は、戦闘スキル『光刃』を賜って、金光騎士団に配属されていた。
「皆と同じ、デクチクよ」
アムネリアが答えた。
帝国騎士団の修練場には、『ゼラチナスドール』という魔法生物が設置されている。
攻撃力はなく、ひたすらタフなこの魔法生物に向かって、覚えたてのスキルを撃ちまくる。これが新米騎士の日課であった。
「木偶の坊を突っついているよう見えるからデクチクとは、よく言ったもんよね」
セレンがため息交じりに言った。
スキルを連打してヘトヘトになったら、精神水を飲んで回復。そしてまたスキルを連打する。
ひたすらこれの繰り返しで、一日の大半が終わってしまう。
「レベル上げが懐かしい。あの頃の方が楽しかったよ」
セレンが遠い目をして言った。
これにはアムネリアも頷かざるを得なかった。
騎士を目指す仲間たちとパーティを組み、ダンジョンに籠もった日々。レベル上げは大変だったが、夢に向かって努力する日々は充実していた。
「あの頃と言えば、フォルクが帝都を出たって聞いたけど?」
セレンが話を変えた。
フォルクとセレンも、何度かパーティを組んだことがあった。
二人の関係は、アムネリアという共通の友人を介したもので、親しいという程ではなかった。
とはいえ、同じ窯の飯を食った仲間として気にはなるのだろう。
「そうね」
アムネリアの返事は素っ気なかった。スキル分けの願いを断られたことが、まだ尾を引いていた。
「それだけ? けっこう仲良かったでしょ?」
「そうだけど、別に付き合っていた訳ではないし」
「ふうん」
セレンが意味深な相槌をした。
「なに?」
「なんでもない。それでフォルクはどこに行ったの? 南方の田舎に帰ったとか?」
「西方に行ったわ」
「何しに?」
「さあね」
アムネリアはとぼけた。
『一日騎士の修練場』が破壊された件は、ほぼ間違いなく騎士団の犯行だ。
だからアムネリアは、フォルクが西方で修練場を開店することは、誰にも言うつもりはなかった。
セレンの方もそこまで興味はなかったのか、またしても話題を変えた。
「ところで、近々戦争になるかもしれないって――」
セレンの話を聞きながら、アムネリアはフォルクのことを考えていた。
――逃げ帰って来ようものなら、無理矢理にでもスキル分けして、小間使いにしてやるんだから。
フォルクの成功を祈りつつ、スキル分けも諦めきれないアムネリアであった。




