5話
エルは目を覚ました。昨日と何ら変わらない日常が始まろうとしていた。
それより身体中が鉄臭い。全身に返り血を浴びて服や真っ白の髪に血が飛び散っている。
「この服ももうダメか」
そう言って向かったのはトタン屋根ではない家だった。貧民街でこんなしっかりとした木を使っている家は少ない。
ドアを開けるとチリンチリンとドアについていたベルがなる。
「いらっしゃい!」
低くよく通る声がエルを迎える。その男は右目に大きな傷跡があり、身体も普通に鍛えてもつかない筋肉のつき方をしていて着ているシャツもぴっちりとしていた。
「白髪...まさか!お前が来るのを待っていたよ」
男は何かを思い出したかのような反応をする。
「俺が来るのを待っていた?」
「あぁ。あれは12年前かな。俺の戦友が言ったんだ。『白髪の青年が来たらそいつは俺の息子だ』ってそんで渡したい物があるからついてこい」
店の奥に連れていかれた。テーブルの上に置いてあったのは真っ黒のスーツに革靴。この世界ではスーツなんてものは無い。そんな格好していると周囲から変なやつとしか見られない。
「お前の父親が自分で作ったらしい。まああいつは昔から変な服を着てたしな。あいつは暗殺者仕事をしていたからそん時の仕事服だろう」
「これを俺に?」
「あぁそうだ、丁度いいだろ。そんな血だらけの服捨てちまいな」
父の戦友と名乗った男にシャワーを貸してもらい真っ黒のスーツに着替えた。
「サイズは丁度いいな。鎧とかの方がかっこいいと思うけどなぁ」
店の商品を紹介するように見せながら言った。
「だけど、流石にスーツは動きづらいな」
上着を脱ぎ、結局スーツは着ず、黒のブロードシャツに黒のネクタイをしめ、動きやすいストレッチ素材のパンツにした。
「スーツはやめたのはいいけど結局お前も変わったセンスだな。これで戦友との約束は果たした」
「ありがとう。父のことを知っている人がいたなんて。どんなやつだったんだ?」
「変な雰囲気のある男だった。人柄はとてもよく冗談をいう楽しい奴だった。だが、あいつは狂ってる、人を殺す瞬間、あいつは1番楽しそうに笑うんだ」
エルは幼い頃、義父に言われた言葉を思い出した。
「そうだったのか。暗殺者ってどんな仕事なんだ?」
「基本的には隣の国の王様の暗殺や貴族からの依頼が多いな。で、暗殺者になりたいのか?やめといた方がいい。色々と面倒事に巻き込まれる」
「別になりたいわけじゃない。俺は王都にいく」
「そうか!また会えたらいいな」
男の言葉を背中で受け、履きなれていない革靴を歩き出す。




