弟子達の迷宮鍛練2
翌日は、ミリアとアニーを連れて、キリシアとルメイルとマルスは迷宮の7層を目指す
『ルメイル、ショウブグを見つけたら直ぐに倒して良いからね』
『わかりました』
『ミリアとアニーは周りを警戒しながら魔石拾いと、複数の場合は魔法で援護して』
ミリアとアニーは頷く
ルメイルはショウブグを見つけ次第、次々と倒していく。ミリアとアニーは援護しようとするけど、詠唱中に直ぐに倒してしまうのでなかなか出番は無い
『ルメイルさんの実力も、かなり高いですよね』
『ありがとうございます』
アニーの言葉にルメイルが言うと
『魔剣と闘気のお蔭だから、油断はしないように』
キリシアに注意される
『わかりました、師匠』
ルメイルは気合いをいれて次々と倒しまくる
時々、ミリアとアニーの魔力制御を確認し、ルメイルの闘気の状態を確認しながら進む
『ミリアの魔力制御が乱れ始めたから、そろそろ引き上げようか?』
『わかりました』
迷宮の出口に向かう
『師匠、聞いても良いですか?』
『ミリア、何?』
『どうして魔力が乱れ始めたら引き上げるのですか?』
『試している事もあるけど、魔力が乱れて制御不能になると、魔法使えなくなるからね』
『聞いたことあります。だから無理せず、早めに引き上げるのですね』
『エミールはそれでひどい目に遭ったからね。自己申告より様子を見て、確実に止めることにしてるよ』
『わかりました。もっともっと魔力制御するようにします』
『早く魔力を動かせるように頑張ってみようね』
『わかりました』
迷宮を出てフローネの家に向かう
『フローネ先生、いますか?』
『お帰りなさい、マルス師匠』
『エミール、ただいま』
『マルス師匠、見て欲しい物があります』
『エミール、どうしたの?』
『これです』
ランプを持ってきて
『付与魔法成功しました』
『エミール、おめでとう』
『エミールの初めての魔道具ですね』
エミールは嬉しそうに笑っている
『エミールの魔力制御も素晴らしいレベルです。魔法学院の先生より凄いかもしれませんよ』
フローネは苦笑いしながらいう
『エミール先輩凄いです。魔法学院入る前に付与魔法出来るなんて』
ミリアが言うと
『師匠達のお蔭です!』
『明日は私も迷宮に行きたいです』
エミールが言うとリリシャはフローネを見る
『たまには思いっきり暴れるのも良いと思いますよ』
フローネが言うとエミールは喜びながら
『明日は思いきり魔法を使います』
翌日、迷宮の入り口に6人の少年と少女のグループが話しているのを横目に、迷宮の12層に最短距離で向かう
『エミール、ファイヤーストームで1部屋ずつ片付けていきますよ』
『はい!師匠』
小部屋に着き、マルスとルメイルが中を確認してエミールに合図を送り、エミールは部屋全体を焼き尽くす様に
『・・・・・ファイヤーストーム』
魔法を発動させて、キャタピーとバタフライを焼き払う。黒い煙をあげながら結晶を残して消えていく。部屋の中が殲滅出来たか確認しながら、ルメイルとマルスは部屋に入り、魔石と糸を拾う
『この要領で次々と倒そうね』
『はい!マルス師匠』
そして次々と小部屋を焼き尽くしていく。そして時々、エミールの魔力制御とルメイルの闘気が乱れていないか確認しながら進む
『エミール、魔力の制御、少し乱れ始めたね』
『まだ大丈夫だけど、師匠の判断に任せます』
『無理はせずに帰りましょう』
リリシャの言葉にエミールも頷き、迷宮の出口に向かう
迷宮を出たところで、冒険者と係員が何かを話している横を通り過ぎて、ギルドに向かう
『ヘザーネ、ただいま』
『キリシアさん、リリシャさん、マルス君、エミールさん、ルメイルさん、おかえりなさい』
『買い取りお願いね』
魔石と糸をおくとヘザーネは確認を始める
『中魔石が156個と糸が74個ですね。金貨31枚、銀貨2枚と、糸はオークションに出しますので、預り証にサインをお願いします』
キリシアがサインをして渡し
『金貨は口座に入れますか?』
『今回は持って帰るよ』
ヘザーネは金貨を積み上げて数え始める
