4話 誕生日とゴブリン
村長の家で本を読めるように文字を教えて貰ったり、体を鍛えたりしながら、月日は過ぎていった。
朝木刀を振っていると妹が呼びに来た
家に入るといい匂いがする。
テーブルにはいつもと違い肉にサラダ、スープにパンが並べてあった。
今日は12歳の誕生日だった
席に着くと
『12歳おめでとう』
母親と父親、妹から祝いの言葉。
『ありがとう』
笑顔でお礼を言うマルス。
ごはんを食べ終えた頃、村長が慌てた様子でやって来た
『村長どうかしたのですか?』
『隣村がゴブリンに襲われた』
父親と母親は驚き顔を見合わせる。
『ゴブリン・・・』
と、呟く。
『領主様に退治を依頼しに行くが、おそらく兵士は派遣してもらえないと思うから、冒険者ギルドに依頼も出す、ゴブリンを見かけたら連絡をしてほしい』
そう言って村長は帰っていった。
数日後冒険者がやって来た。まだ若い青年2人と少女2人のパーティーで、青年の一人は剣に革の鎧、少女の一人は革の鎧に槍を持っていた、もう一人の少女は軽装に杖を持っていた。魔法使いであった若い男は村長にゴブリンごときすぐに退治すると軽く言って笑っていた
『気を付けてくださいゴブリンは侮れないですから』
『ゴブリンごとき楽勝』
『ゴブリンなんて雑魚の雑魚余裕』
と冒険者は次々と言っている。
まだ冒険者になりたての新人冒険者であった。
冒険者達は森に早速入っていった。
村長は見送りながら、
『大丈夫かな・・・』
ともらす。
『自分も一緒に行った方が良かったかな?』
と、マルスが言うと、
『マルスが一緒に行ってくれれば、もっと慎重になってくれるとは思うが、そこまでする必要は無いだろう』
村長は呟きながら、冒険者の背を眺めていた。
村長はマルスの実力を認めていた。すでに村で指折りの実力があり、一人で森に入っていること。多くの獲物を捕獲しているからである。
翌朝、冒険者はまだ帰って来ない。
マルスは革の鎧と短剣を装備して、森に入った。冒険者捜索の為で、迷っていないか確認する必要があったからである
しばらく歩くと崖の近くで冒険者を発見した。冒険者達はゴブリンの巣穴を見つけて入って行く。
自分も様子を見ながら巣穴の前まで行った
奥から熱気と共にドカン!
魔法?
様子を見ようと、巣穴に入るとそこには、横たわりビクビクとしている若い男と黒こげになっているゴブリンがいた
『ゴブリンごときに・・・』
と言いながら戦う青年と少女
『大丈夫?』
と倒れている青年に声をかけている軽装の少女
数に勝るゴブリンは次々と襲いかかる。
金属のぶつかる音が巣穴の中に響きわたっている。
少女の槍は空を切り、ゴブリンに抑えられ別のゴブリンに殴られて崩れ落ちる
杖を構えた少女は魔法を発動してゴブリンを焼き払う、しかし、別のゴブリンが突撃してくる。
マルスは思わず飛び出し、ゴブリンに短剣を突き立てた。
『ギャー・・・』
断末魔が聞こえた。
『援護しますので魔法に集中してください』
少女に声をかけると驚いた様子で頷く。
左右にステップを踏みながら、ゴブリンを確実に仕留めていく、そして火の玉がゴブリンを焼き払う、炎の閃きの中、若い男の血でゴブリンが赤く染まっていた・・崩れ落ちる若い男を見ながら満足そうな顔をするゴブリン
魔法使いの少女も気付く、一瞬の隙をゴブリンが突撃してくる、少女はすぐ近くまで接近した時、気付く。既に避けれない距離だったが、ゴブリンは首だけ飛ばされて崩れ落ちる。マルスが振るった短剣が折れながらゴブリンを斬り倒していた。最後の返り血がついたゴブリンが接近してくる、マルスは咄嗟に地面に落ちている剣を拾いゴブリンに振るい、ゴブリンに突き刺さり
『ぎゃァー』
断末魔と共に崩れ落ちる。
倒れた2人の若い青年は既に息をしていない。殴られた少女は意識を取り戻したが、2人の死を知り泣き続けていた。
2人を埋葬して、村に帰る事にした。
『助けに来ていただいてありがとうございます』
魔法使いの少女が言ってきた
『助太刀ありがとう』
槍の少女もお礼を言う
自己紹介をしていなかったので
『マルスと言います』
『リリシャよ』
『キリシア』
魔法使いの少女がリリシャで槍の少女がキリシア
村に着くと村長に報告する、2人は村長の家に泊まるそうだ
初めてゴブリン討伐を経験した事を考えながら家に帰った。