戦後処理と領主の悩みの解決
『キリシア、大丈夫?』
マルスの問いに
『かなり痛かったけど、鎧が守ってくれた』
キリシアが言う
『キリシア、無理はダメです。かなりの深手です』
リリシャがキリシアに言う。ヒールの光を手にかざしながら
『二度、鎧に助けられた』
キリシアは呟く
『アレだけの攻撃と魔法を受けても壊れないとは・・・マルスの魔法の早さと威力も・・・・』
ガシリオは言うと
『マルスだからだよ』
キリシアが笑う
『マルスだからか?本気のマルスはとんでもなく強い』
ガシリオも笑う
『マルス師匠の本気、初めて見ました。最後の魔法も凄かったです』
エミールが続く
『マルスの本気は階層主との戦い以来だからね』
リリシャが言うとキリシアも頷く
『ヴァンパイアを倒すとは・・・ジェネラルゴブリンにヴァンパイア、こんな事が起きていて国軍は動けていないとは・・・』
ガシリオは嘆く
『ヴァンパイアとはもう戦いたくないな』
マルスの言葉にキリシアとリリシャが頷く
『私はもっと強くならないと・・・マルスを護れるぐらいに・・・』
キリシアが呟く
『やはりもっと迷宮で修行しないとダメかな?』
リリシャが言う
『そうだね。後は闘気ももっと練らないと』
キリシアが苦笑いしながら言う
ヴァンパイアの灰を袋に積めて持って帰る
『ん?何だろう?』
『結晶?』
赤い丸い珠が灰の中にあった
『血珠だな。ヴァンパイア倒した証になるから持って帰った方が良いぞ』
ガシリオが言う
『灰とはわけて持って帰ろう。あの剣も』
キリシアが言うとみんな頷く
『取り敢えず、村に帰ろう。自分達じゃ始末しきれないし』
マルスの発言にリリシャとキリシアが言い、歩き出す
兵士達はまだ固まって呆然としたままだった
『一度、村に帰りましょう』
リリシャの言葉に兵士はやっと我に帰る
『わっわかりました』
『領主殿に報告と、ここの始末をお願いしたいけど良いかな?』
『はっはい!かしこまりました』
村に帰り着き
『ルメイル、ただいま』
キリシアが言うとルメイルは
『ご無事で何よりです』
村長の家に入り、キリシアの治療の続きをリリシャがしている。マルスもエミールが必死に治療している。兵士の2人が領主に報告と増援を頼みに走る
領主の館に着いた兵士は
『領主様、至急の人手が必要です』
兵士の言葉に領主は
『何が起きたのだ!』
『ゴブリンとホブゴブリンとジェネラルゴブリンの群を冒険者達で討伐しました』
『なっなんだと!!!』
『ジェネラルゴブリンだと!!』
領主と重臣は驚き固まる
『その後ろにヴァンパイアがいました』
『ヴァンパイアだと!!!』
『ヴァンパイア・・・・』
領主と重臣は絶望的な顔になる
『ヴァンパイアは既に冒険者により倒されました』
『たっ倒した??』
『真なのか?』
『はっ!本当に倒されました!!』
兵士はそう言って領主を見る
『本当に本当なのだな!』
『この目で壮絶な戦いを確認しました』
兵士はそう言って頭を下げる
『何故、人手が必要なのだ?』
重臣は言う
『倒したゴブリンの群を処分する必要が有りますが、人手がまるで足りません。200体以上いるので・・・』
『なっなんだと!!!』
重臣は驚き声をあげる
『直ぐに人手を確保して派遣せよ』
領主が言うと、重臣は直ぐに人手を集めるために出ていく
『しかしヴァンパイアとは・・・国王に報告せねば・・・』
翌朝、兵士達はトーラスト村に向かう
村に到着した兵士達は、直ぐに村外れに行き
『これは・・・全てゴブリンなのか?』
『こんな大群を相手に勝ったのか?』
兵士達は口々に呟く
『早く作業を開始せよ!!』
隊長はそう言うと兵士達は作業を開始する
兵士の半分は洞窟のゴブリンを処分しに向かう
『本当にこんな数を倒したのか?』
『かなりの激戦だったよ』
キリシアは軽く答える
『領主様がお会いしたいと仰っている。領主の館に来てほしい』
『面倒だから嫌』
キリシアは言うと
『は?』
意表を突かれ変な言葉を言う
『ワハハハ』
ガシリオは大笑いする
『面倒でも、一度会う必要がある!そしてリベリアの冒険者ギルドにも報告した方が良いぞ』
ガシリオの言葉にリリシャが同意する
『ヴァンパイアはもう国が動く案件ですから』
ルメイルも続く
『そうだね。早速行こう』
キリシアは言う
直ぐに領主の館に向かって馬車を走らせる
領主の館に着き、中に案内される
『冒険者殿、よく来てくれた』
領主は迎え入れて笑顔で言う
『今回の討伐報告は受けている。大儀であった』
『そう堅くならないで大丈夫ですよ』
バイルが言う
『ギルドマスター!どうしてこちらに?』
