5話 モンスターパレード
この1ヶ月、朝から迷宮探索、夜は岩場で訓練の日々を繰り返していた。リリシャの魔力制御は掌で小さな火の玉を作る事が出来る様になった、しかし使える威力には程遠い状態であった。
マルスは体全体の魔法制御が出来る様になり、今まで以上に魔力制御で掌に魔力を集められるようになる。そして威力も向上していた。リリシャもそれを見て体全体の魔法制御の練習を始めた
キリシアもマルスとの訓練でスピードアップしている。筋力強化したマルスにはついてこれないが、一対一でカークロッチ相手であれば倒せるようになっていた。
今日は3層への階段と反対側を探索していた
『前方に変な感じするけど行ってみる?』
『確かこの先は大きな空間が有ったはず。前来た時は少し多めのカークロッチがいた所だよね?』
キリシアは考えながら思い出していた
歩いていくと大きな空間が見えてきたが大量のカークロッチと大きなカークロッチが見えて立ち止まる。キリシアとリリシャも体が硬直したみたいに思考停止状態になっていた。
『引き返す?』
『そっ・・そうだね、引き返しましょう』
キリシアの返事を聞いてゆっくり後退を始めた時、カークロッチ達が通路に向かって動き始めた
『逃げ切れるかな?』
『数が多すぎる』
キリシアとリリシャの顔はひきつっていた
『リリシャさん、魔法で援護お願い』
リリシャに伝えてマルスはカークロッチに突撃するとキリシアも続いてきてくれた。筋力強化して一気に切り捨て続けると、キリシアも横から回り込むカークロッチを倒していた。
『ギーー』
目の前に大きなカークロッチが接近すると
マルスの剣が足に命中するが、剣が弾かれ攻撃が全く通用しない
『魔法で攻撃する!!』
マルスは掌から火の玉を放つ
「ドガーン」
少し黒い煙を出しているが突進して接近してくる
すれ違い様に腹めがけて剣を突き立てると
『ギーャーガァー』
剣は刺さったが片手で支えきれず突き刺さったまま手から離れるとUターンしてくる大きなカークロッチ目掛けて、両手で大きな火の玉を作り出し放つ、「ドカーン!」命中するも突進をやめない
『ギーーギガァー!!』
再び接近してくる。マルスは、体全体の魔力を両手に集め、今度は火の玉を高速で回転させるイメージで発動する。そしてすれ違いざまに横から放つ
「ドッガーン!!!」
命中した瞬間、圧縮された炎が爆発する爆風でマルスも飛ばされた。「ドーン」壁に激突し背中に痛みを感じる。大きなカークロッチは半分黒い煙を出しながら倒れていた。マルスは、大きなカークロッチから落ちた剣を拾いカークロッチの群れに突撃していく。キリシアとリリシャはカークロッチの群れに包囲されていたが、突撃してきたマルスと力を合わせてカークロッチを次々と斬り倒していった。そして、周りは黒い霧に包まれ、気がついたらカークロッチはいなくなっていた
『終わった?』
キリシアとリリシャを見ると
『全部倒せたみたい?』
『私達生きている?』
2人ともその場に崩れ墜ちるように座り込む
『あの大きなカークロッチなんだったんだろう?』
『もしかしたら階層ボスかな?』
キリシアが答えて苦笑する
しばらくしてから、周りに落ちている魔石を回収して引き上げる事にしたが
『体が重い』
キリシアとリリシャに目を向けると
『私も・・・』
2人とも同じような感じだった
ギルドに付いて、ヘザーネのカウンターに向かう
『換金をお願いします』
カウンターに魔石の袋を置く
『わかりました』
魔石を出した瞬間ヘザーネは固まる
『え?数が多いのですが、何かあったのですか?』
そして、大きな魔石を見た瞬間顔がひきつった
『この魔石は・・・・』
『モンスターパレードと大きなカークロッチが現れて倒した』
キリシアが答えると
『2層で・・・ですか?ちょっと待っていてください』
ヘザーネは職員に耳打ちして、魔石を数えていた
奥からゼタルが現れて、奥の部屋に招きいれてくれた。
ソファーに座るとゼタルが魔石を手で持って確認すると
『大きなカークロッチと戦ったって』
『はい、退避出来なかったので・・・』
キリシアが言うと
『3人共無事帰還できて良かった、体調は大丈夫かな?』
『体が重い、疲れたのかな?』
聴いたゼタルの表情が真剣な目に変わる
『時々大量のモンスターを倒すと体調に異変がでる時がある。治らないで冒険者辞める人も多数いるから・・・とにかくゆっくり休め・・・』
キリシアとリリシャは表情が固まる
『治らない可能性があるのですか?』
『治らない人もいる、魔法使いは魔法が使えなくなる人も闘気も使えなくなる人もいる』
ゼタルの回答にリリシャの表情は暗くなる
『自分は闘気は使えないので、使えなくなっても変わらないか』
『闘気無しで下層は無理だぞ』
ゼタルが少し驚きながらこっちを見ている
『闘気の扱い方教えてもらう相手がいなかったので・・・』
『今度、闘気の扱い方教えてやろうか?』
ゼタルの言葉にキリシアは笑顔になる
『お願い出来ますか?』
『これだけの戦果上げられる奴ならば、鍛えればギルドとしても利益になるからな』
『お願いします』
マルスも頭を下げたのを見たゼタルは笑みを浮かべながら
『楽しみだ』
『鑑定が終わりました。小さな魔石が154個で金貨1枚と銀貨5枚と銅貨40枚です。大きな魔石は金貨5枚で買い取りますが、武器作成するために持っていても良いと思いますがどうしますか?』
『今回は買い取りお願いします』
キリシアは即答で返事をして帰る事にした
ゼタルに明日から闘気の練習をしてもらう約束をしてから帰る