襲撃
翌朝、交易都市アーメルドに向かって出発する
アーメルドにもう少しで着くところで、賊が現れる
『馬車を降りて観念しな。抵抗しても無駄だ』
『弱そう』
キリシアが呟く
『何だと!小娘!お前達、小娘共は後でたっぷり楽しむから捉えろ!』[おう!]
男達は襲いかかるが、キリシアは次々と叩きのめす。ルメイルはリーベルの馬車の護衛に走り、マルスも次々と投げ飛ばし、腕を折っていく
『馬鹿な!つっ!強い』
男は急いで魔法をマルスに向けて放つ
『・・・・・ファイヤーボール』
しかしマルスは魔法を一刀両断に斬り裂き、間合いを詰めて殴り倒す
『ルメイル、ロープでこいつらを縛り上げて』
『わかりました』
『誰の指示で襲ってきた?』
『・・・・』
1人ずつ質問するが返事をしない
リーベルは男を見て
『シルトバス伯爵の兵士が襲ってくるとはね』
『何の事だ!シルトバスとは関係ない』
『シルトバスの紋章が見えていますよ』
『え?これは違う。シルトバスとは関係ない』
『私が誰だか解っていますよね』
『・・・・』
『この子が誰だか解っていますよね』
『それは・・・』
『目的はこの子ですよね』
『そうだ・・・』
[バキッ・・・ドン・]
飛んできた男を見て男達は青ざめる
『話を聞こうとしたら、剣を抜いて襲ってきた』
『マルスを襲うなんて無謀』
マルスの言葉にキリシアは言う
『山賊として処分するの?』
『どうされたい?』
『シルトバスを敵に回して只で済むと思うなよ!!』
『伯爵の指示じゃ無いよね』
『そうだ伯爵は関係ない』
『誰の指示?』
『言うわけないだろ!』
『シルトバスの指示だと言っちゃったもんね』
『ぐぅ!そっ、それは言ってない』
『他は近くに人は居ないかな?』
『今のところいないよ』
『ミリア、こいつは誰の家臣だか判る?』
『兄上の家臣です・・・間違いありません』
『ミリアーー!シルトバスの恥が!!』
『恥はお前達だよ、馬鹿!!』
キリシアが言う
『シルトバスで何度か会っていますよね?』
『リーベル様・・・』
『ちゃんと罰は受ける事ですね』
『これには訳があるのです』
『ミリアはシルトバスの恥。外に出すなんて恥の上塗り、許せません』
『だから周りの人ごと殺そうとしたと』
『シルトバスの名誉のため』
『もうミリアはシルトバスとは関係ないと伯爵は言っています』
『それは関係ない。外で子ができ、その子が優秀な魔法使いになって戻る話になったら困る』
『そう!シルトバス家の恥はあなた達ですね』
『ふざけるな!只で済むと思うなよシルトバスの名誉のためどこまでも追いかけて殺す!!』
『そうですか・・・残念です』
アーメルド警備隊がやってきた
『リーベル様、これはどういう状況ですか?』
『いきなり襲われて、逆に返り討ちにしてしまいました』
アーメルド警備隊兵士達は男達を見て
『お前は確かシルトバス家の!』
『シルトバス家の名誉のためだ!シルトバスの家臣たる我々を捕えてただで済むと思うなよ!!』
『シルトバス家の兵士が襲うとは・・・』
『シルトバスが雇った山賊共はどう処分されますか?』
『アーメルド領内で襲った事は問題です。領主の顔に泥を塗ったようなものですから』
『今回のことで、シルトバス家を許すわけにはいきません。リベリア警備隊を敵に回したのですから!』
ルメイルの言葉にアーメルド兵は驚く
『リベリア警備隊?』
『私は、リベリア警備隊にまだ籍が残っています』
『シルトバスはリベリア警備隊員を襲ったと言うことですね』
『リベリアは関係ないだろ!!』
男は青ざめながら言う
『リーベル様も襲っていますよね』
『狙いはリーベル様じゃない!!』
『居たのは解っていて襲ったのは事実だよね』
『それは・・・そうだが・・・』
『アーメルドを敵に回した事も事実だよね』
『その通りだな・・・』
『この際だから、アーメルド領主の前ではっきりさせたら?』
『そうするしか無いですね』
警備隊兵士に冒険者ギルドのギルドマスターも呼んでもらうように頼む
警備隊は男達を連行してそのまま領主の館に向かう
『領主様、申し訳ありません。この者達が街道でリーベル様達を襲い、返り討ちにあったため捕らえたのですが!』
『その者達が盗賊と言うならば、処罰をすれば良い!!』
領主は怒りをあらわに言う
『リーベル殿も災難でしたな』
『本当に災難です。シルトバス家が暗殺を仕掛けてくるなんて!!』