『着くなり兵士を縛り上げ、領主を困らせた人がいたみたいだから、こっちに着いてみれば、ヴァンパイア討伐とは思ってもいませんでしたよ』
バイルは笑いながら言う
『ヴァンパイア強すぎ』
キリシアの言葉に領主とバイルは苦笑いに変わる
『それを倒すのだから、末恐ろしいですな』
バイルが言うと領主も同意する
『言っていた通り、常識は考えないで話した方がよいですね』
領主は苦笑いする
『みんなそう言う』
キリシアが言うとリリシャは笑う
『ギルドマスター、これどうすれば良い?』
キリシアは血珠と灰をだす
『これが血珠か・・・間違い無いようだな!』
バイルが言うと領主も頷く
『直ぐに国王に報告しよう』
領主はそう言って、重臣に使者の準備をするように伝える
『英雄達よ、今晩は館で寛ぐといい』
領主がそう言うと部屋に案内される
夕食後、部屋でゆっくりしていると車椅子に乗った人がやってきた
『コンコン、失礼します』
『あなた達が冒険者の人だな』
車椅子に乗った人が言う
『はい、そうですが』
『その若さでヴァンパイアを倒すとは、相当な修練を積んだのだろう』
そう言うと全員を見て頷く
『私もこんな体になっていなければ・・・』
その言葉にキリシアが
『怪我をしたの?』
『いや、身体中痛くて上手く動けなくなったんだ』
『迷宮で?』
『ゴブリンとの戦いの後でだ』
『治療出来ないの?』
『魔法も薬も効果なかった・・・』
車椅子の男はうつむく
『マルス、どうにか出来る?』
キリシアの言葉にみんなマルスを見る
『え?自分が?』
『足も治してくれたしな』
ガシリオが笑いながら言う
『本当に出来るのか??』
車椅子の男はマルスを見つめながら言う
『出来るかはわかりませんが、見させて貰ってもよろしいですか?』
マルスが言うと
『頼む。治らなくても出来る治療があるのならば、どんなことでもする』
車椅子の男はそう言う。マルスは魔力視で男の体を見るがそんなに悪いように見えない
『闘気は使えますか?』
『闘気は使ったこと無い、魔法も使えない』
車椅子の男はそう言うとマルスは手と肘をさわり魔力を動かす、魔力は少し動く、次に闘気を流すとほとんど動かない
『もしかして・・・少し痛いかもしれないけど、良いですか?』
マルスが言うと車椅子の男は頷く。そしてマルスは闘気を少しずつ動かし右手と肩まで流れを作る
『どうですか?腕は動きますか?』
マルスの言葉に車椅子の男は腕を動かす
『痛みが消えた・・・何をした?』
『闘気を流して、詰まっていた闘気を動かしただけ』
『闘気を動かしただけだと』
『闘気を練ることが出来れば治るよ』
マルスの言葉に車椅子の男は涙目になる
『本当なのか?本当に本当なのか?』
『足もやってみて良いかな?』
『頼む』
『動いているのを感じてみて』
そう言ってから少しずつ動かして両足と左腕の闘気を体に戻す
『闘気の流れを感じられたかな?』
『少し不思議だが』
『手に闘気を集めてみてください』
車椅子の男は手に闘気を流してみる
『あまり動いていないか?』
『流れがあまり無いけどそんな感じ』
キリシアが言う
『次は体内の闘気をお腹の辺りに集めてみて』
キリシアが言う
『こんな感じか?』
『最初はそんな感じ』
『全部制御出来れば、こんな感じになるよ』
身体中の闘気を動かしていろんなところで闘気の光をだす
『凄い。修練すれば良いのか?』
『少しずつ闘気を動かし続けていけばいろいろ出来るようになる』
『わかった。毎日やり続けよう』
『車椅子にいつまで座っているの?』
キリシアが言うと男は立ち上がる
『体が動く。痛みが和らいだ・・・』
『痛みが無くなるまで頑張ってください』
マルスの言葉に涙を流しながら
『ありがとう・・・』
『治った訳では無いので、闘気を練って闘気が滞らないようにしてください』
『わかった。修練はいくらでもやる。ちょっと一緒に来てくれないか?』
男はそう言って歩き出す
両手でドアを開けて、『お母様!!』
『どうしたの?歩いて大丈夫なの?』
女性が答える
『原因がわかったからもう大丈夫だ』
『本当なのですか?』
『後は修練すれば良いだけだ!』
『何も効かなかったのにどうして?』
『闘気が滞っていたのが原因だったのを教えて貰った』
『闘気?本当に』
後ろから領主がやってきて驚く
『冒険者が何故ここに?』
『親父、歩けるようにして貰った』
男が言うと
『本当なのか?』
『後は、修練して闘気を学ぶだけだ』
様子を見て領主は
『本当にありがとうございます。まさか領地だけでなく息子まで救って貰うとは・・・・』
領主は奥方と一緒に頭を下げる
『闘気の鍛練、頑張ってね』
キリシアがそう言って部屋に戻る