騎士団長の報告とエミール
騎士団長は王都に到着する
『何だ!この壊れ方は!』
騎士団長がキマイラが倒された跡を見て言う
『キマイラが暴れた跡ですが、誰が倒したか不明だと言われています』
『キマイラだと!!そんな大物が暴れたら騎士団でも対応出来ないぞ!!英雄殿以外に!!』
『英雄殿達は王都にいなかったので、誰が倒したか解らなかった様です』
騎士が苦笑いしている
『早く王宮で報告を聞かなくては・・・・』
騎士団長は急ぎ王宮に向かう
『騎士団長戻ったか、英雄殿達の怒りは収まったか?』
国王が笑顔で言うと、王太子とヘルトが見ている
『到着した所、既に海賊の黒幕はお仕置きを受け続けて廃人になっていました』
『アハハハ!』
国王は笑いだす
『1日足らずで領主の館を落として、全員捕らえたようです』
『は?やっぱり怒らせたら1日足らずで落とすのか・・・・』
『海軍隊長からの報告書は後で正式にお渡ししますが、海賊は全滅の上、死者ゼロです』
『やはり英雄殿だな・・・』
『事はそれだけで終わりません・・・反乱は既に準備が完了していました。』
『何だと!もしかしてキマイラもその一貫だったと見る必要が有るかも知れないな・・・・』
『キマイラ・・・誰が倒したのですか?』
『王都であんな大魔法使えるのは1人だけだ!解るだろ?』
『ん?誰ですか?そんな逸材?宮廷魔術師長になってもらいたい』
騎士団長が考えながら呟く。
『直接確認に行ったが、間違いなかったぞ。しかし、倒した事より魔法で周囲の建物に被害が出たことを気に病んで、いきなり謝られたから、驚いたぞ』
『良い性格ですな・・・知り合いでそんな魔法使いいたかな・・・』
騎士団長が呟くと王太子とヘルトが笑いだす
『まだ解らないか?宮廷魔術師長就任を依頼したら、半人前だから無理ですとハッキリ断られた』
国王が微笑みながら言う
『英雄殿に似ていますね。しかし英雄殿は王都にいなかったが・・・』
『騎士団長!英雄殿の弟子は誰が残っている?』
『は?・・・・全員一緒に居たような・・・・』
『1番弟子が残っているだろ?忘れていたのか?』
国王が苦笑する
『あ!!魔法学院のエミールが残っていました!!』
騎士団長がやっと思いつくと、みんな笑っている。
『あの歳であの実力・・・こんな逸材が全員権力に興味が無いとは・・・その逆で実力も無いのに権力と名声欲しさに醜い争い等している者もいる。!』
国王が言うと全員で同意している
『最高の魔法使いは全員英雄殿達ですが、名声はいらないと言われるだけですからね』
『そうだのう・・・居てくれるだけで良いな』
国王が苦笑いしている
『今回も最後はキリシア殿が後は任せた!海軍と騎士団でやったことにしておいてね。で終わりですから』
『やはりそう言われたか・・・あやつはどうした?』
『廃人で牢屋に直行しました』
『仕方ない。処分はするように』
『畏まりましたが・・・今回はそれではすみません。反乱に荷担した14家全てに、何かしらの処遇をしなくてはならないです』
騎士団長が苦笑いしながら証拠を見せると国王と王太子とヘルトは苦笑いしながら読みガックリしている
『完全に王国の国民全員が救われたか・・・どんな褒美も与えたいが・・・』
『名前を出さない事が褒美だと言われてしまいます』
『そうだな・・・』
『話は変わりますが、海軍が英雄殿の魔道具が欲しいそうです』
『魔道具を?何の魔道具だ?』
『フロートの魔道具を大量にと、風の魔道具も欲しいそうです。』
『フロートの魔道具?なんだ?』
『鎧を着ていても海に沈まない魔道具です。騎士が鎧を着たまま飛び込んでも浮いていたと確認が取れています』
『沈まない・・・必要だな!報告は来ていないが』
『報告が来ても魔法研究院が再現出来ますか?マルス殿とリリシャ殿の魔道具を』
『不可能だな・・・無能者では』
国王がガックリする
『本当に潰したくなる・・・予算はいるのか?出来ない事を出来ないと証明する為の研究に』
『いらないな・・・英雄殿達は報告義務を無くした方が楽だな・・・献上だけで良いから魔道具だけ欲しい』
国王が苦笑いしている
『マルス殿が来年魔法学院にくる前に、マルス殿達の魔法を研究する為の屋敷でも用意した方が良いですな・・・』
騎士団長が呟く
『魔法学院の周辺で大きな敷地は空いてないか?』
『有ります!数件空家になっています』
『全部マルス殿の魔法研究工房に当てよ』
国王が笑顔で言うと、王太子が笑顔で頷いている
『褒美はそれを与えれば文句は言われないかな?』
騎士団長が笑顔で言う
『受け取ってもらえればな・・・』
国王が苦笑いする
『メトリシアに聞いてみた方が良いか』
王太子とヘルトが言う
『メトリシア様から今回の件についての手紙があります』
騎士団長が急いで手紙を渡すと、国王と王太子とヘルトがそれを読み笑い始めると、急に真顔になり、
『騎士団長!またヴァンパイアがいたと有るが、本当か?』
『はい!その様に報告は受けています』
『キリシア殿らしいな・・・バッタが食物を食い荒らすから、パンが無くなると嫌だから殲滅したとは・・・』
『これが広がってからだと大変な事になりますね・・・食料不足になると本当に国が滅びます』
『さらっと言っているが、間違いなく救国の英雄か・・・』
