3話 訪問者
家に帰ると、母親と妹が抱き締めてくる。
『マルス大丈夫?』
『ただいま、大丈夫だよ。
棒は折れちゃったけど』
と笑顔で答える。
目を丸くして、母親は微笑む
『良かった・・・・』
解体された魔物の肉で夕ごはんを作りはじめる。
魔物の肉のステーキとスープとパンが並ぶ
肉は柔らかく美味しい。噛めば噛むほど旨味が出てくる
『美味しい!』
妹は笑顔でこっちを見てくる。
笑顔が天使のようで可愛い。
父親も母親も笑顔で肉を頬張っていた。
食事が終わった頃、扉を叩く音がした。
母親が扉に向かいながら返事をすると
訪問者は村長であった。
『キスカ、オリバンはいるか?』
『はい』
村長を招き入れる。
『オリバン、相談があるのだが』
村長は真剣な顔で話をしてくる。
『村長、相談とは?』
『実は魔物の革や牙の事で話をしたい』
父親は自分を見て、
『一緒に聴こう』
『オリバン、怪我をした者逹がしばらく仕事が出来ない・・・怪我は命に別状は無いが・・・』
噛み締めるように切り出す
『彼等の生活のために金が必要で売却した取り分を彼等に渡したい』
怪我した人のため、全部渡すように相談に来たのだった。不満そうな顔をした自分を見た村長が、
『すまないがわかってほしい、一番活躍したマルスには悪いが・・・』
唇を噛み締めるように言う。
『わかりました』
父親は答えてマルスを見る。
『すまない』
村長もマルスを見る。
『マルスも良いか?』
『わかりました』
ほっとした顔で村長はマルスに頭を下げた。
村長は帰り際にマルスに尋ねてきた。
『マルスは将来何かしたいことあるのかな?』
『魔法使いになりたい』
村長は驚きながら
『魔法使いか・・・この村に魔法を使える人はいないから、無理がある・・・』
『だから冒険者になって魔法使いの仲間に教わろうと思います。』
村長は真剣な顔になり、
『王都の魔法学院に入れれば学べるが、その前に魔法を覚えないと入学も出来ないだから、冒険者か・・・本を読めるようになるためにも読み書きを教えよう』
『ありがとうございます』
答えると村長は頷く。
父親と母親は驚きながらも
『よろしくお願いします』
と言って頭を下げた。