領主の悩み
『お兄ちゃん?』
『レディナ』
マルスにレディナが抱きつく
『帰ってきたの?』
『冒険者として来たんだよ』
『マルス!』
『お父さん、お母さん』
家族の再会後、しばらくして
『お久しぶりです』
キリシアとリリシャが言う
『マルスがお世話になっています』
『逆にいつも助けられています。大切な仲間です』
リリシャとキリシアが言う
翌朝、ガシリオは、兵士と一緒に領主の元に向かった
状況を聞いた領主は
『ガシリオ殿、今回は大変ご迷惑をかけて申し訳ない』
領主が言う
『迷惑したのは村人達です』
『そうであったな・・・』
『しかし何故、あのような連中を村に派遣したのですか?』
『トーラスト村はまだ安全な方だったので、連絡係の様な任務だったが・・・』
重臣が言う
『代々仕えてくれていたので、信用していたが・・・』
『あの者達の処分は、如何したいですか?』
ガシリオの言葉に領主は
『罪状が罪状だけに、全ての罪を明らかにした上で、私財没収の上、一生涯牢屋か死罪と思います』
領主の言葉に重臣も頷く
『リベリアに移送するより、同じ事をしているものがいれば、重い罰があると前例が出来て、良いかも知れません』
ガシリオの言葉に領主は
『我々の監督が行き届いていなかった事が、今回の事態を引き起こしています。どうか、私共の手で始末を付けさせて頂きたい』
領主の言葉に、重臣達も頭を下げる
『重罰を約束していただければ、引き渡します』
ガシリオが返事をする
『約束いたします』
領主と重臣は誓う
『ところで、今回のこの事態は本当にゴブリンだけですか?』
『最初はゴブリンの小規模な略奪から始まったが、今は組織的になっています。精鋭を派遣したが、返り討ちにあい、今は防戦がやっとの状況です』
領主は正直に言う。重臣はうつむき
『組織的と言うところが気になります』
『確かにその通りですが、調べようが無い・・・』
重臣達は苦虫を噛むような表情でいる
『ゴブリンの後ろに、進化した者が沢山いるようであれば、国軍が動く必要もありますし、騎士団も旗下の騎士を派遣されるかもしれないですね』
『その通りです・・・詳しいですな・・・』
重臣はガシリオを見つめながら
『もしかして貴方は?騎士団の騎士ですか?』
『元です。足の怪我で騎士団に居られなくなったので、今はリベリアの警備隊に身を寄せている身です』
ガシリオの言葉に重臣は頷く
『そろそろ帰らないと村に着くのが夜更けになるので、よろしいですか?』
ガシリオが言うと
『2人の兵士のことは厳しく処分しますのでご安心を』
領主はそう言い、ガシリオを送り出す
ガシリオが帰った後、
『2人の処分は早々に実施した方が良いと思われます』
重臣が領主に進言する
『そうだな・・・そのようにしろ』
『リベリアからの冒険者に警備隊・・・正式な依頼では無い為、リベリアの冒険者ギルドマスターを通してからでないと無茶な命令を出来ないとは・・・我らの戦力に出来ない』
重臣が嘆く
『村を守るために来たのだから、戦力に計算するわけにいかない』
領主は呟く
『若い兵士にトーラスト村に向かうように指示します』
重臣は言い
『今回みたいな事が無いように言い渡せ。勿論、他の兵士達にも直ぐに通達を出せ』
領主の言葉に重臣は同意して指示の為に部屋を出る
『息子さえ万全の体調であれば・・・このように悩まないのだが・・・』
ガシリオは兵士と合流して村に着く
『ガシリオ、お帰り』
キリシアが言うと
『村長に今回の顛末を伝えてくる』
ガシリオがそう言って村長に会いに行く
『村長、領主は2人を厳罰に処置すると約束してくれました。そして新たに2人の兵士を派遣してくれました』
2人の兵士を紹介する
『領主に代わり、お詫び申し上げる。今回の事は全ての村に派遣された兵士達にも通達を出して、2人は厳罰に処置すると約束します』
『わかりました。早急な対応ありがたいと思います』
村長はそう言って頭を下げる
『昼間、ゴブリンらしき足跡を発見したので、今晩は臨戦体制を準備しています』
ルメイルが言うと
『足跡を見つけた?』
ガシリオの表情が代わる
『村の外れを確認に回っていた際、発見して確認しました』
『今晩来る可能性が高いな・・・』
『ガシリオ、リリシャとエミールにゴブリンを近づけない様に一緒に戦って貰っても良い?』
キリシアの言葉に
『わかった。キリシア殿は斬り込むのですな』
ガシリオが笑う
『別方向から侵入された場合、ルメイルと村人達で防衛するから、兵士さんもそちらをお願いしてもいいかな?』
『わかりました』
兵士は同意する