『騎士団長、バッタが増えたらどうなるか、解っていたのか?』
『え?バッタごときどうにでも・・・』
騎士団長が苦笑いしている。
『増えれば植物を食い荒らす!作物も全部食べられたらどうなる?』
『は?・・・・食料が・・・』
『草木が無くなり、草食動物がいなくなれば、肉食動物も魔物もいなくなる。残るのは荒れた土地のみだ』
『え!まさかそれを未然に防いだ・・・・軽く言っているが、そんなとんでもない事だったとは!』
騎士団長が青ざめながら言う
『それがメトリシアは解っていたから、手紙に森の一部が枯れ果てていたと書いている。これも重要だが遺跡の奥に封印が破られかけていた水晶が有ったので再封印しておいたと有るが・・・これは伝承に有る護り水晶で、これが破壊されたら世界が崩壊する可能性がある・・・次々と簡単に言っているが、桁違いの事態に普通の人では対応不可能だな・・・』
国王が頭を押さえながら言う
『・・・・・王都からの帰りだけでどれだけの事をしてくれたのか解らないですね・・・新しい魔道具!アーメルドの大海蛇!アーメルドの反乱!海賊討伐!内戦の鎮圧!ヴァンパイア討伐!バッタの大量発生の報告!王都の魔物の討伐!これだけの事を簡単に終わらせて、最後は団長に任せたで終わりですからね』
王太子が苦笑いして言う
『こんな内容報告しても信じて貰えませんから・・・と言ってもそれで良いよ。どうせ名誉いらないからで終わりですからね』
騎士団長が苦笑いする
『国を治める者としては称えたいが、不可能だな・・・内戦は公表は不可能だが、始末はしないとな・・・重臣と相談して、どうするかだな・・・・頭痛がしてくるな・・・民の平和が守られた事が救いだ・・・』
国王が言うと、全員溜め息をつく。
数日後、エミールとアリシアが王宮裏の訓練場に向かい、
『エミール、よろしくて?この外套で顔と服を隠せばバレませんわ』
『アリシアさん、ありがとう』
エミールは外套をはおり、指定された場所にアリシアと向かう。
『エミール殿、あそこの的を最大級の魔法で完全に消滅させて欲しい』
ヘルトが笑顔で言うと、2階のテラスからエミールは魔法を放つ準備をする。ヘルトの掛け声の後、エミールが魔法を放つ
『・・・・・ファイヤーキャノン!!!』
エミールの魔法は的に当たり、周囲を猛烈な熱気と爆風で吹き飛ばすと、地面に大きな穴と周囲が吹き飛ばされていた。どよめきが起きている
『このぐらいでよろしいですか?』
エミールが笑顔で言う
『凄い・・・・キマイラへの一撃も頷ける・・・』
ヘルトが唖然としながら呟く
『エミール、あっちは広範囲魔法で焼き払ってください』
アリシアが言うと、エミールは魔法を準備する
『・・・・ファイヤーストーム!!!』
巨大な火の柱が出来上がると、周囲を焼き払いながら動き広範囲を焼き払う
『・・・・これがゴブリンやリザードを焼き払った魔法なのか・・・今までの宮廷魔術師いらないな・・・』
ヘルトが呟く
『この程度でよろしいですか?まだまだ半人前の実力で、すいません』
エミールが真剣に言う
『エミール殿、やはり英雄殿の1人です』
ヘルトが微笑みながら言うと王宮内に戻っていく
『宮廷魔術師長になりたいものは、今の魔法以上の魔法を見せよ』
国王が笑顔で言うと誰1人魔法を放つ者はいなかった
『いないのか?じゃあ宮廷魔術師長は空席で良いな!!』
国王が笑顔で言うと王太子が笑顔で頷いている
エミールが部屋で待っていると国王と王太子夫妻が笑顔で帰ってくる
『エミール殿!大儀であった!これで誰も宮廷魔術師長になりたいと言う者はいなくなった!!』
国王が満足そうに言う
『私などの半人前の魔法を見て頂き、ありがとうございます』
エミールが頭を下げる
『エミール殿に王国名誉魔法使いの称号と紋章とキマイラ討伐の証を与えるが、心配はしないで欲しい。これは英雄殿達同様公表はしないと約束する』
王太子が笑顔で言うと全員エミールを見ている
『私など、そんな凄い称号は入りません!まだまだ半人前なので!!どうしたら良いか分かりません』
エミールが涙目になりながら言う
『エミールらしいですわ・・・私からすると、目標に出来る凄い魔法使いです』
アリシアが真剣に言う
『魔法学院を卒業したら、本格的にリリシャ師匠に魔法を教えて貰うのでまだまだ半人前です!!』
エミールは涙を流しながら言う
『エミールさんあなたは素晴らしい実力を持っています。宮廷魔術師が足元に及ばないぐらいの実力者ですが、あのマルス殿からしたら半人前なのですね。エミールさんのご両親や家族に教えたら喜びますよ』
王太子妃が微笑みながら言うとみんな頷く
『え!私には・・・・家族は師匠達しかいません・・・・祖母が亡くなり親戚は誰も会って貰えず、祖母の家も追い出され、リベリアのフローネ先生を頼りに会いに行きましたから・・・フローネ先生がリリシャ師匠に頼んでくれて弟子になりましたが、それ以外に家族も親族ももういません』
エミールが涙目で言う
『え!辛いことを思い出させてすいません・・・』
王太子妃は慌てて言うと、みんな苦笑いしている
『いえ、リリシャ師匠とマルス師匠とキリシア師匠とフローネ先生がいましたので気にしないでください』
エミールが頭を下げると、少し歓談後、エミールは帰っていった。