『はぁ?』
『その男の顔を見れば、見たこと有ると思いますよ』
『こいつはシルトバス家の家臣!!』
『その通りです』
『何故、シルトバスの家臣がリーベル殿を襲ったのだ!』
『シルトバス家の名誉のためだ!!』
『その名誉とは何だ!!』
『それは言えない』
『シルトバス家の名を出す以上、警備隊では対応が出来ないです』
『我が領内でシルトバス家が盗賊行為を・・・』
『しっかり、取り調べしてくださいね』
『お前達は?』
『リベリアから来た冒険者です。ルメイルは弟子に成り立てで、まだリベリア警備隊隊員ですけど・・・』
『リベリア警備隊だと!』
『リベリア警備隊のルメイルと申します。除隊手続きをしていますが、後、数日は警備隊隊員です』
『シルトバスにリベリアまでも絡むか・・・』
『冒険者ギルドのマスターを呼んでもらっても良いですか?』
『何故、冒険者ギルドマスターを?』
『リベリアギルドマスターも自分達がアーメルドに来ることは知っています。問題があれば、ギルドが後ろ楯になるとギルドマスターより言われていますので・・・』
『誰か、ギルドマスターを呼んでくれ!』
『既に来ています』
『直ぐにお連れしろ』
ギルドマスターが入ってきて、領主と男達を見てため息をつき
『キリシア殿とリリシャ殿とマルス殿ですね』
『はい!そうです』
『バイル殿からあなた達が来訪するかもと連絡は頂いています。大金も所持している上、若いのでトラブルになった場合、ギルドが守るようにと』
『それは真なのか?』
『はい!全面的にギルドは冒険者を守ります。リベリアの英雄であれば、王家も動き兼ねません。ギルドカードを見れば、領主であれば解ります』
『ギルドカードを見せてくれ』
全員ギルドカードを出す
シルバーのギルドカードを見て、内容を確認すると『階層主にジェネラルゴブリン!ヴァンパイア討伐の証だと!!』
『その意味は解りますよね?北のゴブリン討伐に、王国騎士団も動く切っ掛けの出来事も伝わっています』
ギルドマスターの言葉に、領主は自分達を見る
『あと、何か問題が起きたら渡すようにと、手紙も預かっています』
手紙を渡し、内容を確認して
『とんでもない事になったな・・・』
『如何なさいましたか?』
『リベリア警備隊隊長とリベリア領主、北の領主、リベリアギルドマスター、王国騎士団までもが今回の件に関わることになるとはな・・・』
『え?王国騎士団まで?』
『シルトバス伯爵に直ぐに使いをだせ!直ぐにここに来てほしいと、シルトバス家の危機になると言え!』
『わかりました』
『何だと!!シルトバス家の危機になるだと!!!』
『愚か者め!!北のゴブリン襲撃をたった6人で壊滅させ、ヴァンパイアまで討った英雄を襲い、ただで済むと思っているのか?そもそもギルドを敵に回してシルトバス家に魔石が回らなくなった場合どうなる?』
『何だと!!』
『ギルドマスター、自分達がギルドに買い取り依頼した魔石を全てシルトバス家に渡らないようにして』
キリシアが言うと
『わかりました。手配しますが、どのぐらいの量がありますか?』
『リベリアの11層以降の魔石全部』
『え?中魔石全部ですか?』
『そうだよ!リベリアで中魔石を持って帰っているの私達だけだから』
ギルドマスターは領主を見て苦笑いする
『シルトバス家はとんでもない事をしたな・・・』
『シルトバス伯爵はもう魔道具を作れませんね』
『魔石の流通をしてもらっていた相手を殺そうとするとは、馬鹿だな』
『は?どう言うことだ!!』
『中魔石が大量に有るから魔道具を作れるが、手に入らなかったら終わりでしょ。この数ヵ月、魔石が大量に有るのはこの冒険者がいるお陰だが、怒らせてしまったら魔石は回ってこない』
『シルトバスの権威で揉み潰しても魔石は手に入らない』
男は理解して青ざめる
『バイルに言って、献上も全部キャンセルって言っておいてね。この件が片付くまで』
『献上?王家に献上ですか?』
『階層主の魔石と鉱石ね』
ギルドマスターは頭を押さえ苦笑いする
『握り潰せなくなりましたね。王家まで知ることになりました』
『こうなると、国王に相談し、判断を仰ぐ必要が出てくるか・・・』
『全部、伯爵次第だね』
キリシアは笑みを浮かべながら言う
『愚か者は、相手を調べずに襲ったこの者達ですね』
『そうだな・・・容姿で騙されすぎだな』
ギルドマスターの言葉に領主は呟く