26話 付与した金属のウロコ
次の日、迷宮で小魔石と糸を集めて帰ってきて、ギレリムの所に寄り、金属の鱗を受けとる
『取り敢えずは魔力を流して大丈夫か確認してから、明日、先生の家に行こう』
自分がそう言うと、キリシアとリリシャが同意する
部屋で鱗に魔力を流し、魔力の通りが良くなるように魔力を動かし続ける
『フローネ先生、昨日ギレリムから受け取った試作の鱗です』
フローネは魔石と形を確認して
『付与魔法で付加出来るか試してみましょう』
フローネは微笑みながらマルスを見る
魔方陣の中に鱗を置き、魔石に構造強化の魔方陣を書き込み、フローネに確認してもらう
『綺麗に魔方陣が書かれていますね。魔力を通してみましょう』
マルスは、魔石に触れて魔力を通してみる
鱗が淡い光に輝く
『見事です。しかしマルスは、付与魔法師としての腕は私を越えてしまいましたね』
フローネはそう言ってニッコリ、マルスを見る
『そんなことは無いです。知識が足りませんから』
マルスがそう言うと
『確かにそうですね。色々な魔導書や経験を積む必要がまだありますね』
『防具が出来たら、少し旅をするのも良いかも』
キリシアが提案すると、リリシャも同意する
『それは良いですね。冒険者ですから、国内であればどこでも依頼を受けられますからね』
フローネも同意してくれる
『この鱗、ミスリルを使わないとダメなのかな?』
『普通は使わないとダメですね。しかし、あなた達のやり方ならば必要無いですね。魔力がどこからでも通るようになっていますからね』
『後は、固さがあれば大丈夫だね』
『ギレリムに固さとか確認して貰う?』
『鍛冶屋の意見ですね。大事ですね』
フローネは微笑む
『後は、魔力を通す革ですね。それに魔力を供給するための魔石かな?』
『何件か探しに行きましょうか?』
『はい!』
フローネと一緒に素材を探しに店を回る
『魔力を通す革ですか?』
『良いものありますか?』
出してもらう物を見ていくが、なかなか良いものは見つからない
『このところ、大型の魔獣が討伐されていないですから、良いものはなかなか手に入らないですよ』
店の店主がそう言うと
『魔獣討伐してくればいいんだね』
『しかし、強い魔獣討伐は、できる冒険者がなかなか居ないですよ』
『ギルドで情報を探して討伐に行くのもいいね』
キリシアが言うと
『危険だから辞めた方が良いですよ。子供に危険な事させてもしもの事が有ったら・・・』
『大丈夫、強くなったから』
『フローネ殿・・・』
『この子達は大丈夫。少し心配ですが、知識をもう少し覚えれば旅も出来ます』
フローネは微笑みながら言う
『フローネ殿、魔道具に必要な物があれば言ってくださいね。フローネ殿の魔道具が必要でしょうから。フローネ殿に復帰して頂けるのであれば、協力は惜しみません』
『不足しているものがあるのですか?』
『実はポーションも不足しています。ランプもほしいと言う人もいます。ランプが壊れたのを修理出来ればとも思っています』
『リリシャの勉強に丁度良いかも知れないですね』
フローネはリリシャを見てニッコリする
『使いを頂ければ、直ぐに材料を届ける事を約束します』店主は頭を下げている
『明日はポーション作りかな?』
キリシアがそう言うと
『頑張ります』
リリシャはそう言うとフローネを見る
『やる気になったようなので手配頼みますね』
『明日の朝、家に届けます』
『ギレリムいる?』
カセテイが顔を見せて
『フローネも来るなんて何年ぶり?』
『買い物ついでに寄っただけですよ』
『フローネの明るい顔、久しぶりで嬉しい』
『座って、お茶用意してくるから』
『直ぐに帰ると思うから必要は無いと思うわ。奥に入っても良いかしら?』
『歓迎します』
『ギレリム、この強度確認して』
キリシアが鱗を渡す
『まさか・・・本当に出来たのか?』
『常識を捨てましょう』
フローネが言うとギレリムが笑う
『常識はずれか』
『壊すつもりでやって良いか?』
フローネは頷きキリシアとリリシャも頷く
『ガキキーン・・・ガチガチ・・ドスンドスン・・・まさか』
ギレリムが倉庫に向かう
『フローネ、凄い硬いですね』
『付与魔法で、付加していますから』
『コイツでどうだ!!』
ギレリムは大ハンマーを両手で持ってきた
それを見たカセテイが驚く
『あんた!!』
台に置いた鱗を大ハンマーで叩きつける
『ガーンーー』
金属の当たる音が響き、ハンマーをどける
『何ーー』
少し魔力の光が弱くなってきた
『マルス、魔力の補給をしてください』
フローネがそう言うと
『凄い強度だ。こうなったらあれを使うぞ!!!』
ギレリムは奥にまた行く
『まさか、あの斧を持ってくるつもりじゃ・・・』
カセテイが顔色を変える
ギレリムが斧を持ってくる。ギレリムの顔は真剣だった
『魔力の補給は終わったか?』
頷くと斧を振りかぶって振り下ろす
『バキーン』
鱗にヒビが入るのを見て
『ここまで頑丈とは』
斧を置き鱗を持つと、裏の魔石がパキっと音を出して砕ける。そして鱗も割れる
『これを合わせて鎧か。形状を少し変える必要もあるが、途轍もない鎧になるな』
『ミスリルも必要か?』
フローネに聞く
『この子達には必要ない』
『必要ないだと!!!魔力の補給はどうする』
『ミスリル並みの魔力が通っているでしょう?』
『確かに特別か・・・軽量化もやり易い』
『凄い防具になりそう』
キリシアが言うと、フローネとギレリムが見つめ合う
『途方もない鎧になるだろう。こんな鎧作りさせてもらえるなんて、光栄だ』
ギレリムがそう言って頭を下げる
『えっえーー!』
カセテイが驚く余り声をあげる
『あんたが頭を下げるなんて・・・』
『なんだ!わっ、悪いか』
ギレリムの顔が赤くなる。そして斧を持って奥に逃げる
カセテイが少し笑う
『フローネ、良いもの見れましたね』
『そうですね・・・若い時を思い出しますね』
『ここのところ、凄い楽しそうに作っていましたからね』
『ギレリムがね・・・そうね、この子達のお陰ですね』
『ありがとうございます』
戻ってきたギレリムは
『この杖はリリシャの分だ。それと、その短剣も持っていけ』
『付加したら持ってくるね』
『楽しみにしておく』
ギレリムはニッコリする