2-1話エミール
『明日はどうしようか?』
『ちょっと体重いからフローネ先生の家に行こう』
キリシアか言うとリリシャは同意する
『フローネ先生、いますか?』
『・・・』
『どこかに出掛けているのかな?』
キリシアがリリシャを見ると
『道具屋に行ってみよ』
『そうだね。何処かで会うかも知れない』
『道具屋にも来ていないね』
『色々見て回りましょ』
お店を回り、美味しそうな果実を買って、もう一度フローネの家に向かった
『フローネ先生、いますか?』
『いらっしゃい』
『これ市場で買ってきました』
『もしかして留守中に来たのかしら』
『はい。それから市場を歩いて楽しかったです』
リリシャは笑顔で話をしてフローネは微笑んでいる
『実は、領主から魔法のランプを作ってほしいと依頼があったの』
『魔法のランプをですか?』
『どう、やりたい?』
『はい!やります』
リリシャの回答にフローネは微笑んでいる
『明日、糸を採りに行かないとね』
キリシアが言うとリリシャも頷く
『無理はしないように』
『コンコン、フローネ様のお宅でしょうか?』
『誰か来たようですね?』
フローネが玄関に向かうと、少女が旅の服装で立っていた
『どちら様ですか?』
『エミールと言います。祖母からの手紙も持って来ています』
『どうぞ』
エミールを中に迎え入れて
『はじめまして、エミールと言います。よろしくお願いします』
フローネは手紙を読み始める
フローネ、突然の手紙と孫のエミールの訪問、許してほしい。エミールの両親は既に亡くなっていて、私が引き取って育てていたの。しかし、歳には勝てそうに無く、病の床に伏せっています。もし、この手紙を持って孫が伺う事があれば、話を聞いてほしい。最後の頼みを聞いて。お願いします。
手紙を読み終え、エミールに
『どうして私のところに来たの?』
『祖母が亡くなり、他の親戚にも会って貰えなくて・・・本当に困ったらフローネ様の所へ相談に行きなさいと祖母が言っていましたので・・・』
『魔法使いになりたくて魔法の勉強もしていましたが、全く上達出来なくて、一年で良いのでお願いします。家事でも何でもしますので・・・』
『一年?その後はどうするの?』
『冒険者になって、自分で生計を立てながら魔法の勉強をしたいと思っています』
『冒険者に・・・今は14歳なのね』
『はい』
『弟子をもう育てることは出来ません』
『そうですか・・・時間を取らせて申し訳ありません』
エミールは席を立ち涙目になりながら歩きだす
『話は最後まで聞きなさい。』
席に戻り
『冒険者になるにしても、一緒に居てくれる人がいないと直ぐに死にます。魔法を勉強するためには、一緒に切磋琢磨する相手や師が必要です』
『はい・・・』
『覚悟があれば、直ぐに冒険者になりなさい』
『冒険者の試験は受けましたが、無理だと言われました』
『後見人と仲間がいれば別です』
『そうかも知れないけど、私にはもう誰もいませんので・・・』
『私は、弟子を育てることは出来ません。しかし、冒険者で魔法使いに知り合いがいます』
『本当ですか?お願いします。紹介してください』
エミールは涙目から真剣な目に変わり、フローネを見ている
『リリシャ、あなたも一人前なのですから、弟子にして貰えないかしら?』
『私ですか?まだまだ半人前ですから・・・先生に色々教わりたいので』
『知識は色々相談に乗りますが、あなたはもう私を超える魔法使いです。』
リリシャは考え込む
『お願いします』
エミールは頭をさげる
『キリシア、マルス、良いのかな?』
キリシアとマルスを見て2人が頷くのを確認する
『どんなに辛くても、投げ出す事は許しません。あと、少し魔法を見せて貰います』
『はい!わかりました』
エミールを連れて岩場に向かい、エミールの魔法を見せて貰う
『・・・・・・エアーカッター』
岩に当たり消える
『・・・・・・・アクアアロー』
エミールは一生懸命魔法を使い、アピールをする
『どうでしょうか?』
『全く使えない』
キリシアがキッパリ言うとエミールは涙目になる
『私が魔法学院に入るとき、こんな感じだったと思う』
リリシャが言うと
『ファイヤーボール』
岩が砕けて少し溶けている
『・・・凄い・・・詠唱が聞こえないほど早い』
エミールは驚き、地面に腰を落としている
『この人の真似はしないように。詠唱魔法を勉強してくださいね』
フローネが苦笑いする
『リリシャさん、また魔法の威力上げましたね』
『真似してはいけないのですか?』
エミールは驚きながら言うと
『この人達は、古代魔法を既に使っていますからね』
『古代魔法!!!』
『詠唱魔法も使えますよ』
『・・・・・アクアアロー』
岩に亀裂が入る
『凄いです・・・・』
『回復魔法とかは使えますか?』
『あ!はい!』
『冒険者ギルドに行きましょうか?』
『はい!しかし落とされると思います』
ギルドに着いて
『ヘザーネ、こんにちは』
『キリシアさん、リリシャさん、マルス君、どうしました?』
『この子の冒険者登録をお願いします』
『冒険者登録は初めてですか?』
『はい!しかし冒険者試験に落ちました』
『年齢は?』
『14歳です』
『保護者は?』
『もういません』
ヘザーネの顔が厳しくなる
『リリシャの弟子になるから、一緒に迷宮入りたいの』
キリシアが言うと
『わかりました。ギルドマスターに聞いてきます』
ヘザーネは裏に向かう
直ぐに戻ってきて
『条件付きですが、許可が降りました』
ヘザーネが笑顔で言う
『え?本当ですか?』
『リリシャさんの弟子として、リリシャさんと一緒に行動することが条件です』
『ありがとうございます』
『こちらに記入お願いします』
『はい!』
エミールは真剣に記入している
『ギルドマスターから、これを修理出来るか見てほしいそうです』
魔法のランプを渡され確認する
『魔石が割れている』
『交換が必要ですね!この間作った物に交換すれば治せます』
フローネが言うとリリシャも頷く
『お預かりします』
記入が終わったエミールが紙をわたす
『明日、ギルドカードをお渡しします』
『試験もしないで冒険者になれるとは・・・』
エミールが呟くと
『リリシャさんの弟子ですので、まず無理はさせないと思いますし、自重して貰えるならば、尚更ギルドとしてはありがたい事です』
『自重って?』
エミールが疑問になり呟く
『無理をしなくなる事です』
ヘザーネが言うと
『私達、無理はしてないよ・・・一回だけしか』
キリシアが言うとヘザーネが苦笑いする
『師匠、一回って何かしたのですか?』
エミールがリリシャに聞くと
『12層の階層主と戦った時かな?』
『かっ階層主ですか・・・』
『マルスが魔法で吹き飛ばして勝ったけど、危なかった』
リリシャが言うと、ヘザーネとフローネが苦笑いする
『エミール、良いですか。3人と話す時は常識を捨ててくださいね』
『はい!わかりました』




