13歳と弟子の危機
数ヶ月、平和な時が過ぎる
今日はマルスの誕生日で、フローネの家でお祝いする
『マルス、おめでとうございます』
みんなで祝いの言葉をかける
『ありがとうございます』
『会ってからもうじき一年ですね』
『一年、沢山の事があった』
リリシャとキリシアはそう言って、一年の思い出を思い浮かべている
『このような賑やかな生活が再び訪れるとは、私も思いませんでした』
フローネも思い出しながら微笑んでいる
『フローネ先生と、リリシャ師匠と、マルス師匠と、キリシアさんに会えていなかったら、私は魔法使いになることを諦めていたと思います』
エミールも来てからの生活が楽しい日々を思い出している
そして翌日、迷宮に行く
『エミール、今日は初めての11層よ』
『はい』
エミールはリリシャを見て頷く
11層に最短距離で進む
11層を探索し始める。バタフライに遭遇する。リリシャがファイヤーアローを放つ。黒い煙を上げながら結晶を残して消える
『魔石を拾ってね』
『はい』
エミールが魔石を拾い、袋に入れる
またバタフライに遭遇する
直ぐにリリシャがファイヤーアローを放ち、仕留める
魔石を拾いに行こうとするエミールを止める。奥から2匹のバタフライが向かってきているのを確認して、リリシャの後ろに下がる
リリシャはファイヤーアローを連射して仕留める
今度は、リリシャを見てから拾いに行く
次は小部屋を確認して、キャタピーとバタフライがいるのを確認した。ファイヤーストームで小部屋を殲滅する
キリシアが中の状態を確認して、エミールと一緒に魔石を拾う
次々と小部屋をファイヤーストームで殲滅していく。そして、魔石と糸を集めていく
『エミール、疲れていない?』
『はい!大丈夫です』
『無理だけはしないようにね』
『はい、師匠こそ大丈夫ですか?』
『まだ、あとこの倍は大丈夫よ。それにマルスもいるから、無理する必要も無いですからね』
『次は2連部屋だね』
『2連部屋?』
『左右に大部屋が有るから、両方を同時に攻撃して討ち漏らさないようにしないといけないところです』
キリシアの説明にエミールは困惑する
『どちらか討ち漏らしたら、挟み撃ちで一気に窮地になるのですか?』
『その通りです』
『体調が悪いようならば引き返します』
キリシアとリリシャの言葉に考えるエミール
『ごめんなさい。実は少し体がダルいです』
エミールは正直に体調を言う
『さっきの角の所に戻りましょう』
リリシャの提案にキリシアが頷く
少し戻り、リリシャとエミールから休憩する
『体調はどうですか?』
『だんだん体が重く感じます』
『本当に?』
『体が重いだけですから大丈夫です』
エミールの返事に、リリシャはマルスを見る
マルスは魔力視でエミールを確認する。マルスの表情が険しくなる
『エミール、魔力制御出来る?』
『はい』
エミールは魔力を制御しようとするが、上手く制御しきれない
『え?どうして』
マルスは、エミールの魔力の流れが乱れまくっているのを見て
『直ぐに帰ろう』
一言言うと、リリシャとキリシアは理解し、マルスがエミールをおんぶして歩き出す
『エミール、無理せずゆっくり魔力を動かすようにしてみて』
マルスの言葉にエミールは目をつむり深呼吸してゆっくり魔力を制御する
地上に戻りフローネの家に向かう
『フローネ先生、ただいま』
『どうしたの?』
『体が重いとの事で、帰ってきました』
フローネの表情が変わる
『大丈夫なのですか?』
『魔力が乱れています。ゆっくり休む事が良いと思います』
『そうですね』
『私が付いていたのに、気付いてあげられなくてすいません』
リリシャはフローネに謝る
『いいえ、倒れる前に連れて帰ってくれたので間違いなく初期症状だと思いますので、数日で回復出来ると思いますよ』
フローネの言葉に、リリシャも安堵の表情を浮かべる
『師匠、体が重くなるのは悪いことなのですか?』
『迷宮で体が重たくなると、魔力や闘気が乱れる事があります。状態が悪いと再起不能になることがありますので、ゆっくり休んでください』
『そうだったのですね』
『今はゆっくり休んでください』
『すいません。足を引っ張りたくなくて、少し無理をしていました』
『気にしないで良いですよ』
リリシャは笑顔でエミールを見ている
数日後、まだ体調は好転しない
『エミール、大丈夫?』
『はい』
『まだ変化はないのかしら?』
『すいません』
エミールは暗い顔をしたままだった
『エミール、少し魔力視で体の魔力を見させてもらっても良いかな?』
『マルス師匠、わかりました』
マルスはエミールの身体中の魔力を確認している。身体中の魔力が沢山の魔力溜まりを作っている。マルスが考え込んでいるのを見て、エミールは暗い気持ちが晴れない
『魔力はもう全く制御出来ないよね』
『うっ・・・はい』
涙目になる
『リリシャやフローネ先生を心配させたくないよね』
『はい』
『何とか出来ないか考えるから待っていてね』
『マルス師匠・・・』
涙目のまま頷く
エミールの体の魔力が急激に増えた原因は、間違いなく迷宮だけど、増えた魔力を制御不能になっているのが原因だよね。魔力を減らすか制御を強くするしかない。しかし、魔力に体が耐えきれていない・・・・魔力溜まりから魔力が流れないのも治さないと・・・外から無理矢理やるしかないか・・・魔道具で不要な魔力を貯蔵するしか無い・・・
『エミール、まだ起きている?』
『マルス師匠、起きています』
『魔法のランプに魔力を流してみてくれる?』
『はい?』
エミールは疑問に思いながらランプに触れる
終わって直ぐに
『魔力を右手に集中して?』
『はい』
右手が魔力の淡い光がする
『え?』
『そろそろやめて』
『はい』
『余分な魔力を消費したから、一時的に魔力制御が出来たけど、余計な魔力が集まり制御不能にまた直ぐになる』
『え?どう言うことですか?』
『エミールの状況から、以前の倍の魔力が体にあるけど、使える量は前と変わらないから、溢れた魔力が魔力を留めて体の異変になっているってこと』
『私が魔力制御出来るようになれば大丈夫って事?』
『簡単な事じゃないよ』
『まだ希望があるの?』
『最終手段は使いたくない』
『師匠達と一緒にいられるのなら、どんな事もします』
エミールは真剣な目で言う
『リリシャに嘘を付いて、出来ない事も出来た事にしたからこの状況になっている。魔力制御、リリシャに言った通りに出来てない』
『うっ・・・それは・・わかってしまうのですね』
涙を流し始める
『魔力の流れが悪いところに、倍の魔力が一気に流れようとしたら、どうなるか理解は出来るよね』
『それは、溢れるか壊れます』
『エミールの体の中で起きている状況が、その状況だよ』
『そんな状態なのですか?』
『だから、魔力を消費した瞬間に魔力を制御して、制御能力を上げるしか無い』
『治るなら必死に頑張ります』
『わかった。かなり無理をさせるからね』
マルスの言葉にエミールは頷く