侯爵家動乱後始末
翌朝、騎士達は領主の館で捜索していると、
『副団長、元気ないね』
キリシアが言うと
『本当に一日で侯爵家を滅ぼしてしまうとは・・・』
副団長が苦笑いしている
『侯爵の一族は集めたのかな?』
『はい、後は裁く範囲を決めて終わりになります』
副団長が微笑みながら言うと
『村さえ焼かなかったら、こんな事にならなかったのにね』
キリシアが笑いながら言うと
『逆鱗に触れたらダメだと、見せしめになりました』
副団長は思い出して青ざめる
『領地はどうなるのかな?』
『しばらくは直轄地になります』
『他の貴族は何て言ってくるかな?』
キリシアが聞くと
『親族は文句を言ってくるかもしれませんが、恐らく状況を聞いたら何も言い返せないと思います』
副団長が言うと
『住民を傷つけないように気を付けてね』
キリシアが微笑みながら言うと歩いていく
『キリシア、どうだった?』
リリシャが聞くと
『直轄地だって言っていたから大丈夫だよ』
キリシアが微笑みながら伝える
『良かった・・・過去の精算出来た』
リリシャが笑顔になる
『長居すると嫌なこと言われそうだし、子爵に会ってから魔道書受け取って帰ろう』
マルスが微笑みながら提案し
『そうだね。マルス、キリシア、ありがとう』
リリシャは笑顔で言う
『この地域の料理食べたいし、町に食べにいこう』
キリシアが言うと、みんな笑顔で同意して町に出ていくが、食料がほとんど無かった
『すいません。領主様が殆どの食料を持っていってしまったから料理が作れません』
この店の店主が申し訳なさそうに謝ると
『仕方ないね』
キリシアは残念そうに言う
『領主の館に食料残ってないのかな?』
『探して貰おうか』
領主の館に戻り食料庫を確認するが殆ど残ってなかった
『これって大変な事だよね』
キリシアが言う
『副団長に聞いてみよう』
マルスが言い、副団長の所に向かう
『副・団・長!聞きたいことが有るんだけど』
キリシアが副団長に声をかけると
『何か用か?』
副団長は緊張して用件を尋ねる
『町中に食料が無い!』
キリシアが言うと
『はぁー?食料が無い?そんなこと・・・』
副団長が呟くと
『領主の名の元に強制的に持っていかれた様だよ』
マルスが説明する
『え?まさか・・・』
副団長の顔色が変わり始める
『領主の館の食料庫も殆ど残っていなかった』
キリシアが苦笑いしながら教える
『まさか・・・領主に確認をした方が良いと言うことですね』
副団長が言うと
『料理人と管理していた者に聞いた方が良いよね』
マルスが言うと
『あ!解りました聞いてみます』
副団長が聞き取りに向かうと、みんなで後をついていく
『食料が不足しているのは事実か?』
副団長が聞くと
『それは・・・その通りです』
『何故不足している』
『騎士様達の要望で大量に料理を作らされていたので、不足しています』
『町中から騎士が食料を徴収したのか?』
『この頃はそうしていましたが、それも難しくなってきていました』
『商人はどうした?』
『言う事を聞かないので反逆罪で処分してしまいました』
『は?処分・・・この町に食料を運ぶ商人もいないのだな』
『はい・・・そうです』
『わかった・・・』
副団長は話を終わらせて帰ってくると頭を抱え始める
『酷いね・・・騎士様は民を守らず、豪遊出来て羨ましいな』
キリシアが副団長に皮肉を言う
『少し考えさせてくれ・・・頼む』
副団長は青ざめながら言うと部屋に籠ってしまう
『あれは相当堪えた様だね』
マルスが呟くと
『流石騎士様達だ』
キリシアが言うと
『祖父に伝えますが・・・この町、大変な事になります』
メトリシアが不安そうに言う
『副団長が頑張るしかないよね』
マルスがメトリシアに言う
『これはもう少しで民衆の暴動になる』
リリシャが予想する
『連行しても、侯爵がやった事で暴動になったら騎士団の責任になってしまいます』
メトリシアが不安そうに言う
『この付近で食料が余っている所から送り込むしかないけど、そんな場所は無いよね』
マルスが言うと
『無理です。商人もいないから・・・費用は有るのかな?』
キリシアが疑問を挙げる
『何もしなかったら自滅して、大きな動乱になっていました』
メトリシアが微笑みながら言うと
『それを防げただけでも良いのかな?』
『そうだと思います』
メトリシアは微笑みながらみんなを見ている
『逃亡騎士と魔法使い、愚か者だね』
マルスが微笑みながら言うと、みんな頷いている
副団長は騎士達に財政と町の状況確認を指示する
『副団長、財政は破綻しています。倉庫を見ましたが、金目の物が殆どありません』
『はぁー?どう言うことだ!』
『重臣達を問い詰めましたが、奴等が領主に金を要求し始めて、倉庫の金目の物を売った様です。更に、国王陛下に確認をする為の使者を殺して、送った重臣の一族を反逆罪で始末してからは、本当に逆らう者を次々と殺し始めて、一部重臣は逃げたそうです』
騎士が説明をすると
『再建どころの問題じゃ無いな・・・・誰がここを管理するかの問題だな・・・・』
副団長が呟く
『騎士団じゃ無理が有りますが、これだけの領地を一年で破綻させるなんて出来るのですね・・・』
『強欲な、権利と名声と名誉しか目的の無い騎士は排除しないと、騎士団の廃止に現実味が出てくる・・・宮廷魔術師や魔法師団もだが、報告して判断を仰ぐ必要が有る』
副団長は頭を抱えて涙目になっている
『食料も殆ど底をついています。増援にくる騎士団員に持ってこさせなければ終わりです。重臣達の話では、町中も殆ど食料が無くなっています』
『どうにかならないのか?』
『近隣の領主や村から集めるしか有りませんが、金が有りません』
『来なければ、間違いなく住民が立ち上がり、動乱になっていたな・・・国境付近だから戦争に発展してもおかしくない・・・一日で倒せたのが幸いだな・・・・』
副団長が呟く
『重臣達に、なんと説明して鎮静化するかが大事です』
『反逆罪で侯爵は連行と、騎士を名乗っていた者と魔法使いも同罪で連行と言え、騎士団に剣を向けた者も全員反逆罪で連行すると伝えろ』
副団長が命令を出すと、残された重臣を集めて説明をする。重臣達は、青ざめながら聞いている
『副団長の話は解りましたが、信用して良いか解りません』
『信用して貰うしか無い』
副団長が言うが重臣達は今後の心配で信用をしない
『副団長、いいかな?』
キリシアが副団長に言うと
『今、取り込み中だが・・・』
副団長が断るがキリシア達は入っていき
『第4王女メトリシアです。今回の件は、私からお祖父様に伝えますので、領民の為に、新しい領主が決まるまで領地運営をしてください』
メトリシアが言うと重臣達は青ざめて膝ま付く。
『侯爵を諫めて殺された重臣の家族が残っていれば、登用することも考えてくださいね』
メトリシアはそう言ってから部屋を出ていく
『畏まりました。全力を尽くします』
重臣達は頭を下げたまま言う
『メトリシア様ありがとうございました。お陰で重臣達は仕事を始めてくれました』
副団長が頭を下げて言うと
『騎士団の不始末は王家の不始末になります。今回は本当に危険な状態です。師匠達が提案してくれなければ、私ではこんな対応出来ませんでした』
メトリシアは自嘲している
『中途半端な処置で、これ以上王家の威信を落とさないように約束します』
副団長は約束する