『こちらが今回の金貨です』
職員が何かをヘザーネに告げてヘザーネの表情が変わる
『キリシアさん、帰りに6人の魔法使いに会いませんでしたか?』
『会ってないよ』
『実は7層に降りていく魔法使いに危険だから、と注意した冒険者がいるのですが、まだ帰ってきてないらしいのです。8層でも目撃されているので、もしかしたらその下に降りた可能性がありますが・・・・』
『魔法使いだけで?余所者?』
『王都からきたみたいです』
『危険度解ってないのかな?』
『その可能性が高いです。9層から下になると直ぐにいける人は・・・キリシアさんに頼むしかないので見に行って頂けないですか?』
キリシアはリリシャとマルスを見て
『わかった。ちょっと行ってくるね』
『ありがとうございます』
『エミールとルメイルは残って待っていてね』
『え?解りました』
ルメイルとエミールはちょっと不満そうな表情を見せるが
『全力で最短距離を走るからね』
『わかった』
リリシャとマルスの返事にエミールとルメイルは意味を理解して
『あまり急がないでくださいね』という
再び迷宮の入り口に向かい、入り口では冒険者がまだ係員に話をしている
『魔法使い6人はまだ帰ってきてないの?』
『はい!まだです』
『じゃあ8層から下に探しに行ってくるね』
迷宮に入っていく。最短距離で8層に向かい、冒険者を探すと1組のパーティーを見つける
『魔法使い6人組を見なかった?』
『1回見たがその後見ていないな』
『下に行ったと思うかな?』
『可能性はあると思うぜ、下への階段の近くで会ったからな』
『ありがとう』
下の階に向かう
9層を探していると袋が落ちていた
『この先は確か、部屋が有ったよね』
『向かってみよう。クリケトは集まるからね』
向かっていると奥で爆発音がする。そして何人かが囲まれながら戦っている。キリシアとマルスは一気に走り、回りのクリケトを次々と倒していく
『たっ助かった・・・・』
『ん?4人しかいないね』
『残りの2人はどこ?』
『逃げている最中に・・・』
『離れないように付いてきて』
『はっはい・・・』
通路でクリケトが群がっているのを見つける。そしてキリシアとマルスがクリケトを追い払いながら倒していくと、下から2人の人が出てきた。キリシアが確認すると、僅かに脈がある
『リリシャ、回復魔法お願い』
『・・・・・ハイヒール』
リリシャは回復魔法で回復させようとするが中々回復しない。マルスはポーションを使い、部分毎に治していくが追い付かない
『このままじゃポーションが足りなくなる』
『・・・・・ハイヒール』
マルスも回復魔法を使い回復させようとする
後ろではすすり泣く声がする・・・、キリシアはクリケトが近付かないように倒している
『リリシャ、マルス、どう?助かりそう?』
『ポーションが足りないし、回復魔法だけじゃ難しいかも・・・』
リリシャが言うとマルスも頷く
『このまま地上に運ぶしか無いと思う』
『わかった』
キリシアは魔法使いの方を見て
『あなた達の無計画のせいでこの2人が犠牲になったのはわかるよね』
『うっ・・・・!』
『何か言いなさい!!!』
『すっすいません』
『このままじゃ完全に助かりません!方法は2つ!1つは誰かが地上まで行ってポーションを大量に持って帰ってくる!もう1つは2人を抱えて地上まで帰る!どっちが良い?決めなさい』
『うっ!』
魔法使い達は涙目のまま動けず、言葉も発せずただ2人を見ている
『いい加減にしなさい!!』
『2人を見殺しにしたんだから責任をとりなさい!!!』
『どうしたら・・・』
『選べと言っているのがわからないのか!!!』
『選べない・・・誰かが助けにきてくれるまで待てば・・・』
『助けに来てくれるパーティーはいません。9層に降りた馬鹿のために救助に来る、命懸けで9層に降りれるパーティーはいません』
『え?何故どうして?』
『9層は、既に来れるのは私たちと弟子とゼタルしかいないからです。弟子はさっき地上に上がったばかりだから最低でも2日後になりますよ』
『そっそんな・・・・・』
『どうするか決まった?』
マルスの声にキリシアが振り向く
『リリシャの限界も近いから、直ぐに行動しないと全滅だよ』
『どうやって運べば良いのですか?』
『ローブと杖で簡易の担架を作り、乗せて運ぶしか無いです』
『解りました』
4人は直ぐにローブを脱いで杖を使い簡易の担架を作り始める
マルスは小声で左腕を見ながら
『キリシア、腕輪をこの子に装着して』
キリシアは直ぐにマルスの腕輪を外して魔法使いの腕に取り付け、キリシアの腕輪ももう一人に取り付ける
担架に乗せて8層に上がり、7層に上がったところで冒険者が待っていた
『これはひどい・・・大丈夫なのか?』
『とにかくギルドまで運んで欲しい。2人は回復魔法をかけながら』
『わかった、手伝うぜ』
冒険者達が代わりに担架を持ってくれて、地上を目指す
迷宮の出口に到着すると係員が馬車を呼んでくれ、ギルドに向かう。ギルドに着くと、エミールとルメイルがヘザーネと一緒に出てきて
『直ぐに処置室へ、道を空けてください』
処置室の回復魔道士達も状態を見て
『これは・・・・魔法でも無理だ・・』
『エミール、マジックポーション有るだけ用意して』
『あっはい!』
エミールはマジックポーションを出して持ってくる
『自分達が魔力を回復するまで、回復魔法を代わってください。ポーションと併用して』
マルスの言葉に回復魔道士は回復魔法を使い、ポーションを大量に使い始める。エミールも回復魔法で手伝う
リリシャとマルスはマジックポーションを飲み魔力を循環して回復させる
『リリシャ、大丈夫?』
『このままじゃ助からない・・』
『3人で1人ずつ助けるしか無い』
『エミール、手伝って』
『はい!』
『エミールは腕輪に魔力を供給して』
耳元で伝えるとエミールは頷く
『・・・・・ハイヒール!!!』
リリシャとマルスは魔法を使い、エミールは魔力を腕輪に流す
『キリシア、残っている傷にポーションを!』
1人目の回復をある程度終わらせて、2人目も回復させる
『何とか助けられたかな?』
『これ以上は無理だと思う』
『リリシャ、マルス、お疲れ様』
『師匠凄いです。まさか本当に助けちゃうなんて』
入り口で見ていたバイルとゼタルとヘザーネを見ると
バイルがやってきて、2人の様子を見てため息を吐くと回復魔道士達に
『2人は助かったのか?』
『信じられませんが、傷は塞がりました。後は本人次第です。奇跡に近い回復魔法です』
『奇跡に近い・・・奇跡だろうな・・・あんな回復魔法を見たこと無い・・・』
バイルは驚きながら言うと
『これは内緒でお願いね。フローネ先生に怒られますから』
キリシアが言う
『承知しました。今見たことは内緒にします。みんなも良いな』
バイルはそう言うと
『承知しました』
全員が同意する
キリシアはマルスとキリシアの腕輪を回収して帰ることにするが、リリシャが既にフラフラになっている
『送って行った方が良いな。馬車を用意するから乗っていけ』
『ありがとう、ゼタル』
ヘザーネが馬車を用意しに向かい
馬車に向かおうとすると、4人の魔法使いがギルドの中で座り込んでいる
『後は本人次第だ。お前達の無理がどれだけ人に迷惑をかけたかちゃんと考えるのだな!!』
ゼタルはそう言って一緒に馬車に向かい、ゼタルも一緒に乗り、フローネの家に向かう
『2人の魔法は・・・既にフローネを越えているな・・・もしかしたら王国一か』
『先生に聞いて』
『そうだな・・・本人が一番だと言うより、フローネ殿から比較して貰うのが良いな!』
フローネの家に着き、エミールがフローネ達を連れてくる
『どうしたのですか?』
『馬鹿な魔法使い共が9層に行き、それを救助しに3人が向かい、瀕死の2人を回復魔法で奇跡を起こした!!』
『人前で魔法を使ったのですね』
フローネは頭を押さえる
『明日、ギルドで話をしたいのですが良いですか?』
『仕方ないですね』
フローネに見送られながら宿屋に向かう
『ヘザーネ、送ってくれてありがとう』
『ゆっくり休んでください』